キセル乗車常習犯の近藤真晴(ホリケン。)と、銀行強盗犯の田原俊晴(ホリケン。)がそれぞれ犯行に使った改造拳銃が同じ製品であることが判り、山田署捜査一係の敏腕警部=松浦さゆり(三嶋幸恵)はバックに潜む密造組織の正体を暴こうと躍起になるのですが……
七曲署の山さんも真っ青な取調べにより田原を落とし、売人の名を吐かせたのは誰あろう、まだ中学生なのになぜか捜査に首を突っ込みたがる警部の一人娘=亜弥(松浦亜弥)なのでした。
第4話『ピッチピチ娘に御用心』では、その売人=野村義晴(ホリケン。)をすぐに連行するか、あるいは泳がせるかで亜弥と警部の意見が真っ二つに対立。
そうなると、ボスである藤堂係長(上原袈裟俊)に決めてもらうしかありません。
「どっちにしますか、係長。ベテラン女刑事か、ピッチピチ女子中学生か?」
「問題が違うでしょ!」
「ピッチピチじゃな」
「じじいっ!!💨」
係長のお墨付きを貰った亜弥は、即座に野村が潜伏するアパートに駆けつけますが、さすがに今回は警部が全力で阻止します。
「なんで首を突っ込むの! 私に仕返ししたいの?」
「なによ、それ」
松浦警部は、ずっと家のことを夫に任せて捜査に没頭し、母親らしいことを何もして来なかった負い目を感じてるのでした。
「お願いだから、こんな形で私を見返すのはやめて。もしもこんな事で、あんたが……」
「私、そんなつもりじゃないよ?」
「とにかくここは私たちに任せて。こう見えても優秀な刑事が揃ってるのよ。30秒で片付けてみせるわ」
「……分かった」
で、たぶん松浦警部に褒められたのは初めてであろう田口(三遊亭亜郎)&岩城(久保和明)らが喜び勇み、野村の部屋へと踏み込むのですが……
出来たてのインスタントラーメンを顔面に浴び、おまけに拳銃も奪われて、あえなく30秒で撃沈。結局、逃走する凶悪犯に亜弥が突っ込んで行くいつもの構図になっちゃいます。
野村は田口から奪った銃を構え、いつでも発砲できる状態。今回ばかりは警部の援護射撃が無ければ、さすがの亜弥も「たった10年そこそこの人生」を閉じる羽目になったかも知れません。
ついに警部が、亜弥の頬を叩きます。
もうこれ以上、母を心配させちゃいけないと悟った亜弥は、刑事部屋の藤堂係長にお詫びとお別れの挨拶をするのでした。
「なんじゃ、帰っちまうのか。そりゃ淋しいのう」
「……お母さん」
「ダメよ。どうせこの人はピッチピチが目当てなんだから」
「ピッチピチのなにが悪いんじゃ!?」
「これは売人の供述を元に作成したリストです。これだけの人数が改造銃を購入してるんです。ピッチピチとか言ってる場合じゃありません」
「あんたが振ったんじゃろが!」
と、そこで銃による他殺死体発見の知らせが入り、刑事たちが飛び出して行きます。母から受け継いだ敏腕捜査官の血が騒ぐ亜弥を、ロッカーから覗いてる女は幽霊じゃありません。
第5話『メル友って何じゃ?』では、ついに起こってしまった殺人事件により、身を引いたはずの亜弥がますます活躍しちゃう展開になります。
なにせ今回、例の改造拳銃で殺された被害者の少年=本木雅晴は、亜弥と同じあさひが丘中学校の生徒なのでした。
家に帰りますと言いながら係長と将棋してた亜弥は、その事実を知るや早速ケータイを取り出し、本木少年の交友関係を調べ始めます。
「そうか、メル友か!」
「情報収集にはこれが一番よ」
「メル友って何じゃ?」
「足で捜査する時代は終わったのかねえ……」
「メル・ギブソンの友達か?」
こうなるともう、松浦警部も亜弥のネットワークに頼るしかありません。
結果、殺された本木はクラスの虐めっ子グループのリーダーで、いつも虐められてた同級生が複数いると判ります。
その虐められっ子の1人=城島茂晴(山田広野)はまさに今、本木の子分だった3人の虐めっ子に虐められ中なのでした。
「そこまでよ!」
「1人の子を3人がかりで、カッコ悪すぎだよアンタたち!」
「なんだ、テメエ!」
「やんのかテメエ!」
「女だからって容赦しねえぞテメエ!」
不良だの極道だのといった連中はおしなべて、口にする台詞のボキャブラリーが乏しくて本当にカッコ悪いと、宮藤官九郎さんが仰ってました。
今度は女の子1人に3人がかりで殴りかかる卑劣な不良どもに、必殺あややビンタが炸裂!
きっかり3秒で戦闘力を奪われた不良どもは、田口刑事&岩城刑事にも日頃のうっぷんを余すこと無くぶつけられ、あえなく退散。
やられる側の痛みとオトナ社会の恐ろしさを思い知った彼らは、ニートとなって毎晩悪夢にうなされ、死ぬまで苦しみ続けることになります。祝・いじめ根絶!
弱いもの虐めはそれほど罪深いワケだけど、だからと言って撃ち殺すのは、ちょっとやり過ぎ。果たして犯人はこの城島くんなのか?
「キミもさ、ちょっとぐらい抵抗しないとカッコ悪いよ?」
「A組の松浦さんだ……」
「あやや、よく知ってるね」
「キミのことを知らないヤツなんて……」
照れてる場合じゃありません。亜弥がこの城島くんにターゲットを絞ったのは、同じ氏名が改造銃の購入者リストに載ってたから。
「拳銃買うのに本名教えちゃダメでしょ。これじゃどう考えたってキミが殺人犯だよ?」
「違うよ! 拳銃は確かに買ったんだけど、没収されたんだ」
「誰に? いつ? どこで? 何のために? 血液型は?」
「いっぺんに聞かないでおくれよ。学校で、持物検査されて……」
「!?」
「まさか、先生が?」
城島くんの担任教諭=長瀬智晴(児山武史)が拳銃を没収し、それがまったく公になってないという事は、つまり……!
第6話『亜弥の説教部屋』では、放課後の職員室に学校きっての美少女から呼び出され、ドキドキしながらやって来た長瀬教諭が、母親の手伝いで改造銃について調べてると告白され、赤くなってた顔を一気に青くします。
「キミ、そんな事してて、受験は大丈夫なのか?」
「あややぁ〜💦」
さすがは先生! いま最も痛いところを突かれ、さすがの亜弥も頭を抱えます。
「私のことはいいんです! 先生のクラスの城島くん、その改造銃を買っちゃったんですよ。ご存知ですよね?」
「えっ……そ、そうなのか?」
「先生。どんな嘘でも、必ず嘘は不利になっちゃうんですよ?」
「…………」
「城島くんが銃を買ったことは分かってるんです。その先は、言わなくても分かりますよね?」
「…………僕が没収した」
決して長瀬教諭は悪人じゃない。それをよく知ってるから、自首させて少しでも罪を軽くする役目を、亜弥が買って出たのでした。
「それから?」
「銃は……ウチに置いてある」
「それだけ?」
「…………」
「それだけじゃないんだね……」
「…………」
今度は長瀬教諭の方が頭を抱えます。
「先生のこと、みんないい先生だって言ってるよ? 私もそう思ってる」
「…………」
「先生、私はあなたを捕まえたりしません。あなたの心が知りたいだけです。逃げないで、勇気を出すんです!」
「…………僕は、イジメを無くしたかったんだ」
見て見ぬフリが出来なかった長瀬教諭は、虐めっ子らに話し合いを求めたけれど状況は変わらず、それどころか教師が介入したことで虐めは更にエスカレートしたのでした。
「虐められっ子を護るには、ああするほか無かったんだ!」
「そんな……それしか無かったなんて、そんなワケ無いじゃない! 最悪の選択だよ! なんで1人で抱え込んじゃったの?」
すでに精神を病んでいたであろう長瀬教諭は、いきなり立ち上がって懐から改造銃を取り出し、自分のこめかみに銃口を押し当てます。
「いけないっ!」
物陰で見守ってた松浦警部が駆け寄ろうとするも、間に合わない!
すると……
「バカッ!!」
メガトン級のあややビンタを浴びた長瀬教諭は、人生最多の鼻血を流して我に返るのでした。
「どうしてそんな簡単に、殺したり死のうとしたりするんですか!? 誰も死んだり生きたりなんて出来ないんです! 一度死んだらそこでおしまい、一度きりの人生なんです!」
「先生がそんな事してて、私たちはいったい誰から人生を、命の尊さを学べばいいんですか!?」
まるで金八先生みたいな亜弥の説教は、ずっと娘を放ったらかしにして仕事に打ち込んできた、母親の胸にもチクリと突き刺さります。
「あんたには参っちゃうわ」
「また怒るの?」
「ううん。大した娘よ、あんたは」
母親に脱帽され、満面の「どや顔」を見せる亜弥ですが……
「で、受験どうなってんの?」
「!?」
「私もすっかり忘れてたけど、大丈夫なの?」
「忘れてたって、いま何月だと思ってるの? あんたそれでも親?」
「誤魔化さないで!」
「そっちこそ誤魔化さないで!」
結局ケンカしちゃう2人だけど、それは今までとは明らかに違う、ほのぼのとした親子喧嘩。
そんな牧歌的な光景が、いつも陰から覗き見してるこの人(田中美穂)はお気に召さないご様子ですw
存分におちゃらけつつ、アクションやキャラクタードラマもしっかり盛り込むのが、昭和の刑事ドラマをよっぽど愛してるに違いないK監督の持ち味。
バラエティー番組内のミニドラマを、これほど細かくカット割りして映画風に撮る監督も珍しく、当然ながらコント風に撮るより数倍の時間とコストを要した筈で、現場の苦労が伺えます。
けれど最初の3話と違い、松浦亜弥さんが実に伸び伸びと演技されてるお陰で画面も弾み、がぜん面白くなって来たと私は感じてます。
続く第7話から第9話(最終回)までは一気に駆け抜ける3部作で、本格的なアクションシーンもあり、まるでちゃんとした刑事ドラマみたいになってます。是非、最後までお付き合い下さい!
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