ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『最も危険な遊戯』―1

2018-10-29 00:05:04 | 日本映画










 
1978年に公開された東映(セントラルアーツ)のヒット作で、テレビの人気アクション俳優=松田優作が、映画スターとして世間に認知されるきっかけとなったハードボイルド・アクション。(監督=村川 透/脚本=永原秀一/撮影=仙元誠三/音楽=大野雄二)

2本の続編『殺人遊戯』『処刑遊戯』と併せて「遊戯シリーズ」と呼ばれてます。人それぞれ好みは岐れるでしょうが、非常にシンプルで乾いた感じのする第1作『最も危険な遊戯』が、私は一番好きです。

とにかく、色んな意味でワイルドな映画なんですねw 脚本からしてワイルド過ぎて、辻褄もへったくれもありませんw それでも圧倒的に面白いんだから、アクション映画ってのはやっぱ理屈抜き、動いてナンボなんだって事を再認識させられます。

主人公は凄腕の殺し屋=鳴海昌平(松田優作)。後のTVシリーズ『探偵物語』は当初、この「遊戯シリーズ」を連続ドラマにする予定だったそうですから、鳴海昌平は工藤俊作のプロトタイプとも言えるキャラクターです。

その鳴海が雀荘で賭けマージャンしてる冒頭シーン、雀卓を囲んでるのが柴田恭兵、内田裕也、石橋蓮司と、凄いメンツです。恭兵さんはクレジットで「柴田恭平」と表記されており、まだデビューして間もない頃ですよね。

鳴海はイカサマのカモにされて300万の借金を背負わされ、逆ギレするも袋叩きに遭って身ぐるみ剥がされるというw、哀れかつ滑稽な姿を晒します。

「ごめんなさい、今の冗談です。いたた、ちょ痛すぎるよ今の。頭、ヤバいす、円形脱毛症で……」

この映画、低予算ゆえか音声は全編アフレコっぽいんだけど、それでも優作さんのアドリブが炸裂しまくってますw

それにしても、この鳴海昌平の弱さたるやw 殺し屋である事をカモフラージュする為に、オフ時はあえて弱いフリしてるのかな?とも思うんだけど、オン時でも格闘場面になると結構やられっ放しなんですよね。

テレビの刑事ドラマにおける優作さんは、いつも無敵の強さが強調されてましたから、この鳴海の弱さには拍子抜けしたし、ちょっとガッカリした記憶があります。同じアクションヒーロー役でも、もっと生身っぽいというか、リアルなキャラクターにしたかったんでしょうね。

さて、そんな鳴海に新たな仕事が舞い込みます。東日電気社なる大企業の会長(内田朝雄)による依頼で、誘拐された社長(娘婿)を生きて救い出すこと。報酬はキャッシュで5千万円。

誘拐犯グループの本当の目的は、東日グループ要人の暗殺。その裏には防衛庁による防空システム開発の国家的プロジェクトが絡んでて、要は利権争いらしいんだけど、劇中における説明があまりにワイルド過ぎて、正直よく解りませんw とにかく非常にヤバい仕事なんだっていう、空気だけ読み取れば良いんだろうと思います。

前金を受け取った鳴海は、閉店したバーの跡地と思われる隠れ家でトレーニングを開始します。ブルース・リーや『タクシードライバー』のデ・ニーロを意識しまくった感じで、優作さんの嗜好がよく表れてる場面です。

そして、本作のヒロイン=杏子(田坂圭子)が登場します。誘拐事件の実行犯グループを率いる居郷の情婦で、いきなり居郷とのベッドシーン&事後のシャワーシーンという、素晴らしい登場の仕方ですw

演じる田坂圭子さんはこれがデビュー作だったみたいですが、のっけからヌード&濡れ場で体当たりの熱演だったのに、他の作品でお見かけする機会は無かったですね。

「誰? 誰よあんた!?」

杏子がバスルームからタオル1枚の姿で出て来たら驚いた! モジャモジャ頭&グラサン姿の見知らぬ大男が、勝手に上がり込んでソファーでくつろいでるじゃないですか! 我が身に置き換えて想像してみて下さい。悪夢ですw

勿論、その大男は鳴海であり、居郷の居場所=誘拐グループのアジトを、情婦である杏子から聞き出しに来たワケですが……

実行犯のリーダーが居郷である事や、その情婦の存在を、鳴海がどうやって突き止めたのか、一切説明されないまま強引に話が進んで行くという、このワイルドな脚本w

そんな段取りはどーでもいいんですよね。エロス&バイオレンス! それさえちゃんと見せてくれたら、我々は満足するワケです。この作品は実に正しい!

「いいオッパイしてんねぇ、ちっちゃいけど。あのスケベ男には勿体無いよ」

鳴海は、口を割らない杏子を繰り返しビンタし、バスタオルを剥ぎ取ると、裸のまま窓から吊り下げる! 銃で脅す! 気絶したら花瓶の水をぶっかける!……とやりたい放題。実にワイルドで素晴らしい!w

「お姉ちゃんが喋るまでずっと此処にいるわよ。早く喋った方がいいよ。おら」

優作さんは、テレビの刑事ドラマでもこういう事やってましたよねw さすがにフェミニンな『太陽にほえろ!』じゃ許されないけど、『俺たちの勲章』と『大都会PART II』では犯人の情婦を同じようにシバきまくってましたw

女性への暴力を賞賛するつもりは無いけれど、女性客に媚びてばかりのテレビ&映画に辟易させられてる現在、こういうワイルドさに「古き良き時代」を感じずにはいられません。

と、そこにタイミング良く居郷さんから電話が掛かって来ます。ここからの数分間が、この映画最大のハイライトとなりますw

「居郷さんかい。ああ? 俺はこの女の元旦那だよ。元々この女は俺のスケなんだ、返してもらうよ。あんた勃たないんだってねぇ、可哀想に。彼女泣いてるよ。今から俺が、タップリ楽しませてやるから。ま、聴いてなよ。ね?」

電話を切らずに杏子を押し倒した鳴海は、サングラスをしたまま彼女をレイプします。

「いやっ、何すんのよ!?  いやっ、やめて! あ、やめてよ……ああっ んっ………ああ………」

『ゴルゴ13』ではお馴染みのパターンかと思います。嫌がっていた筈の女が、初めて味わう怒涛の快感に、やがて溺れていく……男にとって究極の夢ですよねw

「おい、居郷。聴いてるか? いいんだってよ。やっぱホンモノがいいんだって。凄くいいんだってよ!」

これまで聞いた事の無い、杏子が本気でよがる声を聞かされた居郷は、怒り狂って駆けつけるも、部屋はもぬけの殻。

杏子を連れて隠れ家に戻った鳴海は、戦闘準備を開始します。つまり居郷のアジトの場所を突き止めたワケですが、彼を怒らせて杏子の部屋まで来させただけで、なんでアジトの場所が判ったのか、展開がワイルド過ぎて理解出来ませんw

それはともかく、もう用済みとばかりに鳴海は、杏子の前に札束を放り投げます。

「そいつは謝礼だ。1時間経ったら出ていけ。分かったな?」

冷たく言い放ち、サッサと部屋を出て行く鳴海。

「アンタなんか、居郷にぶっ殺されればいいんだわっ!」

杏子の罵声を聞いた鳴海は、わざわざまた戻って来てw、再び強烈なビンタを浴びせます。

「自惚れんなよ、お前。よぉ?」

……なんか、凄いなぁw 初めて観た時は呆気にとられたもんですが、今あらためて観ても呆気にとられますw

鳴海はその足で敵アジト(廃墟になった病院)に忍び込むと、警報ベルを合図に凄まじい銃撃戦を繰り広げます。使用拳銃はS&WのM29=44マグナムの8+3/8インチ!(『タクシードライバー』のデ・ニーロと同じ銃です)

この銃撃戦は5分以上の長回しで撮影されてて、当時は「すげぇ!」って感動したもんですが、あらためてDVDでじっくり観てみると、暗くて何やってんのかよく判んないし、ほとんどのアクションが部屋のドア(磨り硝子)越しで撮られてて見えないんですよねw

見えないからこそ「すげぇ!」って感じちゃう、このワイルドさw ある意味、眼からウロコですw

さて、銃撃戦の末に居郷も射殺し、依頼された通り東日電気の社長を救出した鳴海ですが、潜んでた何者かに社長を射殺され、自身も腹に被弾します。どうやら、誘拐グループとは別の敵が存在する模様。

病院に駆け込むワケにも行かず、鳴海は重傷を負ったまま隠れ家に戻ります。すると、なぜか杏子がまだ部屋にいるのでした。

「なんで此処にいる? 1時間経ったら出ていけって言っただろうがっ!」

「酷い傷! こんなんじゃダメよ! アンタ死ぬ気なの? 別に私は構わないけど……そんなに死にたきゃ死ねばいいでしょ!」

そう言いながらも杏子は、手際良く鳴海の傷を手当てします。幸い弾丸は貫通しており、手術の必要は無さそうです。

「看護婦の心得でもあんのか……よぉ?」

「人殺しの情婦なんかに、なりたくてなる女なんかいやしないわよ」

噛み合ってるのかどうか、よく分かんないワイルドな会話ですw

「おい……居郷は死んだよ」

「……あんたが?」

「ああ、俺が殺った。さぞかし私が憎いだろうねぇ……出ていけ!」

せっかく傷を手当てしてあげたと言うのに礼の言葉も無く、さすがに怒った杏子は謝礼金を叩き返して、部屋を出て行くのでした。

ところが翌日、彼女は食料を買い込んで再び部屋に現れ、かいがいしく手料理を作り始めちゃいます。

「何なんだお前は。おぉ? 1回寝たくらいで女房面されたらたまらんぜ。よぉ!」

そんなに鳴海のセックスが良かったんでしょうか?w まぁ、それもありつつ、どうやら彼女には別の思惑があるようで、鳴海はそれを見抜きます。

「何が怖い? え? 誰が怖いんだ? ま、だいたい察しはつくけどね。居郷たちの死体が上がらない裏を、お前知ってるからだろう。違うか?」

なぜか東日電気社長の遺体がゴミ処理場で発見された事のみニュースで報じられ、居郷ら誘拐グループの存在は無かった事にされてる。その裏には、巨体な組織による陰謀が潜んでるに違いない。

「居郷の棲んでた世界は、得体が知れないのよ。だから恐ろしいのよ!」

「ちっ、それがバカバカしいっちゅーんだよ」

杏子がどうなろうがお構いなしの姿勢を崩さない鳴海ですが、それでもメゲない杏子は、まさに女房面してずっと居座る事になります。

ハードボイルドかつベリーワイルドな世界観が崩壊し、このままラブコメ展開になっちゃうのでしょうか?w

(つづく)
 


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