植草一秀氏のブログで派遣社員の問題について触れてますが、納得できる内容です。
私の会社のお客さんで、「派遣会社向けのコンピュータソフトウェアパッケージ」を開発・販売している会社があります。その派遣会社向けソフトは、1997年ころから徐々に売れ出して、2005年ころには累計で150社に導入したそうです。その会社の社長が言うには、「派遣会社がドンドン増えるので、ドンドン販売できた。また、年商1億円だった派遣会社が、50億円・60億円にも成長した会社がいくつも生まれてきた」と言ってました。派遣社員が増えるにつれて、派遣会社もドンドン規模が大きくなっていったそうです。
ただ、昨年後半からは急にそのソフトが売れなくなってきたとのことです。要因の一番は経済状況の悪化でしょうが、同時に心ある企業は、派遣社員を正社員に登用していることもあげられるかと思います。今後は徐々に派遣社員自体も減っていくか、北欧のように派遣社員も正社員に近い保証制度が整う方向になるかと思います。
<記事転載>
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民意から遊離する麻生首相の末路
①製造業に対する派遣労働禁止に反対。
②定額給付金を補正予算から削除することに反対。
③「天下り」および「渡り」の禁止に反対
これが1月8日の衆議院予算委員会で麻生首相が示した基本姿勢だ。
「最近は派遣社員が増えています。企業の生き残りを考えるといつでも首を切れる社員が一番便利です。」
これは、自民党国会議員で麻生内閣の総務政務官である坂本哲志氏のHPにある表現である。これが、政府が派遣労働を推進してきた基本的背景である。
企業=資本にとっては、
①労働者の賃金が低く、②労働者をいつでも解雇でき、③労働者に対する福利厚生負担が低く、④法人税負担が低く、⑤株主と経営者の分配所得が高いこと、が常に望ましい。
派遣労働拡大を推進した原動力は、こうした「資本の論理」である。
「多様な働き方の要請に応えた」というのは、聞こえのよい大義名分に過ぎない。「市場原理主義」は「資本の論理」、「資本の利益極大化」だけを追求するものである。小泉竹中政治による労働市場の規制撤廃推進は、大企業=大資本の利益極大化を追求する「市場原理主義」に基づいていた。「資本の論理」に基づく「資本の利益極大化」を容認し、「市場原理」にすべてを委ねた。これが「市場原理主義」である。
その結果として、製造業の新規雇用が「派遣労働」に集中した。働き手である労働者が「派遣労働」を求め、「派遣労働」に集中したわけではない。「派遣労働」は上記の①~③を満たしていることから、企業が新規求人を「派遣労働」に集中させたのである。
この結果、「低賃金」と「不安定な雇用形態」を特徴とする「派遣労働」が急激に拡大した。「資本」にとってこれほど好都合な雇用形態はない。しかし、裏を返せば、労働者にとってきわめて悲惨な状況が一気に広がったのだ。
急激な景気悪化に連動して、大企業が一斉に「派遣労働者の雇い止め」=「派遣切り」に動いている。突然、住居と所得を失う労働者が大量発生して、大きな社会問題になった。
しかし、資本は資本に有利な派遣労働制度を温存したいと考えている。資本は「多様な働き方を求めるニーズが存在するし、派遣労働制度の導入によって失業率が低下したのだ」と主張する。しかし、この主張も正しくない。
たしかに、どのような働き方を望ましいと考えるかについての価値観は変化している。日本の労働市場の特徴であった「年功賃金」と「長期雇用」は崩壊しつつある。労働者も学校を卒業してから定年退職するまで、ひとつの企業で働き続けようとしなくなった。しかし、国民の労働観の変化は、派遣労働の現状を正当化する理由にはならない。
問題は派遣労働従事者の不安定な雇用、社会保障の不備、賃金を含めた処遇の低さにある。正規雇用労働者と非正規雇用労働者の賃金格差、社会保障の格差を大幅に縮小する規制が求められているのだ。また、非正規雇用労働者が仕事を失った場合の保障を拡充することが求められている。
基本的に「同一労働・同一賃金制度」の導入、非正規雇用労働者に対する雇用保険および各種社会保険の適用を拡充する必要がある。
すべての労働者の生存権と尊厳を確実に確保する制度設計が求められている。すべての企業と労働者に対して均等に規制が適用されれば、企業はその「枠組み」のなかで労働者を雇用しなければならなくなる。「枠組み」のなかで市場原理が働くから、平時の経済状況の下では「完全雇用」が達成されることになる。重要なことはすべての企業と労働者に対して、この「枠組み」=「ルール」が例外無く適用されることだ。
麻生首相が製造業の派遣労働禁止に反対の姿勢を示しているのは、麻生首相が「市場原理主義」の立場に立ち、資本の利益を重視して国民の利益を軽視しているからである。
「定額給付金」の経済効果は、「定額給付金」がどの程度、消費に充当されるのかによって変化する。「定額給付金」を受け取らない場合の消費水準から、「定額給付金」を受け取った場合にどれだけ消費が増えるかが問題になる。
多くの人々が経済の先行きに対する不安を強く感じている。このような局面では、定額給付金が消費ではなく貯蓄に回る傾向が強くなる。また、麻生首相が2011年度の消費税大増税を提唱している。この政策提示も消費を抑制させる効果を発揮する。
2兆円の国費を投入して定額給付金を給付しても、GDPを押し上げる効果は0.2%ポイントに満たない可能性が高い。
一人に12,000円を一律支給する定額給付金制度を評価しない国民は各種世論調査で6-8割に達している。菅直人民主党代表代行が指摘するように、2兆円あれば、派遣切りなどの被災者など100万人に対して年間200万円の給付を実行することさえ可能になる。限られた財源を用いて最大の効果を得るには、歳出の内容を十分に吟味する必要がある。定額給付金の一律給付は政治の思考停止に等しい。総選挙に向けての買収工作と批判されるのは当然である。
野党は補正予算案から定額給付金を削除した補正予算修正案を国会に提出した。国民の多数が賛成しない天下の愚策は、撤回されるべきだ。国民の支持を完全に失っている麻生首相が定額給付金をゴリ押しするために補正予算の成立、執行が遅れることになれば、麻生首相が責任を追及されることになる。
麻生首相は「天下り」について、「温存・死守」のスタンスを明示した。国家公務員の再就職あっせんを監視・承認する再就職等監視委員会の委員長人事が国会で同意されていないため、国家公務員の天下りあっせんが行えない事態が生まれた。
この事態に対して麻生政権は、麻生首相が監視委員会に代わって、天下りあっせんを承認することを政令で定めてしまった。また、渡辺喜美元行革相が「「渡り」は認めない」としていたにも拘らず、政令に「渡り」を容認する規定を盛り込んだ。
1月8日の衆議院予算委員会で民主党の仙谷由人議員が追及したが、麻生首相は「渡り」の全面禁止を確約しなかった。
天下り機関には年間12.6兆円もの国費が投入されている。「天下り」の存在が膨大な政府支出の無駄が生まれる最大の原因になっている。医療保険、年金、介護、雇用のセーフティネット、障害者支援、生活困窮者支援、教育など、国民生活に直結する費目に対する激しい支出切込みが実行されている一方で、「天下り利権」を維持するための国費投入は温存されている。
「天下りの根絶」こそ「改革の本丸」である。小泉竹中政治は「改革」を叫びながら「天下り」を温存し続けた。小泉竹中政治の実態は「大資本」、「特権官僚」、「外国資本」の利益追求だった。「改革」の言葉が「よい方向に制度を変えること」を意味するなら、小泉竹中政治が実行したのは「改革」ではなかった。「改悪」、「えせ改革」、もしくは「リフォーム(改革)詐欺」と呼ぶべきものだ。
「資本の論理」だけを追求した小泉竹中政治の「労働市場改悪」が現在の社会不安を招いた原因である。「郵政民営化」も米国資本と特定資本に巨大な利益を供与する政策にすぎなかった。このことはオリックスに対する「かんぽの宿」一括譲渡構想にも端的に示されている。
①「市場原理主義」から訣別し、「人間尊重主義」に基づく「セーフティネット」を確立すること
②「天下り」=「官僚主権構造」を根絶し、「国民主権構造」を確立すること
③「対米隷属外交」から訣別し、「自主独立外交」を確立すること
が次期総選挙での政権交代実現の目的である。
主権者である国民の意向から完全に遊離(ゆうり)した麻生首相は、首相の地位に居座り続ける正当性を完全に失っている。国民の支持を完全に失って首相の地位に居座り続けることは、民主主義の根本原則に矛盾する。麻生政権の崩壊は時間の問題だが、被害を最小限に食い止めるための早期退陣が求められる。
●植草一秀氏ブログ
http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/
私の会社のお客さんで、「派遣会社向けのコンピュータソフトウェアパッケージ」を開発・販売している会社があります。その派遣会社向けソフトは、1997年ころから徐々に売れ出して、2005年ころには累計で150社に導入したそうです。その会社の社長が言うには、「派遣会社がドンドン増えるので、ドンドン販売できた。また、年商1億円だった派遣会社が、50億円・60億円にも成長した会社がいくつも生まれてきた」と言ってました。派遣社員が増えるにつれて、派遣会社もドンドン規模が大きくなっていったそうです。
ただ、昨年後半からは急にそのソフトが売れなくなってきたとのことです。要因の一番は経済状況の悪化でしょうが、同時に心ある企業は、派遣社員を正社員に登用していることもあげられるかと思います。今後は徐々に派遣社員自体も減っていくか、北欧のように派遣社員も正社員に近い保証制度が整う方向になるかと思います。
<記事転載>
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民意から遊離する麻生首相の末路
①製造業に対する派遣労働禁止に反対。
②定額給付金を補正予算から削除することに反対。
③「天下り」および「渡り」の禁止に反対
これが1月8日の衆議院予算委員会で麻生首相が示した基本姿勢だ。
「最近は派遣社員が増えています。企業の生き残りを考えるといつでも首を切れる社員が一番便利です。」
これは、自民党国会議員で麻生内閣の総務政務官である坂本哲志氏のHPにある表現である。これが、政府が派遣労働を推進してきた基本的背景である。
企業=資本にとっては、
①労働者の賃金が低く、②労働者をいつでも解雇でき、③労働者に対する福利厚生負担が低く、④法人税負担が低く、⑤株主と経営者の分配所得が高いこと、が常に望ましい。
派遣労働拡大を推進した原動力は、こうした「資本の論理」である。
「多様な働き方の要請に応えた」というのは、聞こえのよい大義名分に過ぎない。「市場原理主義」は「資本の論理」、「資本の利益極大化」だけを追求するものである。小泉竹中政治による労働市場の規制撤廃推進は、大企業=大資本の利益極大化を追求する「市場原理主義」に基づいていた。「資本の論理」に基づく「資本の利益極大化」を容認し、「市場原理」にすべてを委ねた。これが「市場原理主義」である。
その結果として、製造業の新規雇用が「派遣労働」に集中した。働き手である労働者が「派遣労働」を求め、「派遣労働」に集中したわけではない。「派遣労働」は上記の①~③を満たしていることから、企業が新規求人を「派遣労働」に集中させたのである。
この結果、「低賃金」と「不安定な雇用形態」を特徴とする「派遣労働」が急激に拡大した。「資本」にとってこれほど好都合な雇用形態はない。しかし、裏を返せば、労働者にとってきわめて悲惨な状況が一気に広がったのだ。
急激な景気悪化に連動して、大企業が一斉に「派遣労働者の雇い止め」=「派遣切り」に動いている。突然、住居と所得を失う労働者が大量発生して、大きな社会問題になった。
しかし、資本は資本に有利な派遣労働制度を温存したいと考えている。資本は「多様な働き方を求めるニーズが存在するし、派遣労働制度の導入によって失業率が低下したのだ」と主張する。しかし、この主張も正しくない。
たしかに、どのような働き方を望ましいと考えるかについての価値観は変化している。日本の労働市場の特徴であった「年功賃金」と「長期雇用」は崩壊しつつある。労働者も学校を卒業してから定年退職するまで、ひとつの企業で働き続けようとしなくなった。しかし、国民の労働観の変化は、派遣労働の現状を正当化する理由にはならない。
問題は派遣労働従事者の不安定な雇用、社会保障の不備、賃金を含めた処遇の低さにある。正規雇用労働者と非正規雇用労働者の賃金格差、社会保障の格差を大幅に縮小する規制が求められているのだ。また、非正規雇用労働者が仕事を失った場合の保障を拡充することが求められている。
基本的に「同一労働・同一賃金制度」の導入、非正規雇用労働者に対する雇用保険および各種社会保険の適用を拡充する必要がある。
すべての労働者の生存権と尊厳を確実に確保する制度設計が求められている。すべての企業と労働者に対して均等に規制が適用されれば、企業はその「枠組み」のなかで労働者を雇用しなければならなくなる。「枠組み」のなかで市場原理が働くから、平時の経済状況の下では「完全雇用」が達成されることになる。重要なことはすべての企業と労働者に対して、この「枠組み」=「ルール」が例外無く適用されることだ。
麻生首相が製造業の派遣労働禁止に反対の姿勢を示しているのは、麻生首相が「市場原理主義」の立場に立ち、資本の利益を重視して国民の利益を軽視しているからである。
「定額給付金」の経済効果は、「定額給付金」がどの程度、消費に充当されるのかによって変化する。「定額給付金」を受け取らない場合の消費水準から、「定額給付金」を受け取った場合にどれだけ消費が増えるかが問題になる。
多くの人々が経済の先行きに対する不安を強く感じている。このような局面では、定額給付金が消費ではなく貯蓄に回る傾向が強くなる。また、麻生首相が2011年度の消費税大増税を提唱している。この政策提示も消費を抑制させる効果を発揮する。
2兆円の国費を投入して定額給付金を給付しても、GDPを押し上げる効果は0.2%ポイントに満たない可能性が高い。
一人に12,000円を一律支給する定額給付金制度を評価しない国民は各種世論調査で6-8割に達している。菅直人民主党代表代行が指摘するように、2兆円あれば、派遣切りなどの被災者など100万人に対して年間200万円の給付を実行することさえ可能になる。限られた財源を用いて最大の効果を得るには、歳出の内容を十分に吟味する必要がある。定額給付金の一律給付は政治の思考停止に等しい。総選挙に向けての買収工作と批判されるのは当然である。
野党は補正予算案から定額給付金を削除した補正予算修正案を国会に提出した。国民の多数が賛成しない天下の愚策は、撤回されるべきだ。国民の支持を完全に失っている麻生首相が定額給付金をゴリ押しするために補正予算の成立、執行が遅れることになれば、麻生首相が責任を追及されることになる。
麻生首相は「天下り」について、「温存・死守」のスタンスを明示した。国家公務員の再就職あっせんを監視・承認する再就職等監視委員会の委員長人事が国会で同意されていないため、国家公務員の天下りあっせんが行えない事態が生まれた。
この事態に対して麻生政権は、麻生首相が監視委員会に代わって、天下りあっせんを承認することを政令で定めてしまった。また、渡辺喜美元行革相が「「渡り」は認めない」としていたにも拘らず、政令に「渡り」を容認する規定を盛り込んだ。
1月8日の衆議院予算委員会で民主党の仙谷由人議員が追及したが、麻生首相は「渡り」の全面禁止を確約しなかった。
天下り機関には年間12.6兆円もの国費が投入されている。「天下り」の存在が膨大な政府支出の無駄が生まれる最大の原因になっている。医療保険、年金、介護、雇用のセーフティネット、障害者支援、生活困窮者支援、教育など、国民生活に直結する費目に対する激しい支出切込みが実行されている一方で、「天下り利権」を維持するための国費投入は温存されている。
「天下りの根絶」こそ「改革の本丸」である。小泉竹中政治は「改革」を叫びながら「天下り」を温存し続けた。小泉竹中政治の実態は「大資本」、「特権官僚」、「外国資本」の利益追求だった。「改革」の言葉が「よい方向に制度を変えること」を意味するなら、小泉竹中政治が実行したのは「改革」ではなかった。「改悪」、「えせ改革」、もしくは「リフォーム(改革)詐欺」と呼ぶべきものだ。
「資本の論理」だけを追求した小泉竹中政治の「労働市場改悪」が現在の社会不安を招いた原因である。「郵政民営化」も米国資本と特定資本に巨大な利益を供与する政策にすぎなかった。このことはオリックスに対する「かんぽの宿」一括譲渡構想にも端的に示されている。
①「市場原理主義」から訣別し、「人間尊重主義」に基づく「セーフティネット」を確立すること
②「天下り」=「官僚主権構造」を根絶し、「国民主権構造」を確立すること
③「対米隷属外交」から訣別し、「自主独立外交」を確立すること
が次期総選挙での政権交代実現の目的である。
主権者である国民の意向から完全に遊離(ゆうり)した麻生首相は、首相の地位に居座り続ける正当性を完全に失っている。国民の支持を完全に失って首相の地位に居座り続けることは、民主主義の根本原則に矛盾する。麻生政権の崩壊は時間の問題だが、被害を最小限に食い止めるための早期退陣が求められる。
●植草一秀氏ブログ
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