自立支援てさぁ。
「さわらないで!」
ある日の食事前、お茶をこぼした利用者さんが湯のみに触ろうとするのを職員が止めました。
・・・はぁ、残念。
その利用者さんは認知症があって、10分前のことも忘れてしまいます。
私がその利用者さんに、他の利用者さんたちのお茶をいれてくれるように頼みました。
足が不自由なので配るのはこっち(介護員)でやるね、と言って。
彼女はそれを忘れてしまい、自分で配ろうとして湯のみをテーブルの上でひっくり返してしまったのです。
私は雑巾を取りに少し目を離しました。
その一瞬のスキに、くだんの職員さんが制止したのです。
別にさぁ、お茶をこぼしたって拭けばいいじゃん。
やけどするほど熱いお湯とか、他の利用者さんにかかる可能性があるなら別だけれど、明らかに「これ以上事態を悪化させないで!」という制止のしかた。
私には「職員の仕事を増やさないで!」と聞こえてしまいました。
介護員の仕事って何?
自分でお茶をいれる能力のある利用者さんに(実際上手にお茶をいれることができていました)、たまたまお茶をこぼしたからってお茶を入れさせないのが介護なの?
職員がお茶を配るのをテーブルの前でおとなしく待っている利用者さんが「手のかからない利用者さん」で、職員が止めても自分でお茶を入れようとする利用者さんが「手のかかる利用者さん」?
こういうの多いんですよね。
怪我をするかも知れないから立たせない。
こぼしてしまうから食事介助する。
失敗するかも知れないからやらせない。
自立支援って何?
まあね、ご家族の中には「絶対に転倒させないで下さい」と要求したり、万が一のために担当する介護員全員の顔写真を撮って行く人もいます。実際訴訟になることだって。
事故が起きた場合、事業所は「介護の方法が悪い」「お前は介護に向いていない」と介護員個人の資質のせいにして、その介護員を辞めさせる方向で事態の収拾をはかることもあります。
だから介護員は萎縮しちゃって事故がないように(ないに越したことはありませんが、普通の生活をしていたら転んだり怪我をすることはあるでしょ?)、問題が起きないように、あれもダメ、これもダメ、職員がやるから手を出さないで、という方向に考えてしまう。
できる能力があるのにやらせてもらえない利用者さんが一番の被害者だよなぁ〜
もっと職員間で話し合えればいいのですが、ただでさえ人手不足で忙しいのに、これ以上仕事(面倒なこと)増やさないでって人が9割というのが現状です。
・・・はぁ、残念だなぁ。
介護の仕事って、できないことに目を向けるだけじゃなくて、できることをできる状態でなるべく維持する支援を考えるっていうのも、大事なことなんですけどね。