『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  713

2016-02-10 05:09:13 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 今日の試乗会の客筋は、担当のトミタスから聞いている。ギアスは、ヘルメスの総帆を展帆して客の到着を待っていた。

 スダヌスは、オキテスからヘルメスが新しい帆張りを装備したことを聞かされた。
 『そいつは、はなはだ興味のあることですな。こちらへ来られるときは、帆張りで来られたわけでしょう。皆さんの評価は、いかがなものでしたかな。どうです、新艇のデモ航海にイラクリオンへ出かけませんか。三、四日くらいの予定で行きましょうや、オキテス殿。試乗会をイラクリオン、パノルモスでやるということで、私が知り合いに声をかけます』
 『それは、いいな。考えようか。ちょっと時間をくれ』
 一同は、スダヌスが準備した昼食を楽しんでいる。
 『軍団長、進化と言おうか、とにかく世の中が変化している。我々も変わらなければいかんな』
 『全くです。経済の仕組みが変化しています。もうトロイ時代の慣習が通用しなくなりつつあります。もっとも、あの時代の我々と今の我々とは、社会的な立ち位置が変わっていますが』
 『それは、言えている、帰って、これからの対応を考えねばならん』
 二人は言葉を交わし終えて、スダヌスと向き合った。
 『浜頭、今日は大変世話になったな。今日は多くを学んだ。両目のウロコを取り除いた。今日現在の社会制度、変わりつつある世の中の仕組みを知ることができた。ありがとう。そのうえ、昼食まで馳走になった、ありがとう。我々は、力を尽くして、いい船を造る。よろしく頼む』
 『はい、これはこれは、丁寧な言葉を頂戴しました。及ばずながら、力いっぱい協力できることを心から喜んでいます。いい結果のために協力いたします。今日は、ようこそ、おいでいただきました』
 スダヌスは言葉を結んだ。一行はスダヌスと別れた。
 オキテスは、アヱネアス、イリオネスとスケジュールを打ち合わせた。帰途に就くまで間がある。オロンテスを除く四人は、集散所を見て廻り、時間の費消にキドニアの街ブラをすることにして歩を運んだ。

 ヘルメスを係留している船だまりに新艇担当の二人に導かれて客5人が姿を見せる。ギアスが一行を迎える。
 『皆さん!今日はようこそ!新艇においでくださいました』
 歓迎の言葉をかける、ハニタスとトミタスが目を見張る、新しい帆張りのヘルメスを仰ぎ見た。
 『ほう~っ!艤装が少々変わりましたな。この帆装は素晴らしい!』
 『これで新艇の艤装の完結です。これからキドニア沖に出て帆走いたします。新艇の走りを堪能してください』
 ギアスが一行を歓迎する挨拶口上を述べ、ヘルメス艇上に一行を乗船させた。
 『皆さん!こんにちは!この艇の運航を担当しているギアスです。よろしくお願いします』