『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  338

2014-08-14 07:18:19 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 浜小屋で一夜を過ごした彼らは、イラクリオンの朝を迎えた。身を休めた彼らは一斉に目覚めた。
 『ヨッシャ!皆で朝行事に行こう!』
 アレテスが一同に声をかける。彼らはニケの張り番の二人も誘って波打ち際に向かった。目の前に広がる海は広かった。波が寄せて返す波内ち際に立った。
 テトスが先頭をきって、一番に足を海に突っ込んだ。3歩進んだと思ったら、大声をあげた。
 『オットット!アアッ!』
 声をあげながら海中にもんどりをうってひっくり返った。波打ち際が狭く、3歩歩いて海は洗う波にえぐられて深くなっていた。遠浅のなだらかな海底構造ではないらしい。
 テトスはヘソあたりまで海に身を浸して、何とか海中に立っていた。
 『お~い、お前ら気を付けろよ。波うちから数歩でこの深さだ』
 一同はジャンプして海に飛び込んでいく。この風景を目にしてイリオネスは笑った。彼らはゆったりとした気分で朝行事を済ませた。
 水平線から陽がせりあがってくる。でっかい太陽であった。彼らはニューキドニアの陽の出の風景を想い浮かべ比べた。イラクリオンの浜には、水平線からの陽の出をさえぎる巨大といってもいい半島岬がない。
 イリオネスは、その身を胸まで海に浸しながら、せりあがってくるでっかい太陽を見つめて瞑目した。閉じたまぶたを通して陽光の明るさを感じていた。彼は真摯な気持ちで念じた。
 『今日は平穏な一日であってくれ』と。
 イリオネスは海からあがった。朝行事を終えた連中は、ガヤガヤとイラクリオンの朝を語り合っていた。スダヌスが姿を見せた。
 『お~お、諸君、どうだね?東の海は。朝行事は終えたのか。あ~、イリオネス、、、』彼は、ここでいつものように<殿>をつけるべきかどうしようかと迷った。
 『おはようございます。如何でしたかな?よく、眠れましたかな?』
 スダヌスの声かけが、どことなくぎくしゃくしていておかしい、一同はこみあげてくる笑いをこらえた。
 『お前ら笑いをこらえているな。向こうにいるときとの日常が違うのだ。ドントマインドだ。俺も朝行事をしてくる』
 一同が顔が揃っている。スダヌスが皆に顔を向けた。
 『いやいや、昨日はご苦労であったな。昨日の走りは最高であった。あれだけの天日と風に身をさらして快走したのは久しぶりであった。イリオネス殿はいかがでしたかな。私も急いで朝行事を済ませてくるわ』
 スダヌスは海へと急いだ。