洋上のニケは、恵まれた航海条件の海を東へと駆けている。パノルモスの集落も過ぎた。イラクリオンの船だまりへ残す距離が34~5キロといったところである。パノルモスの沖合いを通過した頃合いは、今様時間で午後1時を過ぎたころである。
スダヌスは、アレテスとクリテスを呼び寄せた。傍らにはイリオネスがいる。スダヌスが三人を見つめて口を開いた。
『航海はとてもとても順調だ。これ以上の航海があろうかと思われるくらいに順調だ。いうことがない!そこでだ、ガイド役のクリテスに尋ねるが、お前の考えるところ、イラクリオンの船だまりに着くのは今日のいつ頃だと考えている』
『はい、私の考えでは、日没前には到着すると考えていますが』
『お前、考えがあまい。今は太陽がこの位置だが、今は一年中で日の長さが一番短いころだ。昼を過ぎて今頃から太陽がつるべ落としの速さで落ちていく。ガイドする者に不正確な読みは許されんのだ。判るな。ここでは、経験がものを言う。イラクリオンの船だまりに着くのは、宵闇があたりを暗くする頃だ。アレテス、クリテス、それを踏まえて、今日のこれからの計画を練られてはどうだろうと、私のちょっとした知恵だ』
『判りました。ありがとうございます』
アレテスとクリテスは一礼して持ち場に戻った。
『イリオネス、そういうわけだ。そのあとのことは、二人で話しておきましょうや。そのうえで一同に指示を出してください』
スダヌスは、声のトーンを落として話を続けた。
『お~、そうか、それは心強い。スダヌス、よろしく頼む。この季節、冷える夜をしのげる、ありがたいことだ』
『その様に言われると、俺として、とてもうれしい。イリオネス、お前と俺、一心同体感を感じるな。打てば響く、響いて感じる、互いに考える寸前が一致する。考えることも大事だが、感じて動く、それがとてつもない好感といったところだ』
スダヌスは心情を吐露した。
ニケが波を割る、飛沫が風に飛ぶ、顔に当たる、眠気が飛び去る、心地よい陽ざしが初冬を感じさせない。小春日和の洋上を風に押されて進んだ。
スダヌスは、アレテスとクリテスを呼び寄せた。傍らにはイリオネスがいる。スダヌスが三人を見つめて口を開いた。
『航海はとてもとても順調だ。これ以上の航海があろうかと思われるくらいに順調だ。いうことがない!そこでだ、ガイド役のクリテスに尋ねるが、お前の考えるところ、イラクリオンの船だまりに着くのは今日のいつ頃だと考えている』
『はい、私の考えでは、日没前には到着すると考えていますが』
『お前、考えがあまい。今は太陽がこの位置だが、今は一年中で日の長さが一番短いころだ。昼を過ぎて今頃から太陽がつるべ落としの速さで落ちていく。ガイドする者に不正確な読みは許されんのだ。判るな。ここでは、経験がものを言う。イラクリオンの船だまりに着くのは、宵闇があたりを暗くする頃だ。アレテス、クリテス、それを踏まえて、今日のこれからの計画を練られてはどうだろうと、私のちょっとした知恵だ』
『判りました。ありがとうございます』
アレテスとクリテスは一礼して持ち場に戻った。
『イリオネス、そういうわけだ。そのあとのことは、二人で話しておきましょうや。そのうえで一同に指示を出してください』
スダヌスは、声のトーンを落として話を続けた。
『お~、そうか、それは心強い。スダヌス、よろしく頼む。この季節、冷える夜をしのげる、ありがたいことだ』
『その様に言われると、俺として、とてもうれしい。イリオネス、お前と俺、一心同体感を感じるな。打てば響く、響いて感じる、互いに考える寸前が一致する。考えることも大事だが、感じて動く、それがとてつもない好感といったところだ』
スダヌスは心情を吐露した。
ニケが波を割る、飛沫が風に飛ぶ、顔に当たる、眠気が飛び去る、心地よい陽ざしが初冬を感じさせない。小春日和の洋上を風に押されて進んだ。
