嵐の夜で欲情したのか、杏子(田坂圭子)がパンティー1枚の姿で、鳴海昌平(松田優作)のベッドに入って来ます。今どきパンティーなんて呼ばないですか?w
「不思議だと思ってるでしょ? あれほどアンタに痛めつけられ、死ぬような想いさせられたのに、なんで私が居郷の居場所を言わなかったのか……」
鳴海の乳首をいじりながら、いつになく艶っぽい声で杏子は囁きます。乳首をいじりながらです。
「それはね、私にとっては憎い男でも、居郷とは違うって事が、あの瞬間に私のカラダに感じたからよ。分かる?」
ところが鳴海は、乳首をいじられてるというのに全く彼女を相手にしようとしません。乳首をいじられてるというのにです。
「ふっ……もう寝なさいよ。ね?」
そう言って杏子の指を乳首からはねのけ、背を向ける鳴海。怒るかと思った杏子は、意外にも切なげに涙を流します。鳴海の隠れ家に住み着いたのは、あくまで自分の身を守る為かと思いきや、もしかすると彼女は……
なのに鳴海は、なんでここまで杏子を邪険に扱うのか? 乳首のいじり方が間違ってるんでしょうか? 愛など信じるつもりが無いのか、実は自分も愛してるがゆえに、彼女の幸せを考えて突き放そうとしてるのか?
その答えは、最後の最後に明かされる事になります。
さて翌日、鳴海は依頼主である東日電気会長=小日向(内田朝雄)に前払い金を返却すべくオフィスを訪ねます。せっかく救出した社長を殺されてしまった以上、仕事は失敗に終わったと認めざるを得ません。
ところが小日向は、鳴海にまた新たな仕事を依頼するのでした。それは、今回の利権争いの黒幕である大物フィクサー・足立(見明凡太郎)の暗殺。
それが一体何を意味するのか、プロットがワイルド過ぎて私にはよく解らんのですがw、とにかく鳴海は依頼を受け入れ、再び秘書の土橋(草野大悟)から前金を受け取るのでした。
ライフルのスコープを望遠鏡代わりに、足立の屋敷を下見する鳴海ですが、阿藤快や苅谷俊介といった身体も顔もゴツい男達に襲撃&拉致される羽目になります。
そして連れ込まれた場所は「城西警察署」の留置場。城西署と言えば、黒岩団長(渡 哲也)や徳吉刑事(松田優作)がいる所轄署です。という事は苅谷俊介さんはベンケイですねw
あの夜、誘拐グループのアジト(病院跡)に潜み、居郷と鳴海を狙撃したのは、この現職の刑事達なのでした。リーダーは桂木警部(荒木一郎)。人が良さそうな風貌なのに、眼つきは氷のように冷たい男です。
演じる荒木一郎さんはミュージシャンとしても名が知られた方で、後にボンボン刑事こと宮内 淳さんがカヴァーする『君に捧げるほろ苦いブルース』も荒木さんの曲です。
「鳴海昌平、31歳。どうだね景気は?」
「中小企業だからね。オタクほど儲かってないっスよ」
部下達にさんざん鳴海を殴らせ、この件から手を引くように釘を刺した桂木警部ですが、そんな事で引き下がる鳴海昌平ではありません。
解放されるや否や、鳴海はターゲット=足立の情婦である高級クラブのママを探し出し、居場所を聞く為に着物を脱がせますw
「小さなオッパイなんだねぇ。ここんとこ刺すけど、いい?」
情婦なんかより秘書とかの方がよく知ってそうなもんだけど、秘書を脱がせるより情婦を脱がせる方が楽しいに決まってますからねw
恒例のオッパイ攻撃で足立の居場所を聞き出した鳴海は、再び隠れ家で戦闘準備を始めます。すっかりアル中みたいになった杏子が、そんな鳴海にすがります。
「ねぇ、お願い。やめて。どんなに恐ろしい相手なのか、アナタにはまだ本当に分かってないのよ。無茶だわ! 現職の刑事とギャングを敵に回して、アナタ勝てると思ってるの!?」
例によって鳴海は、杏子の言葉を完全無視します。
「ねぇ、聞いて? 桂木は裏の事情を知ってる私を、きっとどうにかしようとするに決まってるわ。アナタには私を守る責任があるのよ! お願い、やめて。行かないで……」
準備を終えた鳴海は、バーボンを一杯ひっかけて隠れ家を出て行くのでした。
そしてビルの屋上からライフル1発で見事に足立を仕留めるのですが、それを待ってたかのように周囲のビルから警察の狙撃部隊が現れ、鳴海を狙って一斉射撃を開始します。上空を飛ぶヘリから無線で指示を送るのは、もちろん桂木警部。
さらにパトカー軍団も駆けつけ、完全に包囲されてしまう鳴海ですが、ロープを使ってビルを降下するというワイルドな手段で、何とか下水道に逃げ込んでピンチを脱します。
そして隠れ家に戻るんだけど、前回「閉店したバーの跡地っぽい」って書いたのは間違いで、この場面を見るとボウリング場の跡地ですねm(_ _)m そう言えばトレーニングの場面でボウリングの球とかピンを使ってましたもんね。
で、鳴海が戻って来たら驚いた! 一足早く侵入した桂木警部の一派が、今まさに杏子を拉致して車に押し込んでるのでした。
さて、鳴海はどうしたか? 口うるさい居候がいなくなってせいせいするのかと思いきや、なんと発進した桂木の車を全力疾走で追跡するのでした。鳴海にとって杏子は、とっくに用済みだった筈なのに……
鳴海は、杏子を乗せた車を延々と、必死に追いかけます。この日本において「走る姿が最も美しい俳優」と云われた優作さんの疾走です。スラッと長い手足、引き締まったボディー、華麗なるフォーム……私に無いものばっかりですw
「止まって! お願い! 来ちゃいけない! 私はどうなってもいいの! お願いだからやめて! 止まってぇ!」
杏子はやはり、鳴海を愛してしまったんですね。
「あなたを困らせようと思って……あなたのそばにいたくて……来ちゃいけない! 止まってよぉ!」
杏子を救う為に走る鳴海もまた、彼女を愛してる。だからこそあえて冷たくしてた……と解釈するしか無いと思うんだけど、さぁ果たして……?
桂木は鳴海を始末すべく、人けのない港の倉庫街へと誘い込みます。猛スピードでひき殺そうとする車を横っ飛びで避けた鳴海は、マグナム44を構え、1発で運転手=苅谷さんの眉間を撃ち抜きます。
マグナムで撃たれたら頭がバラバラになっちゃいそうなもんだけど、この映画ではそういった描写はありません。マグナム用の拳銃でも(44スペシャル弾など)マグナムじゃない弾丸が撃てる筈なんで、命中精度を優先して威力の弱い弾丸を使ってると解釈しておきましょう。それにしても優作さんは、長銃身のマグナムが本当によく似合う!
ところで車はバランスを失って派手に横転しますが、そのショットにワイルドな撮影スタッフ達がモロに映り込んでますw 車が予定よりも早く転がってしまい、映り込んでる部分がカット出来なかったのかも知れません。
でも、観客の視線は転がる車に向いてますから、意外と気づかないもんなんですよね。私も今回、画像を撮る為にコマ送りして初めて気づきました。言い訳しようが無いほどハッキリ映ってますw
天地が逆さまになった車から出て来た刑事達を、1人につき弾丸1発ずつで確実に抹殺して行く鳴海。杏子を盾にした桂木には撃たれますが、いつの間にか腹に鉄板を仕込んでいたという、マカロニウェスタンばりのワイルドなオチで、一件落着。
そして、黙って杏子と見つめ合う鳴海は、熱くてワイルドなキスだけで想いを伝え、また何処かへと走り去って行くのでした。
鳴海の仕事はまだ終わってません。再び足立の情婦を捕まえ、居場所を聞き出そうとします。
「アンタが殺したんでしょ!」
「とぼけんなよ、この野郎。ありゃ替え玉だろうがっ!」
鳴海がライフルで仕留めたのは、ホンモノの足立じゃなかった。実は暗殺を依頼した小日向会長と足立はグルで、鳴海は組織ぐるみの芝居に利用されたワケです。それが彼らにどんなメリットをもたらすのか、人一倍マイルドな私にはサッパリ解りませんがw
「そうよ。警察を敵に回したら、とても勝ち目は無いと思ったのね」
「……脱げ。ほら脱げよ。好きなんだろお前、可愛がってやるよ。脱げ脱げ脱げ」
そう、理屈はどーでもいい、とにかく脱げば良いのです。エロス&バイオレンスさえあればオールOK! ほら脱げ脱げ脱げ!
「足立はどこだ? 足立はどこだ? 足立はどこだって聞いてんだっ!!」
オッパイ攻撃で居場所を聞き出した鳴海は、小日向会長の屋敷に突入し、用心棒たちを片っ端から素手で殴り倒して行きます。やっぱ強いやん!w 怒りのパワーに勝るものは無しって事ですよね。
そしてマグナムに弾丸を装填しながら、小日向会長と密談中だったホンモノの足立の前に鳴海は現れます。
「足立精四郎さんですね。あんたには別に恨みは無いんですけど、そこの小日向さんに頼まれて。約束を果たさせて貰います」
クールに足立の眉間を撃ち抜いた鳴海は、すぐそばにいる我が依頼主に報告します。
「小日向さん……約束は終わったよ。金は振り込んでくれたんだろうね」
「あ……ああ、振り込んだ。ご、ご苦労だったな」
「はい。さて次はプライベートな問題だ。あんたね、ちょっと悪ノリし過ぎだったよ」
銃口を向けられ、慌てて命乞いする小日向会長の片脚に1発ぶち込んだ鳴海は、不敵な笑みを浮かべながら最後の台詞をキメます。
「今のは約束手形です。これからもよろしく。素敵なゲームをありがとう」
何度観ても鳥肌が立ちます。ストーリーがよく解んなくたって、素晴らしいものは素晴らしい。
話の筋なんか二の次でいいんです! 大切なのはエロス&バイオレンス! すなわち躍動する肉体の美しさと格好良さなんだから! 映画って本来そういうものなんだって事を、あらためて教えられたような気がします。
翌日の新聞で、桂木警部らは「身元不明の遺体」、足立精四郎は「心不全のため死去」と報じられ、全ては闇に葬られました。
そしてVeryワイルドな仕事を終えた鳴海昌平は、冒頭シーンで見せたオフの顔に戻り、ストリップ小屋でヌードショーを見ながら居眠りするのでしたw
角川映画『人間の証明』のテーマ曲をBGMに、麦わら帽子で局部を隠しながらw、ステージで踊ってるのは岡本 麗さん。当時はもっぱら脱ぎ要員で起用される女優さんでした。
「ねぇアンタ。寝てんだったらウチ帰ってよ」
「ああ、ごめん。ねぇ、今日終わったらさ、アレさせてくんないかしら?」
「ふん、誰がアンタなんかと。私はね、草刈正雄みたいなのが趣味なんだよ。帰ってよ!」
「くっそぉ……カリ正雄め……」
世間でライバル視されてた草刈正雄さんを、優作さんはよくこうやってネタにしてましたw 松田優作&草刈正雄の2ショットも観てみたかったですね。
さて、岡本 麗さんに蹴飛ばされてストリップ小屋から出て来た鳴海は、前を通りかかった高級車の後部席を見て驚きます。どっかの政治家みたいなオヤジに寄り添う、その女性は……
「きょ、杏子ちゃん!? おい! おい! ちょっと待ってくれ! おい! 俺だよ! 停まってよ! おーいっ!」
今度はドテラ姿で車を追いかける鳴海は、とうとう本当の気持ちを叫んでしまいます。
「こんな事になるんだったらよ、格好なんかつけないでよ、杏子もやっときゃ良かったんだよ! おーい、停まってくれーっ!!」
つまり、杏子に対してずっと冷たくしてた本当の理由は、単に「格好つけたいから」だったワケですねw ハードボイルドを気取りたかっただけなんです。中学生か!w
だけどそれじゃ、杏子が拉致された時に走って車を追いかけた、あの必死な姿は何だったの?って事になりますから、やっぱこの映画は、1回きりのセックスから始まった、ある種の純愛ストーリーなんでしょう。
オン時は徹底してワイルドなバイオレンスヒーローだけど、オフになると滑稽な近所のお兄ちゃん。そんな2つの顔が同居するキャラクターこそがアクションスター=松田優作の真骨頂であり、この「遊戯シリーズ」は前期・優作さんの代表作と言って良いんじゃないかと私は思います。
特にこの第1作は、その二面性が実にバランス良く作用し、サービス満点のエロスとバイオレンスによって昇華した最高傑作じゃないでしょうか? ワイルド過ぎて難解ではあるけれどw
そうなんです、松田さんがカッコよければ良いのです!
角川映画になるとドラマも複雑になり味わい深いものになりますが、遊戯シリーズはこの
カッコよかったらええんじゃ!
のノリが最高にカッコ良いです!
ただカッコいいだけでなくお茶目なところもたまりません!
川沿いの疾走、本当にカッコ良いですのね!
その後の車のスタッフの映り込みはものすごいサプライズですが(笑)
私の中で疾走俳優は柴田恭兵さんがお亡くなりになったら完全に絶滅です。
ちなみにこの映画のもう一つのお気に入りは予告です!
昭和臭全開でヒロインの女優さんに新人といちいち文字をつけていましたー
こんなの読んだらまた見たくなりますー!
はじめて崔洋一氏にお会いした時、「優作をぶん殴ってでも言うことを聞かせられるのはこの人だけでは…」と感じました。
大野さんの音楽もまだ出来上がってなくて、東映ヤクザ映画のサントラを流用したみたいな曲に、筆字のテロップ。
'80年代が目前に迫ってるとは思えないレトロな感じが、確かにクセになりそうですねw
映画音痴なくせに通を気取りたがる私にとってはそんな感じの映画だと思います。
改めてみると、撮影期間も予算もギリギリの中でやりくりしてたのが感じられますね。
例えば、パトカーや組織の車で出てくるセドリックは「大都会PART2」で使ってたものを石原プロから借りているし(終盤で横転する個体は出所不明ですが、事故車?に適当な廃車のパーツ付けて補修した車と思われます)、カースタントもマイクスタントマンチームなどではなく「フォーキッカース ST」というカースタントファンも詳細を知らないようなチームが担当。大所のスタントチームだとどうしてもギャラが高いんでしょうね(ちなみに、横転シーンでは最後思いっきり人力でひっくり返してますね)
乱文失礼いたしました。