終戦ドラマスペシャルとして先日放送された倉本聰さんのドラマ、「歸國」を少しだけ見ました。
戦争で死んでいった兵士たちが終戦記念日の夜に軍用列車に乗って現代の日本に帰って来る…
そして今の日本人たちを見て失望する…
日本人はどこで間違えてしまったのか…
太平洋戦争が終わってから65年。
終戦記念日の前後にはこうした「戦争を忘れないため」の特集番組が毎年かかさず放送されています。
私はもちろん戦争を体験したことはありませんし、当時の人達の置かれた状況というものは推察するしかありませんが、いつもこうした番組を見ると疑問を感じてしまいます。
どうしてこの人たちは戦争に反対しなかったのだろう?
あくまで個人的な意見ですが、確かに戦争中の悲惨で残酷な映像は胸を打ちます。悲しみや怒りがわいて来ます。ですが、冷酷なようですが、それでも彼らが一方的な被害者では決してないことも忘れることはできません…
銃を手に取ったのは誰?
戦争を推し進める政府に何も言わなかったのは誰?
反戦のために行動しなかったのは誰?
一番間違ったのは、あの当時の何も言わなかった日本人じゃないの?
戦時中も戦争に反対した日本人はいました。
彼らは治安維持法により「戦争に反対した」という理由で逮捕され、拷問により殺されたり、獄中で死亡したり、非国民として差別、弾圧を受けたりもしました。
英霊というのなら彼らの方が英霊じゃないの?
どうしてテレビや新聞は彼らのことを伝えないの?
戦争で兵士として亡くなった方や、原爆などの被害にあった方は戦後補償という形がとられていますが、治安維持法の犠牲者に対しては何の補償も行われていません。
本当に戦争に反対したのは彼らなのに…
家族や愛する人を守るために戦い、死んでいった者に対する哀悼の意を表することはかまいません。
しかし、大切なのはもう二度と戦争をしないということであり、戦争はいかなる理由があっても間違っていると後世に伝えることだと、私なんかは思っています。
戦争に反対すれば当時としては命に関わり、家族を守るためにも戦争に加担するしかなかった、そういう教育を受けていたのだと、言い訳のように言う人がいるかも知れません。
ですが、それでも戦争に反対する人はいました。
そして命をかけて戦ったのです。
私は、みんなと一緒にアメリカ人や中国人を殺すことを選んだ人たちより、同じ日本人の中でも間違っていることは間違っていると、例え孤立してでも人間として主張することこそ、本当の勇気であり愛国心だと思っています。
日本人はどこで間違ってしまったのか…
と問うなら、戦時中と変らず、長い物にまかれ、歩調を合わせ、他人に嫌われたくないという理由で他者を傷つけることを選んでしまう、そんな利己的な日本人の「和」の心を検証してこなかったことこそ、間違っているのではないでしょうか。
あの当時の延長が、今の日本の身勝手さを生んでいるのではないでしょうか。
本当の「和」の精神とは、他者を退け自分達だけの共同体の平和を守るそんなちっぽけなものじゃなくて、外に広がる、すべての物に対する敬意の心ではないのでしょうか。
そして本当にすべきことは、歴史を学び、政府やテレビや新聞に惑わされることなく、自分の意思と良心を何物にも負けずいかなる時でも主張できる、そんな個人を育て上げることではないでしょうか。
戦争に参加した者たちを英霊と呼び、現代社会に警鐘を鳴らすかのような終戦ドラマを見て、柄にもなくそんなことを考えてしまいました。
「戦争」のため命を失ったすべての人に、ここに哀悼の意を表します。
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