今回は開業時の当店のラーメンが生まれるまでに
ついて書いてみます。
皆様もご存知のように、当店はラーメンの味を変化
させる事をためらわず、自分が納得出来ない箇所が
あれば改良を今もし続けています。
だから、開業時の醤油ラーメンも毎日のように味を
変え続けていました。
開業寸前は、袋小路に迷い込むほど、色々悩みまし
た。
僕のラーメンの大きな柱となったのは魚介味でした。
でも、扱いが非常に難しく、最初は1杯の味にまとめ
る事に苦心しました。
当時聴いていたバンド「メロウ・キャンドル」のような
懐かしさと斬新さが融合した物を追い求めていました。
濃厚な塩水で昆布ダシをとり、とろ火でじっくり水分を
飛ばし再結晶させる塩作りという何処の店もやらない
製法をする事にしました。
また、醤油を長時間煮込み、ドロドロのソース状態のペー
スト状態にし、いりこダシと清酒とみりんでといたりも
しました。
元ダレに魚介ダシをしっかり効かせる為(元ダレに魚介
ダシを効かせる製法は定番ですが、当時の僕は知りませ
んでした。普通はチャーシュー肉を元ダレで煮込みます
が当時は、チャーシューダレは別に仕込んでいました)
宗田節、かつお節、サバ節、昆布でじっくり煮込む事に
しました。
開店当時のレシピは残っていないので、記憶に頼ります
が、スープは鶏胴がら、モミジ、手羽先が全体の半分以上
で、豚骨はゲンコツのみを使用していました。
そして、別の寸胴鍋で、いわし煮干し、アジ干し、
厚削りかつお節、厚削りサバ節、厚削り宗田節を使用し、
動物系スープ、魚介系スープが完成すると、漉して
1つにまとめていました。
でも、試作の段階で、懐かしい味わいですが、斬新さに
欠けました・・。
周富徳が解説している中華料理の本を見ていると、
麺料理のレシピがビックリするほどシンプルです。
大量の水に、少量のガラを短時間煮込み、元ダレな
ど作らず、どんぶりに塩、中華醤油、
紹興酒、化学調味料を加えただけの物でした。どのページ
を見ても、ラーメンの具材こそ豪華なものの、スープへの
こだわりが一切感じられませんでした。その本からは
鶏がらの血抜きや下処理の仕方ぐらいだけ参考にしまし
た。「こんなラーメンでも人気店なんだから、完全に
納得行かないけど、僕の今のラーメンでもいいんじゃ
ないだろうか?」と妥協しそうになった時期もありました。
当時ハードロック界は「ダークネス」が流行っていました。
奇抜なパフォーマンス、奇抜なファッション、気持ち悪い程
のファルセットボーカルと僕は全く興味がありませんでした。
でも、ラーメンについて考えながら友人に借りた「ダークネス」
を聴いていると・・・・
「なーんだ。リフやメロディはオールド
スタイルじゃん。割と平凡だけど普遍的なカッコイイ演奏に
個性満載なボーカルなんだ・・。いや、もしボーカルが平凡
だったら「ダークネス」は今ほどの人気は確立していないはず・・。
個性的なあのボーカルがフロントマンとして目立っているから
「ダークネス」は斬新なバンドという印象を受けるんだ・・。
安定して高度なバック演奏と、一度聴いたら耳に残り、映像で
見たらしばらく忘れられないようなボーカルで「ダークネス」
は成り立っている・・。コレだ・・。僕はラーメンを
「ダークネス」化する・・。」
と思い立ちました。
要するに、煮込み時間を延ばし、途中ガラの入れ替えをし30
時間煮込みボディがシッカリした動物系スープを作る事にしま
した。そして、魚介素材の量を3倍にし、魚介風味がプンプン
するラーメンにしました。
そう、「ダークネス」のバンド演奏が動物系スープであり、
個性的ボーカルが魚介系スープです。「ダークネス」のように
好き嫌いが2分化するようなガンガン個性的なラーメンを
開発しました。魚介風味を抑え、全体バランスを考えるから
平凡さから抜け出せませんでした。食べた人の半分の人が
受け入れなくても仕方が無いけど、一部の人は滅茶苦茶
ハマるラーメンを作ろう・・と、開き直りました。
唐津市には魚介系ラーメンが無いので、受け入れられるか
どうかは不安でした。また、麺も唐津市には無いようなクチナシ
着色の多加水太ちぢれ麺ゆえ、従来の唐津市のラーメンとは
異色のスタイルでした。でも、自慢の特注ちぢれ麺の旨さは
きっと分かってもらえるという自信はありました。
また、茹で加減もやや固めのアルデンテなので、
腰砕けずんだれ麺文化の佐賀県では挑戦的なラーメンに
なりました。
一般的な従来のラーメンを求めてご来店になられるお客様には
当店の味は気に入って頂けないリスクはありましたが、ラーメン
ニューウエーブを求めておられる方の期待には答えられると
思っていました。
「メロウ・キャンドル」のような懐かしさを持っている、
斬新さは、実現出来たと思います。
唐津市にも沢山のラーメン屋があるので、当店のような風変わ
りな店があってもアリかな・・と、勝手に思っています。
ただ、開店から2,3か月で醤油ラーメン専門店のスタイルを
捨て、徐々に変貌を遂げ現在があり、これからも味を存続させ
る事にはこだわらず変化・進化・改良をしていきまうs。