テカリオンが今日、予定しているのはオロンテスと小麦の件についての打合せと決済を受けること、そして、小麦の納品と荷下ろしの事である。彼の心境は事の一切を決めてかかることであった。
パリヌルスが去ったあと考えをまとめて、オロンテスが取り仕切っているパン工房へと足を向けた。彼は歩みながら考えた。
『しかし、こいつら大したもんだ。俺の投げた一石でこれだけの営みをしている。パン事業に始まり、漁業、造船と、、、。まあ~、所帯がでかいこともある。そのうえ、一族を率いる統領、軍団長の力量も見上げたものだ。全く感心する』
傍らを歩む者が、主人テカリオンの独り言を耳にして声をかけた。
『ご主人、何か言われましたか?』
『おう、何か聞こえたか。何でもない、独り言だ、気にするな。ただ、このトロイの者たちの事を考えていたのだ』
彼らはパン工房に着いた。
『あ~、オロンテス殿はいられますかな?』
『はい、棟梁は、格納庫の方ですが』
『テカリオンが来たと伝えていただきたいのだが』
『判りました。お待ちください』
テカリオンは、工房の内部を見渡した。程なくオロンテスが姿を見せた。
『おう、テカリオンどの、おはようございます。アサイチの用件は私の方ですかな』
『そうです。工房の方、サマになりましたな。まさに、うまいパンを焼くにふさわしい工房になっていますな。感心して見入っております』
『そうですか、毎日、2000個を超すパンを焼くのです。それなりの工房になりました。テカリオンどの、私らあなたに感謝しています。まあ~、立ち話もなんです、掛けてください』
オロンテスは傍らの丸太イスをすすめた。
『お~い、これへ、今朝焼いた堅パンを持ってきてくれ』
『ほう、これは何です?』
『いやいや、これはですな、パン焼きの失敗作から、ヒントを得て焼いた堅パンです。食べてみてください』
テカリオンはひとつをつまんで口に運び、噛みついて砕いた。口中に広がるそのうまさに舌を巻いて驚いた。
羊乳、蜂蜜、オリーブ油の味が相まって味覚に届いた。
『いや~、これは驚いた。これはうまい!特上の味だ。このようにうまい堅パンを口にしたのは初めてだ。お前も食べてみろ!』
テカリオンに従ってきた者にも勧めた。
テカリオンはオロンテスに声をかけた。
『オロンテス殿、これは長旅の航海にも持っていける堅パンですな。これはいい。商品化を考えられてもいいのではないかと思います。そして一品に限らず、塩味の物とか、二、三品考えられるといいのでは』
テカリオンは思いつくままを口にした。
パリヌルスが去ったあと考えをまとめて、オロンテスが取り仕切っているパン工房へと足を向けた。彼は歩みながら考えた。
『しかし、こいつら大したもんだ。俺の投げた一石でこれだけの営みをしている。パン事業に始まり、漁業、造船と、、、。まあ~、所帯がでかいこともある。そのうえ、一族を率いる統領、軍団長の力量も見上げたものだ。全く感心する』
傍らを歩む者が、主人テカリオンの独り言を耳にして声をかけた。
『ご主人、何か言われましたか?』
『おう、何か聞こえたか。何でもない、独り言だ、気にするな。ただ、このトロイの者たちの事を考えていたのだ』
彼らはパン工房に着いた。
『あ~、オロンテス殿はいられますかな?』
『はい、棟梁は、格納庫の方ですが』
『テカリオンが来たと伝えていただきたいのだが』
『判りました。お待ちください』
テカリオンは、工房の内部を見渡した。程なくオロンテスが姿を見せた。
『おう、テカリオンどの、おはようございます。アサイチの用件は私の方ですかな』
『そうです。工房の方、サマになりましたな。まさに、うまいパンを焼くにふさわしい工房になっていますな。感心して見入っております』
『そうですか、毎日、2000個を超すパンを焼くのです。それなりの工房になりました。テカリオンどの、私らあなたに感謝しています。まあ~、立ち話もなんです、掛けてください』
オロンテスは傍らの丸太イスをすすめた。
『お~い、これへ、今朝焼いた堅パンを持ってきてくれ』
『ほう、これは何です?』
『いやいや、これはですな、パン焼きの失敗作から、ヒントを得て焼いた堅パンです。食べてみてください』
テカリオンはひとつをつまんで口に運び、噛みついて砕いた。口中に広がるそのうまさに舌を巻いて驚いた。
羊乳、蜂蜜、オリーブ油の味が相まって味覚に届いた。
『いや~、これは驚いた。これはうまい!特上の味だ。このようにうまい堅パンを口にしたのは初めてだ。お前も食べてみろ!』
テカリオンに従ってきた者にも勧めた。
テカリオンはオロンテスに声をかけた。
『オロンテス殿、これは長旅の航海にも持っていける堅パンですな。これはいい。商品化を考えられてもいいのではないかと思います。そして一品に限らず、塩味の物とか、二、三品考えられるといいのでは』
テカリオンは思いつくままを口にした。
