キノンは、抜き身で携えている山刀を右手に持ち替えて熊の前に立った。熊はまだ温かかった。キノンは、どこから切り裂こうかと考えた。
『オロンテスさん、どこからひらこうか』
『そうですね、この際、背中からどうです。安心して食べれる部位から切り取ったらどうです。私ら二人はどうするか、キノンさん、貴方の指示に従いますが』
『よしっ!判った。二人はこちら側にいてください』
入用な肉の切り取り作業にとりかかった。山刀を意のままにふるって、皮を剥ぎ、一同8人分をまかなう量を切り取った。次に、三人が力を合わせて、腹を切り裂きやすいように熊の体を変えて、うす腹の肉を切り取った。
『オロンテスさん、私、コイツの胆を切り取るので少々待ってください』
『判った』
キノンは、手を血にまみれさせながら、熊の内臓を切り分けて胆嚢を切り取った。三人は、血にまみれた手をそこいらの草でふき取り、切り取った肉を持って、その場を引き揚げた。あとには獣の濃密な血の匂いが漂っていた。
キノンは、切り取った熊の胆嚢を草で丁寧に包み、荷役の背にしている箱に収めた。
この時代、ギリシアをはじめ、アジアの西の地方において、獣の胆嚢に薬効があるということが、すでに知られていたらしい。
『オロンテスさん、どこからひらこうか』
『そうですね、この際、背中からどうです。安心して食べれる部位から切り取ったらどうです。私ら二人はどうするか、キノンさん、貴方の指示に従いますが』
『よしっ!判った。二人はこちら側にいてください』
入用な肉の切り取り作業にとりかかった。山刀を意のままにふるって、皮を剥ぎ、一同8人分をまかなう量を切り取った。次に、三人が力を合わせて、腹を切り裂きやすいように熊の体を変えて、うす腹の肉を切り取った。
『オロンテスさん、私、コイツの胆を切り取るので少々待ってください』
『判った』
キノンは、手を血にまみれさせながら、熊の内臓を切り分けて胆嚢を切り取った。三人は、血にまみれた手をそこいらの草でふき取り、切り取った肉を持って、その場を引き揚げた。あとには獣の濃密な血の匂いが漂っていた。
キノンは、切り取った熊の胆嚢を草で丁寧に包み、荷役の背にしている箱に収めた。
この時代、ギリシアをはじめ、アジアの西の地方において、獣の胆嚢に薬効があるということが、すでに知られていたらしい。