前略、ハイドン先生

没後200年を迎えたハイドン先生にお便りしています。
皆様からのお便り、コメントもお待ちしています。
(一服ざる)

ブリテン 『戦争レクイエム』 (N響定期公演)

2010-12-12 00:49:09 | NHK交響楽団
N響定期公演で
ベンジャミン・ブリテンの「戦争レクイエム」を聴いてきました。


 シャルル・デュトワ指揮
 タチャーナ・パヴロフスカヤ(ソプラノ)
 ジョン・マーク・エンズリー(テノール)
 ゲルト・グロホウスキ(バス)
 東京混声合唱団
 NHK東京児童合唱団


木管、ホルン、打楽器、ハープ、弦楽器の小オーケストラと
3管編成、ピアノ、打楽器多数の大オーケストラ、
そして合唱団とソロ歌手の巨大編成です。

指揮者を囲むように扇状に小オーケストラが並びます。
児童合唱団は舞台裏です。


〇テノール、バスと小オーケストラ
〇ソプラノ、混声4部合唱と大オーケストラ
〇児童合唱とパイプオルガン

それぞれがグループを作り別々の世界観を表現します。
ラテン語の典礼文をソプラノと合唱団が、
オーウェンの英語詩をテノールとバスが歌います。


ブリテンの作品は全く聴いたことがありませんでした。
「シンプル・シンフォニー」
「青少年のための管弦楽入門」
などの作品名は知っていましたがCDでも聴いていません。

イギリス人作曲家というと、エルガーの「威風堂々」や
ホルストの「惑星」といった音楽を思い出します。
ですからもう少し(ある意味)"わかり易い"曲を想像していました。


1962年の作品ですが"現代音楽"ではありませんし、
決して"難解"というわけでもありません。
でも、今まで聴いたことのない"音楽作品"という印象です。

舞台裏のオルガン伴奏による児童合唱団の歌声が、
この世ではない"別の世界からの声"のような
大変神秘的な印象を与えます。
(素晴らしい歌声!NHK東京児童合唱団恐るべし)

80分を超える曲ですが飽きることなく、
普段の定期演奏会とは全然違う空間にいた感じです。


「戦争レクイエム」は第二次大戦によって破壊された
英国コヴェントリー市の大聖堂再建を記念して作られました。

ブリテンは和解の象徴として、
ソプラノをロシア人、テノールをイギリス人、バスをドイツ人が
歌うことを想定していたそうです。
(初演時には実現しませんでしたが)


今回の演奏もその意志を受け継いで、
ソプラノはロシア人、テノールはイギリス人、バスはドイツ人です。
それに加えて演奏と合唱は日本人。
指揮者のデュトワは永世中立国であるスイス生まれです。

戦争の無益さと和解の大切さを・・・
などということは、実は演奏中は全く考えませんでした。


ただただ、劇的で神秘的な音世界に酔いしれました。



  私の主題は戦争であり、戦争の哀れさである
   詩はその哀れさの中にある
    詩人ができるのは警告することぐらいである
    (ウィルフレッド・オーウェン)

マーラー 交響曲第2番ハ短調『復活』 (N響定期)

2010-11-21 00:48:03 | NHK交響楽団
N響定期公演で
マーラーの交響曲第2番ハ短調『復活』
を聴いてきました。

マルクス・シュテンツ指揮
クリスティアーネ・リボーア(ソプラノ)
アンケ・フォンドゥング(アルト)
東京音楽大学(合唱)


『復活』は一時期よく聴きましたが、久しぶりの生演奏です。

ですから、すっかり忘れていました。
『復活』がとんでもない曲だということを・・・。


第1楽章はもともと
『葬礼』という名の交響詩として作曲されました。
マーラー自身のピアノによる演奏を聴いた
指揮者のハンス・フォン・ビューローは
「これが音楽なら、私には音楽がわからない」
と語ったそうです。


ハイドン先生、そしてモーツァルトが創り上げた
交響曲の概念を大きく変えたのはベートーヴェンです。
おそらくベートーヴェンによって
交響曲に「意味」が付加されたのでしょう。


今日、『復活』の第1楽章を聴いて、
「マーラーが、再び交響曲の概念を変えたのだ」
そう感じました。
まさに、この交響曲第2番ハ短調『復活』によって。

ビューローの感覚は正しかったのだと思います。
恐ろしいほどの緊迫感をもって迫りくる、
そして、緊張感を聴き手に強いる曲です。

シュテンツの指揮は
音量の強弱、テンポの緩急共に振り幅が大きく、
それがこの楽章の緊張感、緊迫感を増大させます。


第1楽章終了後、指揮者が椅子に座って休みをとりました。
さすがに指示通りの「5分以上」とはいきませんでしたが。


第4楽章「原光」は、
普段、単独で聴いても特に感慨はないのですが、
コンサートで聴くと、必ずといっていいほど
"ぐっ"と胸にくるものがあります。
それまでの緊張感から開放され心が癒されるからでしょうか。


そして第5楽章。
トロンボーンとテューバによる「怒りの日」のコラールと
「復活」の動機が登場した後、展開部に入る部分の
ティンパニのクレッシェンドするトレモロの異様な長さ!

巨大オーケストラの嵐が過ぎ去った後の力強く壮麗な合唱。

 生まれて来たものは、滅びなければならない
 滅び去ったものは、蘇らねばならない
 死ぬのだ、再び生きるために
 蘇る、そう、汝は蘇るのだ・・・

堪えきれず、涙が溢れ出てきました。


改めて「凄まじい曲」であることを実感しました。



ところで
「マーラーを観る」のエントリーでは書きませんでしたが、
随所にでてくる木管楽器群の「ベルアップ」も異様です。

あと、CDで聴いている時はあまり気が付きませんでしたが
コール・アングレが大活躍します。
N響のコール・アングレは女性(池田昭子さん?)ですが、
いつも、安定感抜群の美しい音色で奏でてくれます。


定期公演で、初顔合わせの若き指揮者と
これだけの演奏ができるN響の実力はやはり凄いと思います。
それと、自分の持ち味を存分に出してN響を纏め上げた
指揮者マルクス・シュテンツも。

メンデルスゾーン 交響曲第4番イ長調『イタリア』 (N響定期)

2010-10-25 09:01:34 | NHK交響楽団
N響定期公演を聴いてきました。

曲目は

 メンデルスゾーン 交響曲第4番イ長調『イタリア』
 ドヴォルザーク チェロ協奏曲ロ短調

指揮はネルロ・サンティ、チェリストは堤剛です。

メンデルスゾーンは普段、ほとんど聴きません。
せいぜい、弦楽八重奏曲変ホ長調と
「真夏の夜の夢」序曲くらいでしょうか。


改めて交響曲第4番『イタリア』を聴いてみて、
ちょっと意外な感じがしました。
もっと「ロマン派」的な曲だと思っていましたが、
結構「古典派」的な曲ですね。

管楽器は典型的な2管編成です。
緩徐楽章(第2楽章)で、
トランペットとティンパニがお休みなのも
ハイドン先生時代の交響曲を彷彿とさせます。

番号と作曲順がバラバラなのも
ハイドン先生ゆずり?


もう一曲、
ドヴォルザークのチェロ協奏曲ですが・・・。

自分の中では、サンティ氏はもっと楽しい、
エネルギッシュな演奏をする印象だったのですが。
さすがに今年79歳の御大、
体調がすぐれなかったのでしょうか?

テンポは遅めでしたが、"緊張感漂う"というより
"間延びした"といった方が正しいと思います。
フレーズ同士、楽器群が全く溶け合っていない、
響き合っていない、という感じでした。
独奏チェロとオーケストラも同様・・・。


「とてもよい演奏だった」「感動した」
という方には申し訳ないですが、
私にとっては全く楽しくない演奏でした。

シベリウス ヴァイオリン協奏曲ニ短調 (N響定期)

2010-09-12 15:43:38 | NHK交響楽団
N響定期公演に行ってきました。

曲目は

 ベルリオーズ 『ベアトリスとベネディクト』序曲
 シベリウス ヴァイオリン協奏曲ニ短調
 ベートーヴェン 交響曲第7番イ長調

です。

指揮はアカデミー室内管とのコンビでおなじみの巨匠、
サー・ネヴィル・マリナー氏です。


演奏は、シベリウスのヴァイオリン協奏曲が良かったです。
テンポはかなり遅かったと思います。
重厚、というのとはちょっと違いますが、
あまり派手さの無い、渋いシベリウスに感じました。


ソロは、ロシアの若手、ミハイル・シモニアンです。
シベリアのノヴォシビルスク生まれとありますので、
私の好きなレーピンと同じ出身地ですね。
まだ24、5歳です。

素晴らしく上手い、というわけではありませんし、
レーピンのような迫力もありません。
ただ、ところどこと非常に印象に残りました。


第1楽章に顕著でしたが、時折、
旋律やフレーズの最後を余韻を残さず "バチッ" と切ります。
弦を押さえている左指で音を止めるというか・・・。
若さが成せる「潔さ」とでもいうのでしょうか?

それともう一つ。
トリルが素晴らしく美しかったです。
ヴァイオリン協奏曲を聴いていて、トリルが美しいなどと
あまり感じたことがありません。

やはり第1楽章の中間部に入る前、その美しいトリルに魅せられ、
再度出てくる箇所を心待ちにしたほどです。


大きな感動ではありませんが、印象に残るいい演奏でした。

N響新シーズン到来

2010-09-08 09:03:19 | NHK交響楽団
7月、8月はN響定期公演がお休みなので、
どうしても話題が美術関係に偏ってしまいます。

今月からようやくN響定期公演の新シーズンが始まります。

今のところ一番の楽しみは、まだまだ先ですが
来年2月のマーラー交響曲第3番です。


マーラーの第3番を生で聴くのは初めてです。
(CDでもあんまり聴いてない・・・なにせ長いので)

この曲でマーラーの交響曲は
第1番~第9番および「大地の歌」まで
全て生演奏で聴いたことになります(の予定です)。

第10番は未完成なので置いておくとして
一応、コンプリート!


複数の交響曲がある作曲家で、全部生で聴いているのは
意外と少ないです。

ブラームスは4曲聴いてます。
チャイコフスキーは第1~6番まで多分聴いています。
(「マンフレッド交響曲」は未聴ですが、まあいいでしょう)

シューマン、メンデルスゾーン・・・う~ん。
記憶が定かでないですが、多分まだです。

ベートーヴェンは第1番、第2番が未聴、
ブルックナーも第1番、第2番が未聴です。


最近は、N響定期公演以外にあまりコンサートに行かないので
コンプリート達成はN響頼みなのですが、
ベートーヴェンはともかく、ブルックナーの達成は難しそうです。

ショスタコーヴィチで聴いているのは、
第1、5、7、8、9、10、11、13、15番辺りです。
かなり歯抜けですが、意外とこっちの方が早く達成するかもしれません。

なにせN響には、アシュケナージ桂冠指揮者がいますから。