ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『刑事珍道中』

2018-10-30 00:00:05 | 日本映画









 
タイトルは「デカチンどうちゅう」と読みますw

脚本=鎌田敏夫、監督=斎藤光正と言えば角川映画『戦国自衛隊』のコンビですが、それ以前に日本テレビの『青春』シリーズや『俺たち』シリーズ、そして『太陽にほえろ!』でも数々の名作を残された二大巨匠でもあります。

『ニッポン警視庁の恥と言われた二人組/刑事珍道中』(’80) はこのお二方に加えて、企画に岡田晋吉プロデューサーも名を連ね、キャスト陣も『青春』『俺たち』『太陽』とほとんど同じ顔ぶれですから、まるで日テレ製作の映画みたいに感じるんだけど、なぜかこれは角川映画だったりします。

松田優作主演『野獣死すべし』と2本立てで公開され、私も当時映画館で観ました。『野獣死すべし』と言えば精神を病んだ元戦場カメラマンによる犯罪と、その末路を描いた超シリアスな作品です。それとこの『刑事珍道中』の組み合わせってのがまた、凄いコントラストでしたw

優作さんが角川で『蘇る金狼』を大ヒットさせた次の作品って事で、メインは『野獣死すべし』で『刑事珍道中』は添え物みたいな扱いでしたけど、蓋を開ければ「デカチンの方が面白い!」「角川映画の隠れた傑作!」といった声が聞こえるほど、実は評判の良かった作品なんですよね。

実際、私はDVDやCATVで4~5回はこの映画を観てるんだけど、何回観ても笑える! 公開から30年も経ってるのに、ちっとも色褪せてないんです。

ドジな刑事コンビ=中村雅俊&勝野 洋が手柄を競いながら事件を解決するという、何の変哲もないお話なんだけどw、それで4~5回観ても飽きないんだから、如何にコメディとして良く出来てるかって事ですよね。

先日CATVで放映されたのを観てて、これはまるでコメディの教科書みたいな作品だ!って、あらためて感心させられました。

1つ1つのオチは、簡単に読めたりするんです。人を笑わせたり泣かせたりするには、意表を突いてやるのが一番効果的だし手っ取り早いと思うんだけど、この映画はそれをしない。あくまで正攻法なんです。

例えばドリフの「志村!後ろ!後ろ!」とかダチョウ倶楽部の「押すなよ!絶対押すなよ!」みたいな黄金パターンばっかりなんですよね。例えは良くなかったかも知れないけどw

ろくに犯人を逮捕した試しがない2人に、いつもカミナリを落とす課長(金子信雄)が、机をバンバン平手で叩くんだけど、そこに画鋲が転がってるワケですよw

最終的にその画鋲が手に刺さってアイタタタ!ってなるのは100%明らかなのに、それでも笑っちゃう。オチが分かってて笑うワケだから、観るのが2回目であろうが3回目であろうが同じなんです。

雅俊さんが犯人の情婦に誘惑され、マンションの部屋で2人きりになって「シャワーを浴びて来て」とか言われちゃう。もちろん犯人が仕掛けた罠です。

バカだからすっかりウキウキ気分でシャワーを浴びてる雅俊さんと、ベッドルームで犯人に殺される情婦、そして犯人から通報を受けた課長ら刑事部隊が部屋へ急行する姿が、カットバックで描かれる。

部屋に着いた課長らが情婦の遺体を見つけると同時に、半裸の雅俊さんが満面の笑顔でシャワー室から登場し、課長と鉢合わせw

100%そうなる事が分かってるのに、何回観ても笑っちゃう。見せ方(脚本、演出、撮影)と俳優さんの芝居が、まさに完璧だからこそ笑えるんだと思います。

こういった笑いは、万国共通だし時代の変化にも影響されません。チャップリン映画と同じで、台詞を翻訳しなくたって映像だけで世界中の観客を笑わせる事が出来る筈です。

今、こういう喜劇を創れる人って、かなり少ないですよね。日本だと三谷幸喜さんぐらいしか思い浮かびません。

まず元ネタありきの小ネタで笑いを取る、クドカンさんや堤幸彦さんとは質が全く違います。元ネタを知らない海外の人が『あまちゃん』を観ても、ほとんど笑えないだろうと思います。

『あまちゃん』が好きな人は『刑事珍道中』の笑いを「古臭い」って感じるかも知れないけど、10年先、20年先に両作品を観比べて、果たしてどっちが古臭く感じるか? きっと面白い現象が起こりますよ。

別にクドカンよりもデカチンの方がいい!って、決めつけてるワケじゃありません。そりゃあ、デカいに越した事はないけれど。

同じコメディでも質がそれだけ違うんだって事を言いたいだけで、どっちを好むかは人それぞれの感性で良いと思います。

それはともかく、本作は青春ドラマのスタッフ&キャストが集結してるだけあって、ただのドタバタ喜劇に収まる事なく、ちょっとホロリとさせられる青春映画にもなってます。

そして藤谷美和子、大楠道代、風祭ゆき、木ノ葉のこ等、時代を彩った女優さん達が登場し、それぞれヌードや水着、下着などセクシーな姿を披露してくれたりもします。

例によって角川社長もカメオ出演してるんだけど、シャレの効いた使われ方で、クスッと笑えます。春樹さん、絶好調でしたねw

音楽は近田春夫さんが担当し、主題歌「マーマレードの朝」は桑田佳祐さん作詞・作曲で、雅俊さんが唄っておられます。
 

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