どういういきさつでヒロインの愛(桜井ユキ)が、地下アイドルグループ「サニーサイドアップ」のぽんこつメンバー・ハナ(白石 聖)につきまとうストーカーの背中を「押して」マンション上階から突き落としたのか?
……っていうミステリーを縦軸にしつつ、地下アイドルたちの実態やそのファンたちとの関係を、多少ドロドロした部分までリアルに描いてきたこのドラマ。
だけど最後まで観れば実に爽やかな後味が残り、本質は「青春ドラマ」だったことを実感させられます。私は正直、めっちゃ泣きましたw
愛がストーカーを突き落としたっていうのはミスリードで、実際にやらかしたのはハナであり、愛は彼女にサニーサイドアップ解散ライブへの出演を果たさせる為、とっさに無い知恵を絞って罪を被ったのでした。
重要なのは誰が真犯人なのかではなく、愛がそうまでしてハナに尽くそうとした事実と、ハナがそんな彼女の「愛」を受け止めたという事実。
自分が何を求めてるのか分からないまま大人になった愛は、とにかく周りの空気に合わせることに必死で、彼氏との交際すらインスタ映えのネタに過ぎなかった。
一方のハナは高校時代にイジメの標的にされ、みんなに無視される地獄を味わってきた。そんなハナが無意識に求めたのが「自分を見てもらうこと」「自分の名前を呼んでもらうこと」であり、それを叶えてくれるのが地下アイドルの世界だった。
愛はハナを推すことで初めて自分が夢中になれること、オマケにそれを共有できる仲間たちとも出逢い、偽りの自分を卒業することが出来ました。
そしてハナも、愛のアドバイスのお陰でファンを増やし、注目され名前を呼ばれ、挙げ句に無償の愛まで受けて心の傷を癒せました。
二人とも、学生時代に味わえなかった青春を地下アイドルの世界で味わい、成長し、たぶん大人になったんですよね。ハナは自ら警察に出頭してアイドルをすっぱり辞め、愛も会社を辞めて本当にやりたい仕事を探す決断をしました。
ハナは正当防衛が認められて不起訴になるんだけど、愛の社会的立場を守るため関係を断ち切っちゃうんですよね。取調室における握手が明らかに訣別を暗示してて、そこで私の涙腺が決壊しちゃいましたw
私自身も学生時代にはろくな思い出がなく、卒業後に始めた自主映画の制作こそが「初めて夢中になれること」「それを共有できる仲間との出逢い」の場であり、そこで監督と主演までしてましたから「自分を見てもらう」「名前を呼んでもらう」場所でもあった。今から思えば、人生において自分が最も輝いてた時期です。
それを辞めることは、ちっとも輝かない自分、誰にも興味を持ってもらえない本来の自分に戻ることを意味しますから、それが怖くてズルズルと10年以上も続けちゃいました。結局、プロになって自分の実力や情熱のショボさを思い知らされ、足を洗うことになるんだけど、10年以上も「青春」を味わいましたから思い残すことは何もありません。
だから同じことをまたやりたいとは全然思わないけど、人生で自分が輝けた唯一の時期ですから、思い出すたび切ない気持ちにはなっちゃいます。
ちっとも輝かない自分に戻ることは、すごく勇気の要ることです。そうやって特別なことをしなくても輝ける人、普通に楽しく人づき合いが出来ちゃう人には、たぶんその気持ちは解らないだろうと思います。
愛もハナも、輝けた期間は1年にも満たず、たしか「あの熱い夏の日々」みたいな台詞もありましたから、ほんの数ヶ月のことなんですよね。それだけに余計、訣別シーンが切ない。めちゃくちゃ切ないんだけど、二人がそれぞれ大人になるための、これは卒業式みたいなもの。そう言えば二人の握手は、卒業証書の授与式にも似てる気がします。
私はもう二度と輝くことも無いまま朽ち果てていくだろうだけど、まだ若い(そして美しい)二人にはまだまだこれから第二、第三の青春があるかも知れません。
いや、もしかすると世の中には「あの時の自分は輝いてた」って言える時期が全然思い当たらない人も、少なからずおられるかも知れません。愛やハナみたいに短期間の輝きでも、あるいは私みたいにちっぽけな輝きでも、あったと言えるだけラッキーなのかも?
いずれにせよ、久々にどっぷり自己投影できるドラマでした。つまり自分が抱える悩みとか虚しさなんて、別にそんなに珍しくもないって事ですね。
とりあえず今は、このブログだけが唯一のオアシスです。そう書くと寂しげだけど、あるだけラッキーと言えるのかも知れません。
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