橋爪 功さんに続いて今回は中条静夫さんと、後に重鎮になられる俳優さんのゲスト出演が続きます。
中条さんは3度目のご登場ですが、前2回はほぼ1シーンだけのチョイ役出演で(それでもさすが、強い印象を残されてます)、メインゲストとしてのご出演はこれが初にして唯一の作品。
印象操作とは恐ろしいもので、画像を上のように並べると中条さんがまるで変態レイプ魔みたいに見えますが、勿論そんな話じゃありませんw
☆第270話『殿下とライオン』
(1977.9.30.OA/脚本=小川英&高階秋成/監督=小澤啓一)
建設会社のビル工事現場で、設計課長の矢部(三田村賢二)が転落死。その直前に彼と激しく口論する姿が目撃された、社長の岩沢(中条静夫)に疑惑の眼が向けられます。
短気かつ頑固な岩沢は陰で「ライオン」と揶揄されるワンマン社長で、社員に慕われるどころか恐れられ、煙たがられる存在。事情聴取に来たロッキー(木之元 亮)を一目見るなり「なんだ、この髭モジャは!」と言い放つw、ある意味面白いけど好感度は最悪な人物。
しかも死んだ矢部課長は、岩沢社長が溺愛する一人娘=美樹子(島村佳江)の婚約者だった男。殺害を疑われる条件が揃い過ぎてます。
それでも岩沢は、毅然として犯行を否認。それを証明する目撃者もちゃんといると主張します。その人物とは……
「わしだ。矢部が一人でよろけて落ちて行くのを、わしはこの眼でハッキリと見た。あれは事故だ。目撃した本人のわしが言うんだから、こんな確かなことは無い!」
決して間違ったことは言ってないけど、面白いですw 別に社長はトボケてるワケじゃなくて、あくまで大真面目。生き方そのものが独善的で、普通の人と感覚がズレてるようです。
そんな折り、愛娘の美樹子が自殺未遂をやらかし、岩沢社長は大いに取り乱します。社長は過去にも美樹子の交際相手を殴るなど揉め事を起こし、その恋路をぶち壊して来た経緯がある為、彼女も父親が矢部課長を殺したんだと確信し、絶望したのでした。
それでも社長は、矢部課長と口論になった原因についても頑なに口を閉ざし、容疑は濃くなる一方。
すると今度は、人事部長の上原が自宅マンションで投身自殺し、死亡。その直前に岩沢社長がマンションを訪ねており、もはや無実を疑う余地も無い状況。弔問に訪れた社長は、遺族から刺すような眼で睨まれます。
だけど、彼をずっとマークしてる殿下(小野寺 昭)は、その帰りに酒をあおって泣き崩れる孤独なライオンの姿を目撃し、彼を参考人招致するのを少し待って欲しいとボス(石原裕次郎)に進言します。
そして岩沢社長が美樹子の交際相手を殴った過去についてよく調べてみると、実は探偵にその男の身辺調査を依頼し、そいつが財産目当てのロクデナシであることが判った為に揉めた、といういきさつがあった。だけど娘を傷つけたくない社長は、殴った理由を誰にも言わなかったのでした。
さらに、転落死した美樹子の婚約者=矢部は密かにライバル企業と手を組み、経営不振の岩沢建設から優秀な人材だけを引き抜こうと画策してたことも判明。
つまり矢部は会社を裏切り、美樹子も捨てるつもりだった。その事で口論になり、激昂した矢部は自分で足を滑らせ転落した。人事部長の上原が自殺したのも、矢部の裏切り工作に加担した後ろめたさによるものだった。
それを全て話せば容疑が晴れたのに、岩沢社長はやはり美樹子が傷つくことを恐れ、頑なに黙ってたワケです。その真意を殿下に見抜かれ、社長はようやく本音を吐露します。
「ワンマンと言われようと、ライオンと笑われようとわしは平気だった。裸一貫で稼いだ金でトラック1台買って今日まで、わしはそうやって生きて来た。他のやり方を知らんのですよ」
「…………」
「しかし、その結果がこれだ。やっぱり、わしが間違っていたんだろうか? なあ、刑事さん。矢部を殺し、上原を殺したのは、やっぱりこのわしだったんだろうか?」
そんな社長の想いも知らず、美樹子は友人のいるベルギーへ移住する準備を進めます。父と永遠に訣別するために。
そんな彼女に、殿下がいきさつの全てを伝えます。
「お父さんはそういう人なんです。家族や会社を何よりも愛し、敵から守るために必死になって闘い、その事でどう誤解されようとも、お父さんは自分を責める事しか出来ないんです。どう言い訳をしたらいいのか、お父さんには分からないんです」
「…………」
「お父さんを誤解したのは、あなただけじゃありません。僕らも同じです。そういう、溢れるような愛情を持った人を、誰一人解ってあげる人がいなかったんです。本当に誰一人……」
「刑事さん……」
美樹子がベルギー行きを取りやめ、父を支えていく決心をしたことは言うまでもありません。
エゴ丸出しの嫌われ者が、実は誰よりも優しい心の持ち主だったという、ドラマ世界においてはよくある話だけど、これは日本がまだイケイケだった時代、こんなライオン親父が実際に沢山いた時代が背景だけに、説得力があります。
そして、中条静夫さんがまさにハマり役。今回は七曲署の刑事たちが傍観者に過ぎず、完全にライオン社長が主役ですから、中条さんの魅力と実力が無ければ失敗作に終わったかも知れません。瞳ちゃん、お茶。
ゲストヒロインの島村佳江さんは、当時20歳。前年にATG映画のヒロインとしてデビューされたばかりで、TVドラマの出演はこれが2本目。
『太陽にほえろ!』の製作陣が、如何に幅広い分野から人材を発掘されてたか、ゲストのキャスティングを見てるとよく分かります。同じ売れっ子俳優ばかり使い回す昨今のテレビ屋さんたちは、そういう努力を惜しみ過ぎてるのでは?
以降、島村さんは第537話、第681話、『PART2』の第9話にもご登場、『太陽』ファンにはお馴染みの女優さんになられました。
ほか『非情のライセンス』『特捜最前線』『私鉄沿線97分署』『誇りの報酬』『大都会25時』『はぐれ刑事純情派』『さすらい刑事旅情編』等の刑事ドラマにもゲスト出演。この『殿下とライオン』と同じ'77年に主演された映画『西陣心中』ではヌード&濡れ場も披露されてます。
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