「料理の鉄人」のように、調理寸前に
時間制限、材料指定され、きちんと最高の
料理を完成出来るのが本物の名人です。
フレンチ、イタリアン、和食、中華の
最高峰は瞬時に頭の中で調理工程や
完成形が浮かぶのでしょう。
ラーメン界のぶっつけ本番調理と
言うと「一条流がんこラーメン」です。
今でこそ限定ラーメンなど、新作創作
ラーメンを次々導入するスタイルの
ラーメン屋が氾濫していますが、
元祖は「一条流がんこラーメン」
です。
普通、創作ラーメンには、レシピ作り、
試作、改良などで時間をかけ限定メニュー
として発売します。「麺屋 武蔵」の系列
店では新作開発に3か月準備しています。
当店はレギュラーのラーメンのアレンジタイ
プが多いですが、それでも1か月はかかりま
す。
しかし「一条流がんこラーメン」は試作を
しません。今までの経験で蓄えた知識と
技術でぶっつけ本番です。新作を出す日に
ようやくアイデアを形にします。無駄な経費
を出さない為と、どうゆう味になるか予想
出来るから、試作をしないようです。
僕には「一条がんこラーメン」のように、自分を
信じて、安心してぶっつけ本番での商品作りなん
てできません。
まだ僕は、想像の調理と実際の調理では大差が
ありますし、頭の中で試食するほどまで
想像力豊かではありません。
試作、試食は大変な労力ですし、経費もかかり
ますが、自分が納得しないとお客様には出せな
いです。
僕の創作ラーメン「様式美麺」は一律500円
です。創作の限定ラーメンは、普通割高で
2000円~3000円の値段がついている
事も珍しくありません。高級厳選素材を高等
技術で作ったようなラーメンには数万円する
場合もあります。
値段の規制なく作れば、僕も試してみたい
素材や製法が山ほどありますが僕はしません。
あくまで、庶民的価格で、学生さんでも毎日
食べられる範囲に抑えています。そもそも、
当店で数千円や数万円のラーメンが売れる
はずもありません。だから、レギュラーラー
メンのアレンジ系が多いです。
時には利益が全く出ない「様式美麺」もあり
ますが、何とか500円で頑張って作ります。
当店は約3年前の開店時から創作限定ラーメ
ンを出していますが、その当時は、まだ少数
派で、地方で創作限定ラーメンは珍しかった
です。
毎日毎日、同じ作業を繰り返す仕事は、僕には
出来そうもありませんでしたし、変化がない
仕事には魅力を感じませんでした。開店時まで
でも数十種類のレシピを考えていましたし、
ラーメンは無限に進化すると思っていました。
また、1パターンの調理の型にはまてしまうと
技術の向上もしませんし、情熱も徐々に低下
してしまいます。
通常のラーメンも年に何回も進化させ、調理法
も材料も大幅に変えながら、限定メニューの
開発もしています。
普通はラーメンに使用しない食材や調味料を
知り、試す事で、ラーメン開発の引き出しが
どんどん増えていきます。ほとんどは即座に
は役に立たない事が多いけど、いずれ役に
たつかも知れないです。
近年はラーメンと他のジャンルの料理を融合
したのが一種の業界内ブームですが、僕は他の
料理と50:50や、他の料理スタイルに
傾いたラーメンは作らないように心がけて
います。あくまで、ラーメン屋だからラーメン
に、何かのエッセンスを加える程度にして
います。和食やフレンチを多少勉強しました
が、素人でしかないです。ラーメンと同様の
情熱を注いで熱心に勉強した訳じゃないので
軽く和食の手法を真似るぐらいしか出来ま
せん。
僕は創作メニューでも、通常メニューでも
「こんな事も出来るぜ」と技術自慢、腕自慢
に走らないようにしています。テクニックは
必要な時に使うものであり、さりげないもの
であるべきだと思います。テクニック至上
主義ほど愚かな調理人はいません。
僕が目指しているのは、自己表現であり、
○○系、○○派、○○流、○○風、○○類な
どのカテゴリー分類をされないラーメンです。
今はお客様から「ここは何ラーメン?」と
聞かれれば
「魚介系醤油豚骨ラーメン」と言っていますが
もっと自信を持てれば
「様式美麺れいんぼ~味」と言いたいです。