嬰 児 2020年02月16日 | 春を呼ぶ朝 大村正次著「春を呼ぶ朝」―春を呼ぶ朝― 嬰 児 金太は捕へてきた油蝉を ジウ ジウ 云はせる。 嬰児の眸(め)のはたへ どうだ恐くないかと ジウ ジウ 云はせる。 嬰児は 世にも不思議な聲に くりくり眸を輝かせ やがて すこしも疑はぬ手をのべ 聲の主(あるじ)をつかまうとする。 つかむと うれしくてふりまわし 蝉の悲鳴を 玩具(おもちや)にしてゐる。