『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

第1章  二つの引き金  35

2007-05-08 09:04:45 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 船は、外海に出た。航走は順調である。船主をともなって、船長から、改めての挨拶である。
 『私どもの船に乗船いただき誠にありがとうございます。こちらが、この船の船主、シャイロスです。私が船長のカルデスです。私の航海歴は、30年を超えています。航海の安全については信頼してください。船主のシャイロスは、島を離れたところより、王の代理人として、その権利の執行人です。私は、私の役務を努めてまいります。何卒よろしくお願いいたします。』
 挨拶を受けて、オデッセウスとメネラオスも自分たちを紹介した。
 この時代の船は、長い船<軍船>と丸い船<交易船>の二種類であり、彼等の想像する宇宙観による海といえば、オケアノスであり、エーゲ海及び地中海を視野にした航海船ではあるが、内海船であり、沿岸航法による航海術で航走する船であったと思われるのである。

第1章  二つの引き金  34

2007-05-07 08:20:24 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 程なく港についた。船長は、埠頭に船首部を係留接岸している船を、手で指し示して、
 『お二人に乗っていただく船です。もう、荷役も終え、すべての用件は済ませています。風のぐあいもとてもいいようです。さあ、急ぎましょう。』
 言葉を交わしている間に、埠頭につき、船長、船主、そして、二人が続き、彼等を出迎えた水夫たち3人が乗船した。船長は、水夫頭と打ち合わせをして、船主、船客の二人、乗員のすべてを集めて、航海の無事を祈る儀式を終えて、出航の指令を下した。出航である。
 一本マストのでっかい横帆は、追い風をはらんで、船を押した、船は海の上をすべるように港をはなれ、波を切りながら航走しはじめた。
 太陽は、船の進行方向の右手の高みにあった。

第1章  二つの引き金  33

2007-05-05 07:51:32 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 この時代の交易といえば、<王の交易>の時代である。船主が王の代理人としての御用商人をつとめて交易が行われていたのである。
 ミチリニからミレトスまでの航海の距離は、350KMくらいと思われる。船長としての航海予定は、寄港は、4箇所、航海日数は、7昼夜としているが、6昼夜でミレトスの港に着港の予定である。帆走する日は5日、櫂で漕走する日を1日としている。いずれにしても航海しなれている海である。今度の航海も無事に行くようにと心の内に祈った。
 ミチリニアモスのほうでは、二人の旅たちについての準備が整ったようである。別れのときが訪れた。二人は、王に丁重に礼を述べた。門口には、王をはじめとして、側近、長老、王の家族と皆が見送ってくれている。二人は、船主、船長とともに入り江の埠頭へと急いだ。
 午後の入り江には、地形の関係と思われる東よりの北風が吹いている。波の照り返しがまぶしい。ここ数日は天候は安定しているものと予想される。
 太陽の高さから推定される時間は、今様、午後3時位と思われる。

第1章  二つの引き金  32

2007-05-04 07:23:23 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 『私どもの船の船籍は、このミチリニにあります。王から話は聞いておりす。私どもが、お二人をミレトスまでお連れします。気候、風のぐあいも良いので、7昼夜の予定で、ミレトスまで行きますが。』
 メネラオスは、オデッセウスの目を見た。目は、<OK>のサインを出している。決断は早かった。メネラオスは、側近に向かい言葉を返した。
 『いいでしょう。では、それで諸事、手配の方、よろしく願います。』
 話は決着した。二人の思案どおりである。
 出航は一刻後である。陽は、まだ高みにある。船は、二階の窓から見えた入り江の埠頭にある。二人は、船主、船長とともに、館から出ることにした。王ミチリニアモスとの出会いから、数時間であったが、その厚意に感謝の念を深くした。

第1章  二つの引き金  31

2007-05-03 07:20:45 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 メネラオスが、話を引き取った。
 『私ら二人の考えでは、我々の本国までとは言わない。ミレトスまで、一日でも早くと思っている。ミレトスまでいければ、あとは、私らで、帰国の手筈をつける。そのように考えている。申し遅れたが、ミチリニアモス王のほうで、いろいろと思案していただいている。そのことについて、深く感謝しています。とにかく、ミレトスへなのです。』
 側近と船長が話を交わしている。側近は、メネラオスの方をむき、口を開いた。
 『いいでしょう。船長の話では、ミレトスには、食糧や飲料水の積み込みに寄港するとの事です。後は、この場で船長と話しをしてください。なお、ミレトスまでの、お二人の身の安全については、王、ミチリニアモスが責任を持つと言っています。』
 船長は、船主と二言、三言、言葉をかわして、メネラオスに話しかけてきた。

第1章  二つの引き金  30

2007-05-02 07:42:29 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 ミチリニアモスより、話し合いの準備が整った旨の連絡があり、二人は、その部屋に急いだ。王と側近、長老、そして、二人の真っ黒に陽にやけた男が座についていた。オデッセウスとメネラオスが座につくや、長老の一人が座長役をつとめて、懸案の話に入った。陽にやけた二人の男は、交易船の船主と船長とわかった。側近の一人が話し始めた。
 『アンテノールからの書状で、お二人の帰国について、思案していたところ、ちょうど、いい具合に、南のクニドス及びロドス島に交易に向かう船の船主と船長が、館に挨拶にきたので、お二人のことを話したのです。そうしたら、それは、お会いした上で、決めたいとの事。こちらが、その船の船主と船長です。ミチリニアモスも、それがいいと、言ってくれています。そのようなわけで、今、ここに、お引き合わせした次第です。お二人の考えは、如何なものかと、、、、。』