『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  716

2016-02-15 06:03:55 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 オキテスがパリヌルスに話しかけた。
 『パリヌルス、お前、どのように考えている?今日のスダヌスを囲んでの話し合いのことだが』
 『よかったと考えている。お前はいい機会を作ってくれたと思っている。俺たちが生きている世の中を知ることができた。それもあいまいではなく世の中の制度のありようを知り、その価値判断を理解した。まさに目からウロコがはがれて落ちた。それを実感した。今後の対処を考えねばならない。我々は、世の中の変化に疎かった。悔やまれた。むつかしい世の中を渡っていく処せ術が必要となってくる。一筋縄ではどうにもならん。恥ずかしくもあったな、知っていなければならないことも知っていないじゃないかということを知らされた。お前はどうだ?』
 オキテスに問いかけた。
 『俺も、お前が、今言ったように考えている。我々の見識が広まった。我々が当然知っていなければならないことなのだ。いい機会であった。しかし、あの通貨単位だ、ドラクマなる通貨単位だ。その価値について知らされたとき、そんなものかと思うと同時に、大ショックだったな。今も、そのショックで身が震える。あの2ドラクマの銀貨一つで我々が焼いている、あのパンが100個、買えると聞いたときのショックがこたえたな、何とも言えない大ショックだった。そのあとに、オロンテスが俺に言ったことだが、ものの価値判断に地域差があるようなことを言っていた。それについては、いずれ俺たちも知ると思うが、今、現在は不明の領域だ』
 『あの2ドラクマの銀貨1つで、俺たちが焼いているパンが100個買えると聞いたとき、俺も、お前と同様に大ショックだった。心臓が停まりにかかった。あの銀貨一つでだぞ、パンが100個も買える、どう考えてもショックであった。オロンテスはどう考えているかな?あいつは言っていたな、パンを焼いて、船で運び、1日、売り場で売って、あの銀貨一つと半分とは承知しかねるといっていた。そうだろう、俺もそのように感じた』
 『こう言っては何だが、今、現在のものの価値判断が、このようなものなのかと受け取ったな。これがものの流通価値かと思った』
 『今度、機会をつくり、集散所の木札を使って、買い物をして、ものの価値を知る調査をしようと考えている。アレテスが担当している魚類の流通価値を正しく知ろうと考えている。それをもって、我々が1日働いての労働の価値についても知りたい』
 『解った。お前、結構、冷静に物事を見ているな。お前と話していて、ショックがだんだん消えていきそうな気がする』
 『ほう、そうか。それはいい、気持ちが滅入って落ち込む、それはよくない。ショックを払い落とせ!正しく物事を見る目を盲しいさせる!』
 『お前、いいことを言ってくれる。このように世の中の経済事情を知ってこそ、新艇の価格を正しく考えられるというものだ』
 二人の話は、彼らの肩に乗っている事態を理解して、決断へのプロセスを歩ませようとしていた。