スダヌス、イリオネス、クリテス、この三人を除いた他の者たちは、クレタの地に根づいている商慣習に頭をひねっていた。そういったところは彼らにとって全くの他国であった。イリオネスにとっても旅の途中においてスダヌスと出会ったことが思いがけない幸運であった。マリアの地における商慣習、取引の形態をみたとき、彼は全く、何の準備もしていなかったのである。イリオネスの懐中には幾ばくかの金と銀が準備されていた。ニューキドニアの地を離れるに至っての会議、打ち合わせの話題にも載らなかった事案である。目の前にある現実に、イリオネスの肝はちぢみ、背筋がつめたくなった。
イリオネスはスダヌスを広場の人気のないところに誘った。
『スダヌス、お前がいてくれて助かった。俺たちの無智をさらけ出すようで全く恥ずかしい。幾ばくかの金と銀は持参している。これをお前にゆだねる、役に立つだろうか?』
『おう、充分に役に立つ。イリオネス、安心しろ。それは、お前が持っていろ。入用の折には俺がお前に言う。その準備があれば俺も心丈夫だ』
『スダヌス、お前に世話をかけるな。ありがとう』
『おう、イリオネス。何事も気にかけず、お前の思うように行動しろ』
二人の話は終わった。
『おう、イリオネス、今日の夕めしの材料を調達しなけりゃならん。それをやろう。お前、見るべきところを見たのか?』
『それは見た。充分とは言わんが見るべきところは見た。食材の準備に行こう。時も頃合いだ』
二人は食材売り場に歩を向けた。いろいろと買い込んだ。
『おう、酒だ。マリアのワインは旨いぞ!』
酒はワインでひとくくりである、銘柄はない、産地による価格差はあるが、差異はない。スダヌスは、売り人に味見を要求した。
『どの酒がうまいか味わってみる。味見をさせろ』
酒は決めた。彼は、したたかに買い込んだ。イリオネスは集散所を見渡して伴の者を探した。アレテスとホーカスを見とめた。彼らを手招きで呼び寄せ、買い込んだ食材を持たせた。
『イリオネス、頃合いだ、帰ろう』
『おう、そうしよう』
クリテスらのグループは集散所前で待っていた。一行は帰途についた。
イリオネスはスダヌスを広場の人気のないところに誘った。
『スダヌス、お前がいてくれて助かった。俺たちの無智をさらけ出すようで全く恥ずかしい。幾ばくかの金と銀は持参している。これをお前にゆだねる、役に立つだろうか?』
『おう、充分に役に立つ。イリオネス、安心しろ。それは、お前が持っていろ。入用の折には俺がお前に言う。その準備があれば俺も心丈夫だ』
『スダヌス、お前に世話をかけるな。ありがとう』
『おう、イリオネス。何事も気にかけず、お前の思うように行動しろ』
二人の話は終わった。
『おう、イリオネス、今日の夕めしの材料を調達しなけりゃならん。それをやろう。お前、見るべきところを見たのか?』
『それは見た。充分とは言わんが見るべきところは見た。食材の準備に行こう。時も頃合いだ』
二人は食材売り場に歩を向けた。いろいろと買い込んだ。
『おう、酒だ。マリアのワインは旨いぞ!』
酒はワインでひとくくりである、銘柄はない、産地による価格差はあるが、差異はない。スダヌスは、売り人に味見を要求した。
『どの酒がうまいか味わってみる。味見をさせろ』
酒は決めた。彼は、したたかに買い込んだ。イリオネスは集散所を見渡して伴の者を探した。アレテスとホーカスを見とめた。彼らを手招きで呼び寄せ、買い込んだ食材を持たせた。
『イリオネス、頃合いだ、帰ろう』
『おう、そうしよう』
クリテスらのグループは集散所前で待っていた。一行は帰途についた。