『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

第3章  踏み出す  11

2011-02-07 08:09:05 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アエネアスは、床に就いた。夜の闇は自分のものであった。澄んで地上を照らす月が思い出された。にわか造りのあばらな館であったが月の輝きはさえぎられていた。頭は冴えてくる、閉じたまぶたを開く、もののカタチが見えない漆黒の闇である。彼は、この闇が好きであった。頭の中を思考が飛び交った。
 彼の思考は、わが息子のあどけない姿からスタートした。
 それは我々民族が育まなければならない『未来を託せる者』の存在に思考が思い至った。
 建国の礎は、この『未来を託せる者』がいるか、いないか。そして、この『未来を託せる者』を育みそだて、生きていく為のところである。この二つの問題解決を一事で以って解決する。彼は、これを『明日の事実』とすることを急がず、迷わず、確実に成し遂げることを、時間をかけて意に決した。
 彼は、このことを確実に成し遂げることの出来るところが、この広い世界のどこかにあると信じて疑わなかった。
 建国は必ずできる。それは、まぎれもない『明日の事実』である。と、新しく建国した土の上に起っている己の姿を鮮明に漆黒の闇の中に描いた。
 彼は、欲張りでもあった。彼は、この日が一日でも早く、この身に訪れるよう乞い願った。いや、そのようになってくれるように、漆黒の闇の中の得体の知れない、つかまえどころのない、己自身の姿に似た浮遊する塊に謙虚に祈りあげた。