クレタのこの季節、風が休む日はないといっていい。晴れの日は多い、天候の落ち着いた日が続いている。
日は替わった。キドニア行の第一便が浜を出ていく、風は途絶えている、海は凪いでいた。
ヘルメスは、凪の海を泡立てる、白い航跡を引いて、展帆することなく漕走でキドニアへと向かった。
艇上では、オキテスとオロンテスが何事かを話し合っていた。
『お~お、オキテス、それでいい。原価の算定に目途が着かない限り、とんでもない、価格の算定なんてできるわけがない。俺の考えているところでは、段取りの日程だ。価格の決定までに一カ月くらいといったところだな。それだけの時間をかけて慎重に事が運ばれると覚悟している』
『オロンテスよ、俺らの都合として、いつまでに決まればいいと考えている?俺らとしての意向を決めておく必要がある』
『今日の会合では、そこまでは到底、到達しない。価格決定の作業工程を見極めて、私らも打ち合わせをして、新艇建造の作業の進捗、行事予定を考えて、価格決定の作業工程を立てて会合に臨もうではないか。そのようにして決めていく。オキテス、これが俺の考えだが』
『オロンテス、解った。今、お前の言ったことに留意して、事に対して慎重に当たっていく。それでいいかな』
『お前と俺、考えを同じくして会合に参画していく』
『おうっ!』
話し合いは終わった。
ヘルメスはキドニアの船だまりに艇体を付けた。オキテスもオロンテスの作業に手を貸す。パン売り場は朝からにぎわった。
テカリオンが顔を見せる、新しい蜂蜜ミルクパンの味を褒めて、10個買い求めた。。
『オキテス殿、今日はこのあと、ここでの用事を済ませてあなたたちの浜へと行きます。今日、明日と予定しています。都合次第で明後日までの逗留を予定しています。では』と言ってテカリオンは、パン売り場を去っていった。
テカリオンの船は、外洋へ出て、ニューキドニアの浜へと向かっていく。彼の船はゆっくりと海上を進んでいく。テカリオンは甲板に立って、落ち着いている海、そして、目にするクレタ島の風景を楽しみながら、ふと思い浮かべることは、知り合った頃のパリヌルスの事であった。
彼とテカリオンとのなれそめは、5年前に始まる。そのころのパリヌルスは、アヱネアス軍団の海事軍団の担当隊長役を務めていた。
アヱネアス海事軍団は、エドレミト湾の最奥の船だまりを母港として、8艘の軍船をもって編成されていた。兵の総数はというと450人余りである。彼は海事について明るく、航海術も心得ていた。
一方テカリオンはというと、エドレミトの船だまりから西方60キロ余りにあるレスボス島のミチリーニの港を母港として、エーゲ海における交易を生業としている船主であった。
日は替わった。キドニア行の第一便が浜を出ていく、風は途絶えている、海は凪いでいた。
ヘルメスは、凪の海を泡立てる、白い航跡を引いて、展帆することなく漕走でキドニアへと向かった。
艇上では、オキテスとオロンテスが何事かを話し合っていた。
『お~お、オキテス、それでいい。原価の算定に目途が着かない限り、とんでもない、価格の算定なんてできるわけがない。俺の考えているところでは、段取りの日程だ。価格の決定までに一カ月くらいといったところだな。それだけの時間をかけて慎重に事が運ばれると覚悟している』
『オロンテスよ、俺らの都合として、いつまでに決まればいいと考えている?俺らとしての意向を決めておく必要がある』
『今日の会合では、そこまでは到底、到達しない。価格決定の作業工程を見極めて、私らも打ち合わせをして、新艇建造の作業の進捗、行事予定を考えて、価格決定の作業工程を立てて会合に臨もうではないか。そのようにして決めていく。オキテス、これが俺の考えだが』
『オロンテス、解った。今、お前の言ったことに留意して、事に対して慎重に当たっていく。それでいいかな』
『お前と俺、考えを同じくして会合に参画していく』
『おうっ!』
話し合いは終わった。
ヘルメスはキドニアの船だまりに艇体を付けた。オキテスもオロンテスの作業に手を貸す。パン売り場は朝からにぎわった。
テカリオンが顔を見せる、新しい蜂蜜ミルクパンの味を褒めて、10個買い求めた。。
『オキテス殿、今日はこのあと、ここでの用事を済ませてあなたたちの浜へと行きます。今日、明日と予定しています。都合次第で明後日までの逗留を予定しています。では』と言ってテカリオンは、パン売り場を去っていった。
テカリオンの船は、外洋へ出て、ニューキドニアの浜へと向かっていく。彼の船はゆっくりと海上を進んでいく。テカリオンは甲板に立って、落ち着いている海、そして、目にするクレタ島の風景を楽しみながら、ふと思い浮かべることは、知り合った頃のパリヌルスの事であった。
彼とテカリオンとのなれそめは、5年前に始まる。そのころのパリヌルスは、アヱネアス軍団の海事軍団の担当隊長役を務めていた。
アヱネアス海事軍団は、エドレミト湾の最奥の船だまりを母港として、8艘の軍船をもって編成されていた。兵の総数はというと450人余りである。彼は海事について明るく、航海術も心得ていた。
一方テカリオンはというと、エドレミトの船だまりから西方60キロ余りにあるレスボス島のミチリーニの港を母港として、エーゲ海における交易を生業としている船主であった。