『トロイからの落人』 FUGITIVES FROM TROY 第7章 築砦 ６２５

　『おう、二人ともご苦労！まあ～、腰を下ろして休め』
　『はい、先に報告を済ませます。ガリダ方納入された用材の決済の件ですが決着しました。用材の決済は、我が方が集散所へ支払うことになります。ガリダ方は集散所より支払いを受けることになります。ガリダ方より派遣されている5人の者たちの件については、これから検討の案件となります』
　『そうか、解った。我が方としては、それで処理すればいいということになったのだな』
　『そうです』
　『用材の価格については、これからガリダ方と集散所との折衝によってということだな』
　『そうです。この件の今後の進展については、私とオロンテスが留意して事に当たります。これについては、我が方も用材の総額について判断を下す物差しを持ちたいものだと考えています。この件については、メクラ同然と言える私らですが、幸いと言おうか、テカリオンが来ました。彼がいい知恵を持っているかいないかは解りませんが、彼に尋ねてみようと考えています』
　『おう、そうしてくれ。統領と俺とは、そのことについては関わらない。それでいいな、うまく事を運んでくれ』
　『承知しました』
　彼ら五人は草の上に腰を下ろして意見の交換をした。オキテスがイリオネスに用件を告げた。
　『軍団長、明日の事ですが、オロンテスと私は価格決めの第１回会合に出席します。何かありましたら伺っておきたいと考えていますが』
　『そうだな、それについてはお前らに任せていることだ。情報の取得、意思決定の諸状況との照合とチエックに細心の注意を払う、いいな。そのように計らってやってくれ』
　『判りました。二人は、明日、その予定で動きます』
　『おう、判った』パリヌルスらは報告、意見交換を終えてその場を辞した。
　彼ら三人は、新しい局面に向かう、三人三様の心構えで事と対峙していく、課題を共有する、状況、情報の共有もする、そして、意志と結果の統一を図っていく、強い志向があることを認識した。
　パリヌルスは、オキテスの言った、用材の総額の算定についての物差しについて考えた。
　これについては、テカリオンの来訪のタイミングが半歩か一歩遅れたのではないかと内心に感じた。
　『まあ～、これはしょうがない』
　当方の要請を相手に伝えたわけではない、彼はそのような思いを抱いた。
　だが、彼は、剣の立ち合いでやる『後の先』についての思考を巡らせた。