介護施設における”虐待行為“には、ご存知かと思いますが身体的虐待、心理的虐待、性的虐待、経済的虐待、そしてネグレクト(介護放棄)等が挙げられ、昨今は社会の眼がいっそう厳しくなってますから、施設内部でもその問題はかなりナーバスに取り扱ってます。
そりゃあ、弱ってる人に対して暴力や暴言を浴びせるなんて絶対ダメに決まってるけど、たとえば足腰が弱ってて歩けないのに(認知症で)すぐに立とうとする人の安全を確保するため、車椅子にベルトで固定(つまり拘束)させてもらう処置も“身体的虐待”と言われちゃう場合があるからとても難しい。
それが虐待に当たるかどうかは、行政(調査委員会)のさじ加減ひとつで決まっちゃう。あちらからすれば「常に見守りすれば拘束する必要は無いはずだ」って理屈なんだけど、少ない職員数で何十人もの後期高齢者を介護すべく常にバタバタしてる中、特定の人を常に見守りするなんて不可能なんです。
それでも行政が「身体拘束=虐待だとルールブックに書いてある以上は虐待だ」と判定すれば、施設の経営を揺るがしかねないペナルティーを食らっちゃう。そりゃナーバスにもなるってもんです。
前置きが長くなっちゃったので、本題は簡潔に書きますw
上記の理由により、私が務めてる施設では定期的に虐待防止の会議やセミナーが開かれ、先日も講師を招いて貴重なお話を聞かせて頂きました。
以前、「みんながみんな仲良しな職場なんてあり得ない。あったら気持ち悪い」っていうお話をされ、私の気持ちを随分ラクにしてくれた、元・介護職員の経営コンサルタントさんが、今回は虐待防止に特化したテーマで講義されたワケです。
で、私は男性居住者(例の“団塊”前後の世代)たちに何度か怒鳴り声を上げてしまったことを、それぞれ正当な理由があるから後悔はしてないけど、ハタから見れば心理的虐待と判断される(そうなったら施設に多大な迷惑をかけてしまう)可能性もあるから、今後は出来るだけ無くしたいと思ってる。
なので最後の質疑応答タイムに「感情をコントロールするコツを教えて下さい」と質問したんですね。そしたら、その先生はこうおっしゃいました。
「無理に我慢しなくていいと思います。介護職員だって人間ですから、良い面も悪い面も両方あって当たり前。そんな自分を受け入れて下さい。やっちゃったら後で謝ればいいんです」
経営コンサルタントというより、私にとっては完全にカウンセラー。またもや気持ちをラクにしてもらいました。
そのへんに売ってる自己啓発本にも似たようなことは書いてあるでしょうけど、介護職を長年やって来られたパイセンの言葉だと説得力が違います。
だからって好き放題に怒鳴るつもりは無いけど、ムリに我慢しなくていいと思えばストレスが軽減され、そのぶんカッとなる可能性も低くなるはず。
“無の境地”に至れば何よりだけど、そんなのムリに決まってますからねw またまた勉強になりました。
さすがに虐待にあたるような暴言を浴びせたら「あとで謝ればいい」というワケにはいかないと思いますが、その元介護職員の経営コンサルタントさんは我々を「そこまでの暴言は吐かない人たち」と信じて言ってくれたんだろうと思います。そうするとこちらも「信頼に応えないと」っていう気持ちになりますもんね。