三人は、表にペガサス、裏に兜をかぶったアテナの像が刻印されている銀貨を見つめた。
『ほう、この銀貨に2ドラクマという価値があるということなのか』
『そうです。この銀貨の重さが、2ドラクマという呼称単位に値する銀の量でできているというわけです。解っていただけますかな。銀がこの重さであれば、その銀の量が、2ドラクマであるということです』
イリオネスが声をかける。
『スダヌス浜頭、君は説明がうまいうまい、続けてくれ』
五人はスダヌスの説明にうなずいた。
『この2ドラクマの銀貨は集散所の木札100枚に相当するわけですな』
この言葉を聞いて場は、しい~んと静まった。
オロンテスが口を開く、驚きの声をあげた。
『ええ~っ!』
彼は、開けた口をふさがなかった。ふさがらないわけではない、ふさがらなかったのである。
『俺たちが、一日、懸命に働いて、この銀貨一つと半分かいな』
オロンテスが首をかしげて考える、そんなものかとうなずくこともできるが、一日この仕事に携わって、この銀貨一つと半分、へえ~っと思い納得に努めようとするが、スダヌスの言葉を聞いて、ショックもショック、大ショックであった。考えがまとまらない、ショックが大きかった。
オロンテスは、初めて世の中の経済という物事に思い到った。
『そのようなものかいな』である。
五人が、世の中を支配するものの価値観、価値判断に関する事情を知った瞬間であった。
オロンテスは、物の価値の高低、その落差について考えを及ばせた。物の価格の地域差を感じ取った。テカリオンに売り渡した堅パンの価格はテカリオンが交易活動する地域における物価価値であり、クレタにおける物価価値と差があることを感じ取った。
『へえ~っ!』まさに驚きの世界のあることを理解した。
オロンテスの思考をよそに一同は、スダヌスの話した集散所の木札の交換価値を理解した。
オロンテスは、この期に及んで、パンの製造に関する考え方を一から考え直すことを決意した。オロンテスにとってそれくらいにショッキングな、スダヌスの話内容であった。
まさに、でっかく分厚いウロコが目からはがれて落ちた。
彼らにとって、集散所において販売するパン1個が木札1枚、これが物の価値を計る、彼らのモノサシであることであった。
『ほう、この銀貨に2ドラクマという価値があるということなのか』
『そうです。この銀貨の重さが、2ドラクマという呼称単位に値する銀の量でできているというわけです。解っていただけますかな。銀がこの重さであれば、その銀の量が、2ドラクマであるということです』
イリオネスが声をかける。
『スダヌス浜頭、君は説明がうまいうまい、続けてくれ』
五人はスダヌスの説明にうなずいた。
『この2ドラクマの銀貨は集散所の木札100枚に相当するわけですな』
この言葉を聞いて場は、しい~んと静まった。
オロンテスが口を開く、驚きの声をあげた。
『ええ~っ!』
彼は、開けた口をふさがなかった。ふさがらないわけではない、ふさがらなかったのである。
『俺たちが、一日、懸命に働いて、この銀貨一つと半分かいな』
オロンテスが首をかしげて考える、そんなものかとうなずくこともできるが、一日この仕事に携わって、この銀貨一つと半分、へえ~っと思い納得に努めようとするが、スダヌスの言葉を聞いて、ショックもショック、大ショックであった。考えがまとまらない、ショックが大きかった。
オロンテスは、初めて世の中の経済という物事に思い到った。
『そのようなものかいな』である。
五人が、世の中を支配するものの価値観、価値判断に関する事情を知った瞬間であった。
オロンテスは、物の価値の高低、その落差について考えを及ばせた。物の価格の地域差を感じ取った。テカリオンに売り渡した堅パンの価格はテカリオンが交易活動する地域における物価価値であり、クレタにおける物価価値と差があることを感じ取った。
『へえ~っ!』まさに驚きの世界のあることを理解した。
オロンテスの思考をよそに一同は、スダヌスの話した集散所の木札の交換価値を理解した。
オロンテスは、この期に及んで、パンの製造に関する考え方を一から考え直すことを決意した。オロンテスにとってそれくらいにショッキングな、スダヌスの話内容であった。
まさに、でっかく分厚いウロコが目からはがれて落ちた。
彼らにとって、集散所において販売するパン1個が木札1枚、これが物の価値を計る、彼らのモノサシであることであった。