『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

第3章  踏み出す  25

2011-02-25 10:44:16 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 パリヌルスが視野の左の端に船影を認めたのは回廊に登って小一時間後のことであった。
 彼は急ぐこともなく従者数人をひきつれて、砦の浜の波打ち際に立った。彼は遠くの船を見つめながら、そのときを待った。
 船影が大きくなってくる、パリヌルスは、例の舟艇に乗って、洋上で彼らを迎えた。テカリオンは舟艇に乗り移るやパリヌルスの肩を抱く、パリヌルスもそれに答えて、テカリオンの肩を抱き、旧交のよしみを一瞬に復活させた。
 互いに見つめあい、健勝を確かめた後、数人を交易船に残し、五人の乗組員を乗せて浜を目指した。パリヌルスは、乗組員の二人に水深の説明をした。その当たりは浜から100メートルあたりの地点であり、操船の注意点を説明して、投錨地点を示した。
 『おっ!この船、なかなか便利そうでいい船だな。船足も速いではないか』
 テカリオンの話にうなづきながら、船の中ほどにある帆柱のもとに設けてある着脱式のキールボードを引き抜いて、そのまま浜に乗り上げ、乗っている者たちを降ろした。一連の作業をテカリオンは感じ入った風情で眺めていた。
 『パリヌルス、船尾の三角帆もだが、この大きさで浜に乗りつける、着脱式のキールボードとなかなかの細工が施されている。気に入ったぜ、パリヌルス、いやあ~、この船は全く持っていい船だ』
 彼は見ほれていた。