画像をご覧の通り、1980年のスコッチ刑事(沖 雅也)は前期('76~'77年)と比べて表情がとても豊かになりました。
復帰してから約1ヶ月ほどは前期のクールさを残してたけど、#404『鍵のかかった引き出し』のラストシーンで笑顔を見せたあたりから、ホットなキャラへのシフトチェンジが顕著になって来ました。
スーツの色も明るくなり、若手のロッキー(木之元 亮)やスニーカー(山下真司)と行動を起こす際にはブロックサイン的なジェスチャーを使う等、『大追跡』あるいは『俺たちは天使だ!』のノリを取り入れたアドリブも随所で見られるようになりました。
本放映当時の私は、こないだも書いたように前期スコッチとのギャップに戸惑ってたんだけど、今となっては明るいスコッチも悪くないと受け入れてます。締めるべき時はきっちり締めてくれますからね。
間もなくドック刑事=神田正輝さんが登場することで尚更『俺天』カラーが濃くなるんだけど、やがて沖さんが体調を崩され、欠場が目立つようになるとスコッチは再びクール……というより落ち着いたキャラに戻っていくので、麻生キャプテン的なスコッチが楽しめるのは'80年だけ。
体調が優れないと当然アクションのキレも衰えるし、ちょっと肥えたりなんかもしちゃうので、最も元気で最もカッコいいスコッチが堪能できるのも'80年だけ。
だからこの画像集『沖 雅也 in 太陽にほえろ!』も'80年限定にしておこうと思ってます。元気を無くされていく過程を追うのはツラいですから。
'80年の沖さんはホントに活き活きされてます。そのまま時が止まってくれたらいいのにって、思わずにはいられません。
スコッチが復帰して殿下が殉職するまで(#400~#414)の藤堂チーム=七曲署捜査第一係のメンバーは、以下の通り。
☆☆☆☆☆
ボ ス=藤堂俊介(石原裕次郎)
スコッチ=滝 隆一(沖 雅也)
ロッキー=岩城 創(木之元 亮)
スニーカー=五代 潤(山下真司)
ゴリさん=石塚 誠(竜 雷太)
殿 下=島 公之(小野寺 昭)
長さん=野崎太郎(下川辰平)
ナーコ=松原直子(友 直子)
山さん=山村精一(露口 茂)
☆☆☆☆☆
まさに「復活」のシーズンだったと思います。文字どおりスコッチが山田署から帰って来てくれたこと、その化学反応でスニーカーが元気を取り戻してくれたこと、それに加え久しく見られなかった『太陽にほえろ!』のハードアクションも復活してくれて、私は大袈裟じゃなく嬉し涙を流したもんです。
『太陽~』は本来、青春アクションドラマなんです。アクションがあればこそキャラクターが活きてドラマも盛り上がる。それを創ってる人たちが勘違いして「人間ドラマ」だの「愛のドラマ」だの「社会貢献」だのと言い始めてからおかしくなっちゃった。
それもこれもアクションがあればこそ活きて来るワケです。人間の内面ばかり描けば暗くなるし、愛とか社会とか意識しすぎると説教臭くなる。同じ比重で躍動を描かなきゃダメなんです!
そのバランスが絶妙だった#401『紙飛行機』、#404『鍵のかかった引き出し』、#410『捜査だけが人生じゃない』、#411『長さんが人を撃った』あたりはどれも傑作でした。前シーズンにはそういうのが1本も無かった。ホントにどうなることかと思いましたよ!
その点でもやっぱり、アクションが画になるスコッチの存在は大きい。いくら走ろうが撃とうがロッキーじゃカッコ良く見えないんですよねw 殿下もそう。ファンの方には申し訳ないけど、そういう意味じゃ殿下の退場も有難かった。すべて私個人の感想です。
アクションの復活により『太陽~』本来の面白さが蘇り、私から見れば戦力外だったメンバーが消え、お膳立てが出来たところでいよいよ、後期『太陽~』を引っ張っていくあの人が登場するワケです。
なんという強運! この番組はやっぱり、なにかを「持ってる」としか思えません。
☆第414話『島刑事よ、永遠に』
(1980.7.11.OA/脚本=畑 嶺明&小川 英/監督=竹林 進)
『太陽にほえろ!』5人目の殉職者は島公之=殿下(小野寺 昭)となりました。
過去の爆弾事件で半身不随の重傷を負った殿下の婚約者=三好恵子(香野百合子)が、アメリカで5度の手術とリハビリを経て奇跡の復活を遂げ、約1年半ぶりに帰国するのを出迎えるため、奇しくも「爆弾事件」を解決させたその足でウキウキしながら車を走らせた殿下は、対向車線をはみ出して来た暴走トラックを避けて車ごと崖から転落し、壮絶な爆死を遂げるのでした。
勤務時間内とはいえ私用の移動中に起こった交通事故による死で、それは果たして「殉職」と言えるのか?っていう議論が未だにファンの間で続いてるけど、そんな事はどうでもいい。退勤後に刺されたマカロニ(萩原健一)も病気で死んじゃうスコッチ(沖 雅也)も、番組内で死ねばみな殉職って事でいいじゃないですか。
私はそんな事より、ベテランの殿下がこういう形で降板したせいで、レギュラー刑事の殉職が単なる卒業セレモニーになっちゃったのが未だに残念です。これを皮切りにあの人もこの人も殉職、とにかく降板するなら「殉職するのがステイタス」みたいになって、退職や転勤だとまるで「残念な人」みたいな空気まで生まれちゃった。
何もかも結果論ではあるんだけど、若くして逝く新人刑事の殉職には美学みたいなものを感じたし、そもそも新人刑事の成長を描くドラマなんだから、一人前になった時点で華々しく散るというのは理にかなってます。
だけどベテラン刑事の殉職には「話題作り」以外の意味が何も見いだせません。演じる俳優さんは「ケジメ」として「死なせて欲しい」思いがあったみたいだけど、番組の1ファンとしては殉職を安売りして欲しくなかったです。
殿下以降の殉職編で私が意義を感じたのはボギー(世良公則)ぐらいで、あとの人たちは転勤でよかった。そして度々ゲストで復帰してくれた方がファンはよっぽど嬉しいですよ。
そんなおかしな流れの口火を切ったのがこの第414話ですから、正直なところ私は好きじゃありません。視聴者を泣かせる為にだけ引っ張り出された三好恵子さんがあまりに気の毒だし(なんて悲惨な人生なんだ!)、テーマ曲やブリッジ曲を多用しすぎてうるさいし、ご都合主義な展開も多いしで、歴代の殉職編の中でも私個人の評価はかなり低いです。
良かったのは爆弾魔に扮した原口剛さんの演技と、『あさひが丘の大統領』の生徒役だった大村波彦さんがゲスト出演されたこと、ぐらいでしょうか。大村さんはこのあと杉サマの『大捜査線シリーズ/追跡』に刑事役でレギュラー入り。結果的に神田正輝さんとトレードされたような形になりました。
PS. もし仮に、番組の視聴率がまだ絶好調だった時期に小野寺さんの降板が決まったら、殉職という形にはならなかったかも? 数字を稼ぐには殉職というカードを出すしかない、当時の切羽詰まった状況が殉職のバーゲンセールを生んでしまった気がします。
☆第411話『長さんが人を撃った』
(1980.6.20.OA/脚本=小川 英&四十物光男/監督=山本迪夫)
長さん(下川辰平)とスニーカー(山下真司)が覆面車で移動中、郵便局の様子がおかしい事に気づき、入ってみたら拳銃を持った強盗がいるもんだから驚いた!
その男=中山(氏家 修)が、金庫から出した現金書留の山にすぐさま放火し、逃げようとする女子店員に銃口を向けて、今にも発砲しそうになったもんだから、長さんは咄嗟にCOLTローマンの引金を引きます。
お陰で女子店員は助かり、郵便局の被害も最小限で済んだものの、人を撃った代償は大きかった。『西部警察』の刑事たちが撃つ弾丸100発分の重さが『太陽にほえろ!』の1発にはあるんですw
長さんが放った弾丸は中山の両腎臓を破壊し、彼は死ななかったものの人工透析なしでは生きていけない身体になっちゃいました。
過去にも強盗をやらかした前科者の中山には、看病してくれるような身内もおらず、長さんは泊まり込みで彼の面倒を見ようとします。
「長さん……長さんの責任じゃありませんよ! 人質、放火、それに拳銃……緊急措置としては当然の発砲じゃないですか!」
現場で一緒にいたスニーカーがそう言っても、長さんは意志を曲げません。
「当然とは言えんよ。あの場合、発砲するにしても拳銃か利き腕を撃つべきだ。しかし俺には、それだけのゆとりが無かった……」
「無理ですよ、あんな一瞬にそんな。長さんが撃たなかったら俺が撃ってました。それこそ、射殺してたかも知れません」
「しかし、撃ったのは俺だ」
「長さん……」
しかも長さんは、中山の自供が取れた時点で辞職する決意まで固めてしまい、スニーカーはじめ藤堂チームの仲間たちを大いに動揺させるのでした。
しかしそれにしても、なぜ中山はあの時、現金書留の山に火を点けたのか? 刑事たちの捜査により、どうやら中山はある一通の封書に現金と一緒に入っていた、何かの書類を処分しようとしていた事、それは何かの犯罪計画を記したメモらしいという事が判って来ます。
共犯者が複数いる事も判明し、恐らく中山が抜けても計画は実行されてしまう。それを阻止するため、長さんは中山を看病しながら自供を促すのですが……
「あんた、俺を撃った口実が欲しいんだろ?」
「いや、私は……」
「そうはいかないぜ。俺はただカネが欲しかっただけだからな。拳銃だって脅かしで持っていただけだ。それをテメエは撃ちやがったんだ!」
「…………」
「二度と来んな。テメエの顔見てると治る傷も治らねえや!」
中山はこれまでの人生で親兄弟を裏切り、友達を騙し、ただ自らの欲望の為にだけ生きて来た。今回もどうやら、計画から抜けようとした仲間を殺し、そいつが証拠として残そうとしたメモを処分する為に郵便局を襲った。
「長さん、あいつは悪党なんですよ! どうしようもない悪党なんですよ!」
「悪党ならどうだと言うんだ? 俺はな、スニーカー。銃で撃ってもいい人間なんてどこにもいないと信じてるんだ。いや、そう信じたいんだよ」
そんなこと言ったら『西部警察』の立つ瀬が無くなるし、悪党は全員ぶっ殺せ!っていつも書いてる私も困るんだけどw、まぁどう考えても長さんが正しい。圧倒的に正しい。この人は『太陽にほえろ!』の良心そのものなんです。
さて藤堂チームの捜査により、中山たちの犯罪計画の正体が、競艇場の売り上げ金を強奪する事であると判明。藤堂チームは先手を打って現金輸送車のコースを変更させ、本来のコースにはオトリの車を走らせる作戦を決行。その車は長さんが運転する事になりました。
一方、中山の病室に張り付いてたスニーカーは、彼の腎臓移植手術に長さんがドナーを買って出たという事実を知り、愕然とします。そう、だから長さんは……
「中山! 長さんはお前のために、刑事まで辞める気になってるんだ!」
さすがの中山も動揺するんだけど、それでも彼は態度を変えません。
「そんなこと知るかよ。ま、大して有り難くもないけど、せっかくだから貰ってやるか」
そう言ってせせら笑う中山に、長さんが職を捨ててまで腎臓をくれてやる価値が果たしてあるのか?
そうとも知らずに長さんは、刑事として最後の仕事を全うすべく、ダミーの現金輸送車を運転し、ライフルで武装した悪党どもの襲撃を受け、勝てる見込みのない戦いに挑みます。
ダンプカーに体当たりされて車は横転し、利き腕を撃たれて反撃も出来ず、いよいよ長さん絶体絶命! 辞職する前に殉職しちゃうのか?!
と、その時! 一台のセダン車が、ダンプカーの反対側から猛スピードで走って来ます。運転してるのはなんと、病室から脱走した中山!
「よし、挟み撃ちだ」
悪党どもがニンマリ笑い、ダンプカーも長さんに向かって突進します。もはや逃げ場なし! さよなら長さん!
と、思いきや! 横転したダミー車を踏み台にして、中山の車が大ジャンプ! 見事ダンプカーの運転席に体当たりし、長さんを悪党どもから救ったのでした。
「中山! 中山! おいっ、しっかりしろ!」
グシャグシャに潰れたセダン車に駆け込んだ長さんは、血まみれになった中山を抱き起こそうとしますが、もはや虫の息。
「……野崎さん……無事かい?」
「ああ、すぐに救急車が来るからな!」
「……刑事、辞めないでくれよ……俺みたいに、馬鹿なヤツのためにさ……」
「中山……」
「辞めないで……くれ……」
「中山?! 中山ぁーっ!!」
思わぬ展開に、私は不覚にも泣きました。銃で撃ってもいい人間なんてどこにもいない……そんな長さんの信念が、最後の最後に中山をダークサイドから帰還させたワケです。長さんの命を救ったことで、彼の魂も救われた事でしょう。
だけど長さんは、刑事を辞めることをやめようとせず、ボス(石原裕次郎)を困らせます。
「結局、中山は死なせてしまったワケですし……あいつをそんな羽目に追い込んだのも……やはり私のせいですから」
「……だがな、長さん。その中山が死ぬ時に、一番望んでいた事くらい、俺も叶えてやりたいと思うよ」
「そうですよ、長さん!」
「俺もそう思うよ、長さん」
スニーカーや山さん(露口 茂)、あのスコッチ(沖 雅也)にまで説得され、ようやく辞表を取り下げる長さんなのでした。
「まったく世話が焼けんだよな。いくらトシ取っても」
「は?」
ボスの余計な一言に、温厚な長さんがムッとしたところでジ・エンドw
今回は数ある「長さん試練編」の中でも、たぶん1、2を争うハードな内容。相手の両腎臓を破壊しちゃうという展開は、射殺以上にショッキングだし、重いです。
けど、それを陰鬱になり過ぎず、これまた屈指のハードアクションでクライマックスを盛り上げ、我々の心を揺さぶってくれました。例えば中山が長さんをかばって撃たれるみたいな、地味なアクションだと私は泣かなかっただろうと思います。ハードアクションにはそんな効果もあるワケです。
また『あさひが丘の大統領』#25でも存分に発揮された、下川辰平さんの哀愁オーラがじわじわ効いて来るし、中山を演じた氏家修さんの独特な暗さ、まるでナイーブが服を着て歩いてるみたいな佇まいも抜群にマッチしてました。これは名作だと思います。
☆第408話『スコッチ誘拐』
(1980.5.30.OA/脚本=中村勝行/監督=鈴木一平)
意外と本数が少ない、スコッチ刑事(沖 雅也)の貴重なハードアクション編。じっくりストーリーを語るような作品じゃないのでサラッと流しますが、これまでの『太陽にほえろ!』じゃ聴けなかった素敵なセリフがいくつもあるので、そこをピックアップして行きたいと思います。
ある日、女子高生の恵子(白石まるみ)が下校途中、石橋蓮司たち悪党3人組に誘拐されます。すぐに藤堂チームが動き出すんだけど、なぜか蓮司たちは身代金も何も要求して来ない。石橋蓮司だけに何か別の狙いがありそうです。
すると深夜、自宅待機してたボス(石原裕次郎)にスコッチから電話がかかって来て、蓮司に呼び出されたと言うもんだから驚いた。
「とにかく1人で来いというのが条件ですから。行って来ます」
「おい、ちょっと待て。スコッチ!」
天下のボス様の制止を無視し、一方的に電話を切っちゃうのもスコッチならでは。こういうキャラが1人いるだけでドラマの層が厚くなります。
で、指定された場所に出向いたスコッチは、ライフル銃で武装した蓮司たちにあっさり拉致され、恵子と一緒に大型トラックのコンテナに監禁されちゃいます。
三人組はかつて、2ヶ月かけて綿密に計画した銀行強盗を、たまたま通り掛かったスコッチに職務質問されたせいで、中止を余儀なくされてしまった。
そう、真の目的はスコッチへの復讐であり、現職刑事である彼を次なる強盗計画に加担させること。恵子の誘拐はその為のエサに過ぎなかったワケです。強盗より誘拐の方が罪は重い筈だけど、蓮司の辞書に「捕まる」という文字は載ってないんでしょう。
そんなワケで、本物の警察手帳を持つスコッチが警備員たちを欺き、まんまと蓮司たちは現金1億円の強奪に成功します。
このテの話はアクション系の刑事ドラマじゃすでに定番化してたけど、あまりに荒唐無稽ゆえか『太陽にほえろ!』じゃそれまで一度もやってなかったと記憶します。ファンの間じゃ賛否両論ありそうだけど、私はもちろん大歓迎。こんな話ばかりだと困るけどw、元よりあらゆるジャンルを網羅した「ドラマのデパートメント」なんだから全然アリだと思います。
さてスコッチは、最初に蓮司から呼び出された時点で、この展開をある程度予測してました。おとなしく蓮司たちの指示に従いながら、スコッチは虎視眈々と「倍返し」のチャンスを伺います。
すっかり油断した蓮司たちに恵子が解放され、無事に帰宅したという報せを受けた途端、ボスがふだんは浅黒い顔を青くして呟きます。
「危険だ……」
「えっ?」
「スコッチは人質の命を守るために奴らの言いなりになった。だが、その人質が解放されたとなると、あいつを束縛するものは何も無い」
「かえって危険な状況になったって事ですか!」
「あいつの事だ。何をしでかすか分からんぞ……」
スコッチが殺される事よりも、スコッチが大暴れして甚大な被害が出ちゃう事を心配するボスが最高ですw こういう面白味も今までの『太陽~』には無かったですよね。
案の定、スコッチは行動を開始します。
「おい。タバコくれ」
「なんだって?」
「タバコを吸わせてくれと言ったんだ」
「刑事さんよ。人にモノを貰う時はな、もっと下手に出るもんだぜ!」
「イキがるな、バカ」
「なんだとコノヤロオォォォーっ!!」
蓮司の子分2人の内、より短気そうなヤツを選んでわざと怒らせたスコッチの狙いは、コンテナの片隅に置かれた補充用ガソリンのポリタンク。フルボッコにされながらスコッチは、そのタンクに近づいてニヤリと笑います。
恵子からコンテナ内の状況を聞き出した山さん(露口 茂)も、そこに着目します。
「それだ山さん。スコッチはガソリンを武器に使うつもりだ!」
「危険だ! 危険すぎる!」
「確かに危険です。しかしトラックの居場所を知らせるには有効な方法です!」
そう、スコッチはガソリンを滲ませた衣服に火をつけ、蓮司たちをパニック状態にさせると同時に、その煙でトラックの居場所を周りに知らせます。一歩間違えばポリタンクが爆発して全員木っ端微塵だけど、スコッチは間違えません。
慌てて工事現場に突っ込んだトラックから、スコッチが決死のダイビング! さらに相当な高さの鉄骨から砂場に飛び降りるスタントも、全て沖雅也さんがご自身で演じておられます。(ちなみに蓮司はスタントマン任せw)
あとはもう独壇場。華麗なる立ち回りで1人、また1人とフルボッコにしていくスコッチの勇姿は、凶暴にして神々しいほどカッコいい!
似たようなキャラの刑事は『太陽~』以外の番組にも沢山いるけど、アクションでここまで魅せられるのは『大都会 PART ll』の徳吉刑事(松田優作)ぐらいしか見当たらないし、現在だともう皆無でしょう。まさにレジェンド!
わざわざ居場所を知らせるまでもなく、藤堂チームの仲間たちが駆けつけた時にはもう、敵はすっかり制圧されてました。
「ロッキー、スニーカー。あとの2人は向こうに転がってるぞ」
蓮司にライフルの銃口を向けつつ、後輩たちに後片付けを指示するスコッチも超カッコいい! こんな姿をもっといっぱい見せて欲しかったですね。(やがて沖さんが体調を崩され、スコッチは山さん化していきます)
「たっ、助けてくれ! 助けてくれよ、おい!」
こいつなら本気で殺しかねないと悟った蓮司は、ちゃんと分別がありそうな長さん(下川辰平)に救いを求めます。
「よしよし、助けてやるよ。お前たちの証言が無くちゃ滝刑事は助からんからな」
そう、スコッチは蓮司たちを半殺しにするより前に、銀行強盗の片棒を担いじゃってる。いくら人質を取られてたとは言え、お堅い警察上層部はこれを契機に厄介払い=スコッチをクビか左遷にしかねません。
本庁から戻って来たボスは、浅黒い顔をまたもや青くしながら、暗いトーンで言います。
「今度の件に関して、いろいろ検討した結果、やはり……」
「やはり?」
「オッケーだよ~ん!」
ここでボスがいにしえの「がちょ~ん!」ポーズを披露されたのは、のちに石原プロの『ゴリラ/警視庁捜査第8班』で谷啓さんがキャスティングされるのを予知しての事に違いありませんw
いや~、やっぱりアクション物はいい! 血湧き肉踊るとはまさにこういうこと。ただし、それがちゃんとサマになる役者さんがいればこそで、後のジプシー(三田村邦彦)やデューク(金田賢一)じゃこうはいきません。沖雅也さんはやはり日本映像界の宝だったと、つくづく思います。
前回レビューの『あさひが丘の大統領』#26じゃヒロインだった白石まるみさんは、さすがに今回みたいな内容だと「お飾り」にならざるを得ないけど、そこにいるだけで輝く「華」であればこそのお飾りで、その役目は十二分に果たされたと思います。
その功績が認められてか、以後も#439『ボスの告発』、#560『愛される警察』、#617『ゴリさん、見ていてください』、#629『ドリーム』とゲスト出演が続いていきます。
ほか、刑事ドラマは『噂の刑事トミーとマツ』第2シリーズ#35、『誇りの報酬』#03、『特捜最前線』#444等にゲスト出演。'80年代後半にはヌードも披露され、近年はタレントデビューされた愛娘=守永真彩さんと親子ペアで漫才にチャレンジされたり等、何かと話題を提供されてます。