屯田物語

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稱名瀧

2020年02月29日 | 春を呼ぶ朝


夕張の近く、滝の上公園(2007年9月29日撮影)
夕張川の浸食で出来た渓谷と滝と、秋には紅葉がきれいなところである。
「稱名瀧」の詩の一節
「瀧近く 打ち搖ぐ岩上に 小柄の楓一株 紅く映えて・・」からこの写真を選んだ。

「春を呼ぶ朝」の詩の紹介はあと五篇となった。
「稱名瀧」は旧字体の難読漢字ばかりだが、IMEパッドの利用でなんとか入力できた。
漢詩に造詣が深い大村正次圧巻の詩である。

大村正次著「春を呼ぶ朝」―稱名瀧―

 稱名瀧

斷崖きりぎしの濡れ岩を攀ぢ 岩を攀づる
稱名の峡奥 行手の巨岩いわいただき
一團の若者の眸に
神のごと 眞白き姿を現しし瀧。

鬼も棲まう對岸 「悪城の絶壁かべ」と
空を摩す此岸 「法螺の介」と
一天に連るU字形大岩壁に
神のごと 眞白く懸かる千古の姿。

見透せば絶巓ぜつてんのかの岩盤を
一抉りV字を刻み ほとばしる白
三段に搖れ撓み 勢を湛え
あと一息になだれ落つる一千三百尺の
百雷を籠めて打下す怒。
底知れぬ下身を巨岩いわに秘し
凄惨のうちに胎む崇嚴の気魄。

あ、飛沫しぶきは白雲とかけ
近づくものゝ頬をうち
がつがつ 歯牙をうちふるはする,
鋭き氷點の意志!
恐ろしき力の爆裂!

人間ひとはいま
吹き寄せられし落葉のごとく
よろよろとうしろの友をふりかへり
濡れ濡れし脊中の茣蓙を掻き合わす。
お、その時
瀧近く 打ち搖ぐ岩上に
小柄の楓一株 紅く映えて
この凄絶に ひとり
勇士の如く生え抜くを見つ。