『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  330

2014-08-04 07:08:33 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『イリオネス。クリテスとちょっと打ち合わせたいのだが、いいかな。お前も一緒に聞いてくれ』
 『おう、いいぞ』
 スダヌスは、イラクリオンの浜に着いたのちの事についてクリテスに話した。
 『わかったな、クリテス。イラクリオンの浜の船溜まりについては俺の指示に従ってやる。そこへ行きつくまでは自信をもってお前がガイドするのだ、いいな。この風は今日一日は持つ。以上だ』
 アレテスはイリオネスに声をかけてきた。
 『隊長、昼めしとしますが、いいですね』
 『おう、いいぞ』
 『おう、アレテス、昼めしか。腹はペコペコだ。おう、それから、これもみんなに配ってくれ。羊肉のジャーキーだ』
 スダヌスがズタ袋から取り出したのは、羊肉を塩漬けして、さらに燻し乾燥させたものであった。
 ニケは、順調に航走している。パノルモスの浜の集落がはるかに見える。この時間には海で漁をする漁船の姿が見えなかった。ニケの船上ではワイワイと話が飛び交っていた。
 スダヌスはイリオネスと舳先に腰を下ろしている。イリオネスは、スダヌスの話に耳を傾けていた。クレタ島東地区の世情についての話であった。
 『何ですな、ギリシア人といってもスパルタの者たちが多いのですが、彼らのやることが、どうも支離滅裂で荒れていると聞いています。秩序が辛うじて保たれているのは集散所を中心とした市民組織だけだと耳にしています。特にクノッソスあたりの荒れがひどいと聞いています』
 『そうか、いたずらに身を危険にさらすのも一考といったところか』
 『東地区の西部地方の農作物が大変な不作と言われている。それが影響しての荒れであるらしいとの風聞なのだが、政治的な荒れなのかが判らない。見たわけではないから真偽のほどが解らん。イリオネス、とにかく行ってみよう。それしか方法があるまい』
 『スダヌス、お前の言おうとしていることが判った。とにかく行こう、お前がいる以上安心できる。恐れることは何もない』
 『よし!判った。決めたことは実行あるのみだ。なあ~、イリオネス、この天気、この風、船旅は申し分はない、沿岸の風景を楽しみながらの旅と行こうぜ』
 『判った』