前略、ハイドン先生

没後200年を迎えたハイドン先生にお便りしています。
皆様からのお便り、コメントもお待ちしています。
(一服ざる)

パンクとは何か?:BiSH『NON TiE-UP』

2020-08-05 00:01:05 | クラシック以外の音楽
アニメ「鬼滅の刃」の主題歌「紅蓮華」を歌っていらっしゃるLiSAさんが
先日「HEY!HEY!NEO! MUSIC CHAMP」に出演されました。

そこでLiSAさんは、
浜田雅功さんが音楽ユニット「H Jungle with t」名義で歌った
「WOW WAR TONIGHT 〜時には起こせよムーヴメント」が大好きだったという話の流れから
「パンクは攻撃しているように見えるが、守る音楽だと思う」
という趣旨のことをおっしゃっていました。

この捉え方が、LiSAさん独自のものなのか
どこかで語られていることなのかはわかりませんが「なるほどなあ」と思いました。


私も「パンク・ロック(Punk Rock)」という言葉からは
「保守的なもの、体制的なものを攻撃し破壊する(音楽)」というイメージを持っていました。

でも本当は
「他人や社会から自分の居場所や大切なものを守る(ために戦う)音楽」
というものなのではないか?
それがLiSAさんのおっしゃった言葉の意味なのかなと思います。

その「戦う相手」が、ときに権力や国家であるので
よりアナーキーで過激に見えるだけなのかもしれません。


BiSHは「楽器を持たないパンクバンド」と謳われています。

2018年にリリースされた『NON TiE-UP』の"大意"は
自分たちの意にそぐわないことを無理強いされるくらいなら
(自分たちが大切にしているものを奪われるくらいなら)
"タイアップ"なんかいらねえ、ということだと思います。

そしてそこには、単に商業上のこと、
いわゆる音楽業界などで使われる意味合いだけではなく
もっと広い意味での"交換条件"や"妥協"も含まれるのではと感じます。



あっち行ってくれよ
二度と構うな
ほっといてくれよ

これぞまさしく「パンク・ロック」です。カッコいい!

MVはCGを使った壮大な「絵」になっていますが
歌われる詩は唖然とするほど挑発的、具体的で刺激的です。
(私が今まで聴いたロックの中でも一番"過激"かも)

「楽器を持たないパンクバンド」の名に恥じぬ大傑作ですね。






日本語の「抱き合わせ」という意味で使う場合、
英語では「tie up」より「tie in」の方が一般的らしいです。
「tie up」だと「縛り上げる」や「動けなくする」という意味でも使われるそうなので。

でも、もしかしたら
「(作られた)一つのイメージに縛られる」
「(こうあるべきという)固定観念に捕らわれる」
ことを拒否するという"宣言"としての「NON TiE-UP」も含んでいるのかもしれません。

BiSH『My landscape』

2020-08-01 00:01:14 | クラシック以外の音楽
先日「ディスクユニオン」に売るためにCDを整理したことを書きました。

自分の「青春だった」THEE MICHELLE GUN ELEPHANT
「青春ではなかった」NUMBER GIRLの思い出

最後にライブを観に行ったのはいつだったか、もう覚えてはいません。


THEE MICHELLE GUN ELEPHANT
惑星
MACARONI
SORROW

どのバンドもすでに解散していますので生でライブを観ることはできません。
ミッシェルのギター、アベフトシさんはすでに鬼籍に入り
SORROWの川村カオリさんも永眠されました。
演奏や歌声はおろか、姿すら見ることができません。


ミッシェルの動画をYouTubeで観ると
たまに当時を知らない若い方がコメントを書かれています。
曰く「もっと早く生まれたかった」「生でライブを観たかった」等々

あのとき、私だけでなくファンの多くが、このバンドと同時代に生き
ライブが観られることを"奇跡"として感謝したはずです。


当たり前のことですが、今、この時代にもカッコいいバンド、素晴らしいアーティストは沢山いて
彼らと「青春時代」に出会えたこと、そのライブを「同時代」に体感できること
それを羨ましくも思うのです。


今の自分が彼女たちから感じるものは
もしかしたら若い人たちの感じ方と違うのかもしれません。

でも、BiSHの『My landscape』や『stereo future』を聴くと
ライブ映像やMVを観ると「いい曲だなあ」「カッコいいなあ」と思うと同時に
何故か切なくなり、いつも涙が出てくるのです。



それは自分の「青春時代」に出会えなかったことへの寂しさなのか
それとも単に歳をとって涙もろくなったせいなのか。

正しい表現ではないかもしれませんが
「不完全な直向きさ」とでもいうようなものに心が震えるのです。


長らく忘れていた衝動が呼び覚まされた感じです。
ミッシェルの動画にコメントした人たちの気持ちがわかります。
久しぶりに「ライブを観てみたい(体感したい)」と思いました。



いまさら"清掃員"に"再就職"するのは難しいですが
コロナ禍が過ぎたころには"アルバイト清掃員"くらいになれたらいいな。

ミッシェルとナンバーガール

2020-07-01 23:27:29 | クラシック以外の音楽
CDが増えてしまったので
まとめて「ディスクユニオン」に売ろうと思い整理をしました。

引越しの片づけをしている最中に、
押入れの奥から出てきた古い新聞や雑誌を読み耽ってしまう
というのはよくあることですが、
いざ「売ろう」となると、同じ?ように「最後にもう一回だけ聴こう」
などと思ってしまいます。


クラシックのCDは元々の販売枚数が少ないので、
マイナーレーベルのものだと二度と手に入らない(聴けない)
という場合もあり、ついつい慎重になってしまいます。

ロックやポップスは、CDでなくても色々な方法で聴くことができますので、
あとは「思い出」との闘いでしょうか。


社会人になってから暫くして、たまたま再会した高校の同級生に誘われて
あるライブに行ったのですが、それをきっかけに
クラシックと並行してロックのライブにもよく行ってました。

その頃、主な活動期間がほぼ同じの二つのバンドがありました。


〇ミッシェル・ガン・エレファント(THEE MICHELLE GUN ELEPHANT)
1996年~2003年
〇ナンバーガール(NUMBER GIRL)
1995年~2002年


THEE MICHELLE GUN ELEPHANT
『CASANOVA SNAKE』


NUMBER GIRL
『School Girl Distortional Addict』


バンドの"カラー"は全く違いましたが、どっちも好きという人も
多かったと思います。

ですが、自分はミッシェルには"どハマり"したのですが
ナンバーガールにはハマりませんでした。

ミッシェルのライブには何度も行きましたし
当時他にも、POLYSICS、ゆらゆら帝国、デキシード・ザ・エモンズなど
色々なバンドのライブに行きましたが、結局ナンバーガールのライブは観ていません。
でも、何故か心に「引っかかる」存在であり続けました。


映画や小説など、そこで表現されていることや語られていることも
勿論重要なのですが、
「映されなかったもの」「書かれなかったこと」の方が
自分にとって意味を持ってくることもあると思います。


後に、ナンバーガールのボーカルだった向井秀徳さんは
「ナンバーガールとは何だったのか?」という質問に対して
「青春だった」と答えたそうです。

Base Ball Bearの小出祐介さんはナンバーガールの大ファンだったそうですが
以前ラジオで自らナンバーガールの特集を組んだ時、
先の向井さんの言葉を受けて「自分たちにとっても青春だった」
と語っていました。


勝手なイメージかもしれませんが、
(当時から)自分にとっての「ナンバーガール(の青春)」は
「抜けるような青い空」と「夏」でした。

一方のミッシェル・ガン・エレファントは「黒」と「夜」です。

人よりも随分遅れていたとは思いますが、
あの時代は自分にとっても「青春」だったと思います。
そしてその時、ナンバーガールにハマらなかったことも
また自分にとって意味のあることだったのかもしれません。

改めてYouTubeで、当時のライブ映像(「透明少女」)を観ていますが
やはりカッコいいと思います。


ミッシェルのCD、DVDは「ディスクユニオン」には売らず手元に残っています。
ナンバーガールの2枚のCDは「ディスクユニオン」行きの段ボールの中にあります。

『Do They Know It's Christmas?』(Band Aid)

2019-12-22 18:21:30 | クラシック以外の音楽
ポピュラー・ミュージックにおけるクリスマス・ソングの名曲は数々ありますが、
私の年代の「定番」として思い浮かぶのは、

邦楽では、
クリスマス・イブ(山下達郎)
恋人はサンタクロース(松任谷由実)
クリスマスキャロルの頃には(稲垣潤一)

洋楽では、
Last Christmas(Wham!)
All I Want for Christmas Is You(Mariah Carey)

ちょっと変わり種?で、
Merry Christmas Mr. Lawrence(坂本龍一)

といった辺りでしょうか。好きかどうかは別として。


ですが、個人的に一番思い入れがあるというか、印象に残っているは、
バンド・エイド(Band Aid)の
『Do They Know It's Christmas?』(1984年)になります。


(当時、LPで1500円)

エチオピアで起こった飢餓に対するチャリティー・プロジェクトで、
イギリスとアイルランドのミュージシャンが参加したものです。
これに触発されて、翌年アメリカで
「We Are The World」(USA for Africa)が生まれました。

歌詞は発起人の一人、ボブ・ゲルドフが主に担当し、
もう一人の発起人、ミッジ・ユーロが作曲を行っています。
(ミッジ・ユーロは私が「神の如く」愛するULTRAVOXのボーカル・ギター)


『Do They Know It's Christmas?』はその後何度かリメイクされてますが、
オリジナルの参加メンバーは、
 フィル・コリンズ
 ボノ
 ジョージ・マイケル
 ボーイ・ジョージ
 サイモン・ル・ボン
 スティング
 ポール・ウェラー
ほか、錚々たる面々です。

歌詞の大意は、
 アフリカで飢餓に苦しむ人たちは
 今がクリスマスだと知っているのだろうか?
 世界を飢えから救おう
 手を差し伸べよう
というものですが、その中で非常に印象的な一節があります。

「Well tonight thank God it's them instead of you」
「それ(飢餓の犠牲者)が君ではなく彼らだったことを神に感謝しよう」
(Wikipediaより)

この歌詞には制作過程で反対意見もあったそうですが、
ボブ・ゲルドフは「綺麗事だけでなく本音を伝えるべき」と、
その反対を押し切ったそうです。

注:この部分はWebで検索するといろいろな日本語訳が出てきますが、
私はWikipediaに載っている、この"直接的"な訳が真意に近いのでは?
だからこそ、反対意見が出たのでは?と思います。
(正に"綺麗事"ではない、それ故に強烈に突き刺さる一節です)

この部分を歌っているのは、U2のボノです。
彼の力強い声と独特の節回しが、この詩に一層の凄みを与えています。


オリジナルから20年後(2004年)の「Band Aid 20」では、
参加アーティストの中で、このパートを狙っていた人が多かったそうですが、
"本家"ボノが再登場し「あのパートは俺のもの」で争奪戦終了、とのこと。


余談ですが、高校生の時にミッジ・ユーロがソロで来日したので、
コンサートにも行きましたが、アンコールでこの曲を歌ってくれました。

Feed the world
Let them know it's Christmastime again

と客席一体となって合唱したのを思い出しました。
若き日の赤面メモリーです。

Hot Cords Of Piano『Piano Tribute To Kraftwerk』

2019-06-30 14:04:43 | クラシック以外の音楽
Hot Cords Of Pianoの『Piano Tribute To Kraftwerk』
というアルバムを聴きました。

ピアノ・アンサンブルによる、クラフトワークの編曲版です。


このジャケットは明らかに
「コンピューター・ワールド(Computer World)」を意識していますね。



Kraftwerk「Computer World」


楽曲自体は、「放射能(Radio-Activity)」から
「エレクトリック・カフェ(Electric Cafe)」の曲まで
幅広く取り上げられています。

中でも一番気に入ったのが「Computer Love」です。


アナログ楽器によるクラフトワークの編曲というと、
以前にバラネスク・カルテットの『POSSESSED』という
アルバムについて触れました。


Balanescu Quartet「Possessed」


この時も、最初に耳にして、真っ先に惹かれたのが、
やはり「Computer Love」でした。

こちらは弦楽四重奏による演奏ですが、
アナログ楽器(による編曲)との相性が良いようですね。


クラフトワークとの出会いは、小学生の頃、YMO経由です。
すごく大雑把な「テクノ・ポップ」という括りで、
アルバムを何枚か聴きましたが、YMOほどは夢中になりませんでした。
(YMOに比べて"単調"に感じたのかもしれません)

今回のピアノ・アンサンブルによる「Computer Love」は、
ミニマル・ミュージックの様な編曲です。
やはり「ミニマル・ミュージック=テクノ」の親和性でしょうか。
子供の頃に"単調"と感じた由来かもしれません。


バラネスク・カルテットの「Computer Love」の時もそうでしたが、
クラフトワークの編曲版?に出会うと、
少しの間「どっかで聴いたことあるなあ、何だっけなあ?」
その後に「あ、クラフトワークか!」
ということが起こります。


「ソードフィッシュ(SWORDFISH)」という映画をご存知でしょうか。

ジョン・トラボルタ、ヒュー・ジャックマン共演の
ピカレスク・アクション映画で、ツッコミどころはあるものの、
スタイリッシュで、時々観返したくなる好きな作品なのですが、
クラブのシーンでアレンジされたクラフトワークの楽曲
「Trans-Europe Express」が使われています。


Paul Oakenfold「SWORDFISH」

正しくは、アフリカ・バンバータがサンプリングして
「Trans-Europe Express」を取り入れた「Planet Rock」
という曲(のリミックス)のようですが、
この時も、映画を観ていて「どっかで聴いたことあるなあ」
が起こりました。


特徴はあるのですが主張しすぎない旋律というか、
この位の"個性"が、編曲され易さ、サンプリングされ易さ
なのかもしれません。



ところで、Hot Cords Of Pianoによる「Computer Love」は
ピアノの細かい動きが延々と続くようなアレンジですが、
ティム・セッダン(Tim Seddon)という作曲家の「16」
という曲に(結果的に)非常に似た感じになっています。

曲名通り?16分音符を連続的に用いているミニマル系の曲ですが、
違った道程(テクノとクラシック)から同じ目的地にたどり着いた、
という感じです。


Piano Circus「6台のピアノによるイギリス音楽作品集」