『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  334

2014-08-09 06:49:30 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アレテスは、宵闇に包まれている浜を見廻した。人影はない、あちらに1艘、こちらに1艘と陸揚げされた漁船が散在している、それらに合わせて小ぶりな浜小屋が4~5棟建っている。
 アレテスは、緊張している。イリオネスに小声で話した。
 『アレテス、判っている。用心のためだ、事は怒らん。安心していけ。誰を連れていく』
 『ピッタスを同道させます。では行きます』
 『ピッタス、俺と一緒に来てくれ。剣を二振りコモまきしたやつがあっただろう。それをもって一緒に来るのだ』
 アレテスは船に積んできた丸太ん棒を3本を手に持って歩き始めた。
 『浜頭、待たせました。一緒します』
 『おう、行こう。何事も用心するにこしたことはない』と言いながら、アレテスから丸太ん棒の一本を受け取って歩き始めた。
 スダヌスが先頭を歩んでいく、三人は無言で歩を進めた。
 進む先に住居の灯りが、むこうにひとつ、少し離れてひとつ、そして、こちらにひとつ、集落があるらしい。彼らは浜を離れて6~7分くらい歩いただろうか。三人は集落の真ん中に立っていた。
 スダヌスは辺りをうかがっている。記憶を掘り起こしている。
 『おうっ!あれだ。行くぞ』
 スダヌスは、二人を促して歩み始めた。集落の中の大きめだなと思われる館に向かって歩いていく。館うちは明るかった。アレテスは、ふと考えた。
 『ときは、まだ宵の口だ』
 スダヌスは、戸口に立って大きな声で呼びかけていた。
 戸口に館うちの灯りを背にして若い男がスダヌスに声をかけた。
 『誰だ!この宵に何の用だ?』
 ぶっきらぼうなもの言いであった。
 スダヌスは、やや丁寧な口調で問いかけに答えた。
 『私はスオダの浜のスダヌスと言います。浜頭はおいでですか、おいでのようでしたら、取り次いでいただければ、ありがたいのだが』
 『おう、親父はいる』と言って、
 スダヌスのうしろにいるアレテスらを見て、
 『あんたらは漁師か。ちょっと待たれい』と言って、館うちに入っていった。