『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  335

2014-08-11 07:24:07 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 館うちから出てきた男は手燭を手にしていた。彼は、手燭を目の高さに掲げて、戸口に立っているスダヌスの顔をまじまじと見つめたあと、手燭を足元において声をかけた。
 『おう、スダヌス、達者でいたか?』
 『おう、エドモン!お前こそ達者でいたか?』 互いに互いの肩に手をかけて顔を見合わせた。言葉を交わさず、ジイ~ッと見つめ合った。二人の感情が盛り上がってくる、感は極まった。二人はヒッシと抱き合った。二人は、身を離すが手は双方の肩にかけたままでいる。再度、二人は見つめ合う、彼らは再び力いっぱい抱き合った。二人の邂逅は、今日までに間があったであろうと察しられた。
 エドモンは声をあげて妻のアドーネを呼んだ。何事かと奥から顔を見せたアドーネは、スダヌスの顔を見て彼の前に立った。
 『まあ~、スダヌス、スダヌスじゃないの!元気でいたの?なつかしいわ』
 彼女は、スダヌスの顔を見つめて、身を寄せた。スダヌスは、彼女の肩をやさしく抱いて、頬に軽く唇を当てた。
 『まあ~、スダヌス、中に入れ!連れがいるようだが、お前と同業の者か?』
 『まあ~、そうだ。一緒にはいっていいかな』
 三人は連れ立って中に入った。
 『そうだな、あれから2年と半年か。世の中が変わろうとしている。それも住みにくい方へだ。お前、そうは思わんか』
 『エドモン、お前の言うとおりだ。変わりつつあることを身に感じている』
 『今、得体のしれない者どもが、島のあちこちに流れ込んできている。キクラデスの海賊ではない。アカイアの者どもも手を焼いているようだ。イラクリオン、クノッソスが狙われている。マリアの方には奴らの手は伸びていないようだ。だが、東の突端が大変らしい、奴らの一部が根を下ろそうとしている』
 『そうか、俺らは風聞を耳にはしているが、実のところはわからない』
 『ところで、スダヌス、東には何か用があるのか?』
 『これといった特別の用件ではない。懇意にしているニューキドニアの漁師たちがな、一度、東へ行ってみたいというものだから、漁のヒマをみて連れて行ってやるということで、出かけてきたわけだ』