『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  633

2015-10-14 06:03:26 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 三人は持ち場に向かう、パリヌルスは、テカリオンの船に出向いた。
 『おう、テカリオン、来たぞ!俺だ。おはよう』
 船べりに立って声をかけた。
 『おう、おはよう、パリヌルス。今日は何となくすっきりしない天気模様だ。お前ら、アサイチの会議を終えたのか』
 『おう、それは終えた。新艇価格の件だが見当の方はどうだ?』
 『おう、それはついている。言っていいか、どうか迷っている。お前の顔を逆なでする、そんなように思えてならない』
 『何故だ?』
 『おう、それはだな』と言って一拍の間をおいた。
 『船は船だ。用材がAランクだから、この価格ということがあると思うな。船はよくできていて当たり前なのだ。帆をあげる、風に押されて、船は進む。出来が頑丈であるか否かなのだ。問題は出来あがった売れ先であり、買い人だ。ピレウスあたりで造られる船の売れ先と、クレタで造られた船の売れ先とそれを買う買い人と、その者たちの住んでいるところが違うのだ。それと造り手の持っているこれまでが関係してくる』
 『お前の言うことは解る。だからといって腰を引いてこの仕事をするわけにはいかん』
 『結構、気が強いではないか。その姿勢はいいとしてだな。考えてみろ。今、言ったことが根本的に売り方の姿勢を決めるのだ。結論を言う、お前らは船を造ることに徹する。売りは集散所に任せることだ。お前らは、造り手として過大な利益を望まない、損失を出さない、それがお前たちの利益になる。それのなぜは、お前らがやっている仕事がでっかいからだ。いうなれば、規模の利益ということだ。この俺も1艇は買おうと考えている。また、価格次第では2艇でもと考えている。俺もお前らがやる売りの仕組みで買うと約束する。でないとあぶはち取らずになるからだ。俺の言うことが判るな』
 『判った。今なら、お前の言う売りの仕組みづくりができるというのだな。俺なりに考えてみる。やるやらないは一同に計っての上での実行となる』
 『それでいいではないか。キドニアの集散所とは俺も取引がある。集散所はお前らが考えている以上の力を持っている。結果はよかったとなる。それでもって注力するのだ。今、あの大きさの船は売り手に追い風が吹いている。そう考えると、お前らラッキーであったと言える』
 『そうか、お前の言おうとしていることが、よ~く解った』
 『それともう一つ、お前に言っておく。今、取引の形態が大きく変わろうとしている。この取引の形態が将来この形態になることに間違いない。時間はかかるだろうが、それが未来だ』
 『今、お前の言った船の売り方の仕組みだが、俺の考える仕組みでいいのかどうか、今夜、話し合おう。お前の船に俺が来る』
 『判った、話し合おう。夕めしは俺の船で食べろ。わかったな』
 パリヌルスは、テカリオンの船をあとにして、アレテスのところへと向かった。