マイケル・ムーア監督の『ボウリング・フォー・コロンバイン』を観ました。
知らないことがたくさんあって、考えさせられた映画です。
1999年にアメリカ、コロラド州ジェファーソン郡のコロンバイン高校で実際に起きた銃乱射事件。
同校の学生二人により生徒12名、教師1名が射殺され、重軽傷者二十数名を出し、犯人二人も自殺したこの悲惨な事件を、事件の被害者や、地元コロンバイン市民、犯人に影響を与えたという歌手のマリリン・マンソンへのインタビューなどをおりまぜながら、時にユーモラスに、銃社会アメリカを鋭く突いたノンフィクション・ドキュメンタリー。
全米ライフル協会の会長、チャールトン・ヘストンが事件の10日後、ライフル協会の大会で「死ぬまで銃を手放さない!」と叫ぶシーンはちょっとショックでした。
銀行に口座を開くと銃がもらえるというサービス。
実際にムーア監督は口座を開き、銃を手に銀行から出てきます。銀行が銃を配る国、アメリカ。職員は言います。
「白人なら問題ありません」
タイトルに「ボウリング」とあるのは、犯人の二人が犯行の朝、ボウリングをしてから学校に向ったから。
銃を乱射する前にボウリング…
その日、アメリカはコソボで最大級の爆撃を行い、小学校や病院を空爆、民間人の犠牲者は”最小限”に抑えている、とクリントン大統領(当時)が発表、その一時間後、同じくクリントン大統領はこう言います。「コロラド州で銃の乱射事件が起きました。皆さん、生徒やご家族、先生のために祈りましょう…」
ムーア監督自身がインタビュアーとなって様々人に意見を聞きます。時にアポナシで、時に街角に出て。
派手なメイクと服装のマリリン・マンソンが、見た目とは裏腹に静かにたんたんと語るのが印象的。キチッとした格好をして、熱く正義を語るいわゆる世間の代表みたいな人々の言葉が、かえってむなしく聞こえます。
銃を持つのが国民の義務? 当然の権利?
そして6才の黒人の男の子が、同級生の6才の白人の女の子を銃で撃ったという衝撃的な事件。
根底に広がる人種差別に、恐怖の流布。そして9・11が起き、アメリカ中に恐れと怒りがあふれ、銃と弾丸の売り上げが一気に上がります。
もし、隣の人と仲良くなりたい時、銃を片手にもう一方で握手を求めるだろうか?
銃により一方的に命を奪われた人々、家族や友人の悲しみ、被害者の恐怖もこの映画を観て伝わって来ました。特にコロンバイン高校から事件当日警察にかかって来た生々しい電話での会話。聞いているとまさに背筋が凍る思い。
先月、カナダのモントリオールでも銃乱射事件がありました。犯人は警官により射殺されましたが、コロンバイン事件に陶酔していたとか。
今月、アメリカのランカスターでも、アーミッシュの学校に男が乱入し、女性徒数人を射殺、自らも銃で命を絶つという事件も起きています。
ますます広がる銃による犯罪。
この映画は2003年度、アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞しています。監督自身のメッセージを、言葉にせずに映像で観客に見せる手腕はさすがの一言。テレビや新聞ではなかなかできない内容で、政府側の人間にとっては手厳しい作品となっています。
でも、本当はこれくらい疑って国民は政府のやることを監視する必要があるとは思いますけどね。
いろんな意味で刺激的な映画です。
ブッシュ大統領を痛烈に批判した『華氏911』も観てみたくなりました☆