スダヌスの漁船と別れたニケは、洋上を走った。
『あの船が、この船!見違えるように立派な姿になりましたな』
スダヌスは感慨を込めて言葉を吐いた。風をはらんでいる帆、そして、その帆を保持している帆柱を見上げた。目を船尾に移す、舵も装備している船体をしげしげと見つめた。彼は感じいっていた。洋上を櫂で漕いで走るかっての自船の姿を思い浮かべて、今のその船を比べた。かってのその船が帆に風をはらませて洋上の波を割っている。涙が出そうであった。
今、ニケはレテムノンの沖300メートルくらいの海上を東へと進んでいた。
『イリオネスどの、これからの数日間は、敬称略で話してもかまいませんかな』
『おう、それがいい、そうしよう』
イリオネスはスダヌス浜頭を知っていない者のために浜頭を一同に紹介した。彼らも声を上げて自名を名乗った。
スダヌスは、一同に短く言葉をかけた。
『ご一同、見たところ風体は漁師のようにしておられるが肩に力がこもりすぎていますな。それではいけませんな。こめている力を抜いて、肩をま~るくされたらいい。アレテス、肩に力がこもりすぎて武骨であるぞ。私が言う言葉を10回も唱えれば、すぐに君たちは漁師だ。いいな。では唱える言葉を教える。唱える言葉はこうだ』
彼は全員を見渡した。
『10回唱える言葉はこうだ。いくぞ!『俺は村中で一番。魚とりがうまいと言われた男。今日もいくいくクレタの海へ』どうだ、判ったな。毎日10回唱えるのだ。これをやると漁師に近づける。いいな。1日10回だぞ』
彼らはスダヌスが言うように声を出して叫んだ。
『おう、スダヌス、うまく言うな。これで俺たちも漁師の仲間か。ところでだな、今朝浜を出て、道中でこの船に名前を付けたのだ』
『ほっほう、何とつけたのだ?』
『当ててみろとは言わん。『ニケ』と名付けた』
『それは、いい呼び名だ。それでこの船が元気があるのか。洋上をニケが駆けるか。いいね!』
スダヌスは快哉を叫んだ。
『イリオネス、イラクリオンに着いたら滞在先は俺に任せてくれ。また、向こうに着いてからの案内役は俺が引き受ける。それでよろしいか』
『おう、それでいい。宜しく頼む』
この際である、イリオネスは、スダヌスの言葉に素直に応じた。スダヌスは満足げに微笑んだ。
『あの船が、この船!見違えるように立派な姿になりましたな』
スダヌスは感慨を込めて言葉を吐いた。風をはらんでいる帆、そして、その帆を保持している帆柱を見上げた。目を船尾に移す、舵も装備している船体をしげしげと見つめた。彼は感じいっていた。洋上を櫂で漕いで走るかっての自船の姿を思い浮かべて、今のその船を比べた。かってのその船が帆に風をはらませて洋上の波を割っている。涙が出そうであった。
今、ニケはレテムノンの沖300メートルくらいの海上を東へと進んでいた。
『イリオネスどの、これからの数日間は、敬称略で話してもかまいませんかな』
『おう、それがいい、そうしよう』
イリオネスはスダヌス浜頭を知っていない者のために浜頭を一同に紹介した。彼らも声を上げて自名を名乗った。
スダヌスは、一同に短く言葉をかけた。
『ご一同、見たところ風体は漁師のようにしておられるが肩に力がこもりすぎていますな。それではいけませんな。こめている力を抜いて、肩をま~るくされたらいい。アレテス、肩に力がこもりすぎて武骨であるぞ。私が言う言葉を10回も唱えれば、すぐに君たちは漁師だ。いいな。では唱える言葉を教える。唱える言葉はこうだ』
彼は全員を見渡した。
『10回唱える言葉はこうだ。いくぞ!『俺は村中で一番。魚とりがうまいと言われた男。今日もいくいくクレタの海へ』どうだ、判ったな。毎日10回唱えるのだ。これをやると漁師に近づける。いいな。1日10回だぞ』
彼らはスダヌスが言うように声を出して叫んだ。
『おう、スダヌス、うまく言うな。これで俺たちも漁師の仲間か。ところでだな、今朝浜を出て、道中でこの船に名前を付けたのだ』
『ほっほう、何とつけたのだ?』
『当ててみろとは言わん。『ニケ』と名付けた』
『それは、いい呼び名だ。それでこの船が元気があるのか。洋上をニケが駆けるか。いいね!』
スダヌスは快哉を叫んだ。
『イリオネス、イラクリオンに着いたら滞在先は俺に任せてくれ。また、向こうに着いてからの案内役は俺が引き受ける。それでよろしいか』
『おう、それでいい。宜しく頼む』
この際である、イリオネスは、スダヌスの言葉に素直に応じた。スダヌスは満足げに微笑んだ。