『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  626

2015-10-05 10:35:44 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 クレタのこの季節、風が休む日はないといっていい。晴れの日は多い、天候の落ち着いた日が続いている。
 日は替わった。キドニア行の第一便が浜を出ていく、風は途絶えている、海は凪いでいた。
 ヘルメスは、凪の海を泡立てる、白い航跡を引いて、展帆することなく漕走でキドニアへと向かった。
 艇上では、オキテスとオロンテスが何事かを話し合っていた。
 『お~お、オキテス、それでいい。原価の算定に目途が着かない限り、とんでもない、価格の算定なんてできるわけがない。俺の考えているところでは、段取りの日程だ。価格の決定までに一カ月くらいといったところだな。それだけの時間をかけて慎重に事が運ばれると覚悟している』 
 『オロンテスよ、俺らの都合として、いつまでに決まればいいと考えている?俺らとしての意向を決めておく必要がある』
 『今日の会合では、そこまでは到底、到達しない。価格決定の作業工程を見極めて、私らも打ち合わせをして、新艇建造の作業の進捗、行事予定を考えて、価格決定の作業工程を立てて会合に臨もうではないか。そのようにして決めていく。オキテス、これが俺の考えだが』
 『オロンテス、解った。今、お前の言ったことに留意して、事に対して慎重に当たっていく。それでいいかな』
 『お前と俺、考えを同じくして会合に参画していく』
 『おうっ!』
 話し合いは終わった。
 ヘルメスはキドニアの船だまりに艇体を付けた。オキテスもオロンテスの作業に手を貸す。パン売り場は朝からにぎわった。
 テカリオンが顔を見せる、新しい蜂蜜ミルクパンの味を褒めて、10個買い求めた。。
 『オキテス殿、今日はこのあと、ここでの用事を済ませてあなたたちの浜へと行きます。今日、明日と予定しています。都合次第で明後日までの逗留を予定しています。では』と言ってテカリオンは、パン売り場を去っていった。
 テカリオンの船は、外洋へ出て、ニューキドニアの浜へと向かっていく。彼の船はゆっくりと海上を進んでいく。テカリオンは甲板に立って、落ち着いている海、そして、目にするクレタ島の風景を楽しみながら、ふと思い浮かべることは、知り合った頃のパリヌルスの事であった。
 彼とテカリオンとのなれそめは、5年前に始まる。そのころのパリヌルスは、アヱネアス軍団の海事軍団の担当隊長役を務めていた。
 アヱネアス海事軍団は、エドレミト湾の最奥の船だまりを母港として、8艘の軍船をもって編成されていた。兵の総数はというと450人余りである。彼は海事について明るく、航海術も心得ていた。
 一方テカリオンはというと、エドレミトの船だまりから西方60キロ余りにあるレスボス島のミチリーニの港を母港として、エーゲ海における交易を生業としている船主であった。