『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  712

2016-02-09 05:21:20 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『ほう、そうか、それで構わん!その新船でいくらだ?』
 スダヌスは、木片を準備していた。木片を取りだす、手にした木炭で数字を書き記してアヱネアスに手渡した。アヱネアスは、書き記された数字を確かめて口を開く。
 『浜頭、この数字の単位はドラクマだな』
 鋭い眼差しでもってスダヌスと目を合わせて念を押した。スダヌスは、言葉を発することなくうなずいた。
 アヱネアスが考えていた懸念をこの数字が一挙解決する。十を知るための一がここにあったのである。
 『浜頭、ありがとう。君の説明でもって通貨に関する制度事情を詳しく知ることができた。ありがとう、礼を言う』と言って、手を差し伸べた。
 スダヌスは差し伸べられた手を、しっかりと握り返した。
 『おう、お前ら、浜頭から、これを聞いておきたいと思うことがあるか?』
 『いえ、ありません』
 『軍団長、一同、通貨に関する事情を理解したようだ。もういいだろう。勉強会は終了だ』
 『解りました』
 イリオネスがスダヌスに話しかけた。
 『スダヌス浜頭、ありがとう。懇切丁寧な説明で、通貨制度とその事情をを知ることができた。礼を言う、重ねて礼を言う。ありがとう』
 二人は手を握り合った。
 『軍団長、たどたどしい説明個所もありましたが、ご理解いただけたでしょうか?』
 『おう、俺は理解した。あれで充分だと思っている』
 イリオネスは、一同に渡されているドラクマ銀貨を受け取ってスダヌスに返した。
 スダヌスはパリヌルスら三人とも握手を交わしながらオキテスに声をかけた。
 『オキテス殿、頃合いもちょうど昼です。昼の準備ができているはずです。広場のほうへ行きましょう』
 『おう、ありがとう。何かと世話をかけるな』
 『いえいえ、それはありません、心づくしの昼食です。遠慮なさらずに、どうぞ』
 『おう、そうか。喜んで馳走になる』
 一同は広場へと向かった。

 集散所の新艇担当のトミタスから、ギアスは連絡を受けていた。今日の試乗会の催行は午後一番に予定されている。ギアスらは、早昼を済ませて待機している。
 彼は、風具合を読み、試乗会のシナリオを描いている、今日のコンデーションは極めていいといえる。
 新しい艤装のなったヘルメスを駆っての試乗会の催行である。
 昨日、今日とツケヤイバ的に操作要領を身につけての試乗会催行を思うと緊張せざるを得なかった。