『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  639

2015-10-22 04:27:23 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 テカリオンの船から小麦の荷おろし作業が始まった。オロンテスがパリヌルスに言って手配した40人余りの者たちが荷おろしに手を貸した。
 小麦が運ばれてくる、格納庫内に積まれていく、オロンテスとテカリオンは搬入の流れを見て、二人の者に後事を託してイリオネスの宿舎へと向かった。
 イリオネスは、決済額に相当する集散所の木札を準備して、二人の来るのを待っている。彼は、決済者としての険しい風情を漂わせて戸口に立っていた。
 『軍団長、荷おろしが8割方終わりました』
 『おう、そうか。中に入ろう』
 彼は二人を招じ入れた。オロンテスがイリオネスの傍らに席をとる。テカリオンは、連れの者の二人を戸外に待たせて、イリオネスの向かって席をとった。
 『おう、テカリオン、では、決済をする。先ず前回分の決済を受け取ってくれ。オロンテス、手前の袋を渡してくれ』
 オロンテスは、指示されたように木札の入った袋、5袋をテカリオンに渡す。
 『ありがとうございます。頂戴いたします』
 テカリオンはイリオネスの目を見つめて礼を述べた。続けて今回分の半額と思しき額の木札をテカリオンに渡した。テカリオンは木札の総数を勘定して受けとった。
 テカリオンは、持参した2枚の木板に受け取った木札の数を前回分と今回分の2項に分けて書き込み、その木板をイリオネスに提示した。
 『軍団長、よろしいでしょうか、お確かめください』
 『おうっ』
 イリオネスは、木板に目を通して、テカリオンの署名の上段に署名を書き入れた。
 木板をテカリオンに手渡す、それをうやうやしく受け取る、目を通す、1枚を手元に残し、1枚を丁重にイリオネスに差し出した。
 『軍団長殿、ありがとうございました。確かにいただきました』
 『おう、これで決済は終わったな。しかしだな、テカリオン、決済という仕事はすごく気を使う、そのうえ心を圧迫する作業だな。テカリオン、おまえのしごとの大変が察しられる』
 『ありがとうございます。私も決済の場では、いかに少額とはいえ、支払う、受け取る場においては、すごく緊張いたします。命のやり取りの場です。このように大きな取引はここだけです。そうでないと命ひとつでは、到底足りません』
 『そうか、そうであろう。解るな。お前の気持ちが』
 『ありがとうございます』
 『ではな、テカリオン。オロンテス、支払った木札、持って帰るに手を貸してやれ』
 『判りました』
 決済が終わった。三人は、決済という重大事の心の呪縛から解放された。緊張が解けた。


 『トロイからの落人』を書いていて用字に気を配っていますが、不適当と思われることがあります。
 お許しください。お詫び申し上げます。
 ここ数日間の投稿で 荷卸し と書きました。不適当でした。今日の投稿から  荷下ろし と書いています。
 訂正いたします。
                         山田 秀雄