『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  627

2015-10-07 06:07:53 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 二人が知り合ったきっかけは、パリヌルスが担当するアヱネアスの海事軍団が入用とする品の取引からである。二人には年の差はないといっても差し支えがない、あっても二年の年の差である、二人は気が合った。互いに職務に取り組む、一歩では友情のきずなを年を重ねるにしたがって親密となって今日に至っている。二人は、『おい!』『お前』の仲である。
 パリヌルスは、待っていた。頭のなかで懸案を幾度なく呼び起こし、答えに到るまでを描きながら待っていた。
 見張り番がパリヌルスに駆け寄る。
 『パリヌルス隊長!待ちかねた船が来たようです』
 『おう、そうか、ごくろう』
 彼は立ちあがり渚へと向かう、沖を見つめる。テカリオンの船が波を割って近づいてくる。互いを見とめるまでには少々間がある。彼は右往左往して待つ、指呼の距離までに来た。
 テカリオンが両の手を上げて振っているのが目にとまる、パリヌルスも手を振って、これに答える。パリヌルスは傍らの従卒に指示を出す。
 『おう、ハシケを頼む!』
 彼は、テカリオンの船の停船地点へと急いだ。船が止まる、テカリオンがハシケに乗り移る、二人はハシケの上で互いの肩を抱いて歓喜した。二人の再会は昨日であり、今日もである。二人は目を合わせる、互いの気持ちを読む。『そうかそうか』交わす言葉がない、互いの心中を読み取った。
 『おう、テカリオン!昼食は終えたのか?』
 『おう、終わっている。それにしてもだ、うまいパンを焼くようになったな』
 『そうかそうか、うまかったか。彼らも今ではパン焼きの一端のプロだ、見上げた者たちと言える』
 『お前らの焼くパンは、一級品と言っていい、立派なパンだ。そのお前らが今度は船だと、全く恐れ入ったぜ!パリヌルス、造船の場へ案内してくれ』
 『すぐ行くのか』
 『統領、軍団長に会う前に、お前との話を終えておきたい』
 『判った、行こうか』
 歩き始める二人、新艇建造の場へと向かった。歩きながら言葉を交わした。
 『昨日、あれから思案を巡らせた。しかし、俺とて船に関して玄人ではない、本業ではないが船に関する知識はそれなりにある。それなりの判断で許せ』
 『おう、心得た。俺たちが必要としている判断の手がかりでよしとする。俺としての目途が持てればいいと考えている。おまえから聞くと心強い!そういうことだ』
 『判った』
 新艇建造の場に着いた。