メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

ハイ・フィデリティ

2006-08-04 22:48:28 | 映画
「ハイ・フィデリティ」(High Fidelity)(2000年、米、113分)
監督 スティーヴン・スピアーズ 
原作 ニック・ホーンビィ
ジョン・キューザック、イーベン・ヤイレ、ジャック・ブラック、トッド・ルイーソ、ジョーン・キューザック、リサ・ボネ
 
30代のロック オタクで中古レコード店を営む主人公(ジョン・キューザック)が、そのオタクぶりとなかなか地に足がつかない生活ぶりで一緒に住む恋人からも愛想をつかされる。店員二人も対照的だがやはりひどいオタク。
どうやって主人公がその仕事と女性双方の課題について、着地点を見出すか、その過程を80年代ロックを中心とした音楽エピソードをからませながら紡いでいく。
 
「2番目のキス(2005)/ぼくのプレミア・ライフ(1997)」、「アバウト・ア・ボーイ(2002)] と、ことごとく映画化で当たったニック・ホーンビィの原作である。「2番目のキス」を見なかったらおそらく借りてこなかったわけで、こういうものに行き当たるから、つながりというものは面白い。
 
おそらく原作はイギリスの話で映画もそうかと思っていたら、しばらくして通貨がドルとわかり、シカゴということだった。このしょぼくて頼りない男が主人公たりうるというのはどうみてもアメリカではないのだが、あまり気になるシーンはない。
 
こまかいところに凝ってつなぎながらも、全体としていい味わいになっている。特に男からみると。
 
脚本にも参加しているようだが、こういうしょぼい男を演じるとジョン・キューザックはピタリで、「マルコヴィッチの穴(1999)」を思い出す。 
そして気にくわないと客にレコードを売らず説教し始める、なんかいそうな迷惑店員を演じるジャック・ブラックが怪演である。その後の「スクール・オブ・ロック(2003)」はさもありなんと思わせる。
恋人役のイーベン・ヤイレはデンマークの人らしい。とってもいい感じであるけれど、ほとんど母国の外には出ていない。小柄ということもあるのだろうか。
 
ここでキーになる話題として使われているのが、ロック オタクならではの、何でもトップ5を作ってしまうこと。音楽以外にも、振られた女性、恋人の性格などなど。
そして、この5番目に入るのかどうなのかが問題だということを、主人公達は気づき始める。
つまり、この5番目が人生のいろいろな要素の現実的な着地点というわけで、ここに持ってくるところが話としてうまい。
要は、特に男にとっては、1位、2位なんていうのは所詮夢みたいなもので、5位の現実的な価値にどう気がつくか、それにはそれなりの時間が必要、というのが、まあ真実なんだろうか。
 
あんまりこの時期のロックシーンに詳しくないので、そういう人ほど楽しめなかったかもしれないが、小説で読むよりはこうして一気に見たほうがよかったか。
 
「スクール・オブ・ロック(2003)」にもなかなかいい演技で出ている実姉ジョーン・キューザックがここでも先輩友人役でうまいし、また恋人の父親の葬式でジョンの父親ディック・キューザックが牧師役で、パーティで実妹のスージーが出ている。
 
カメオ出演より本格的なのは、ティム・ロビンス、キャサリン・ゼタ・ジョーンズ、ブルース・スプリングスティーン。特にティムはおかしくて楽しめる。
 
店の名前はChanpion's Vinyl(チャンピオンズ・ビニール、後の方はヴァイナルと読むらしい)で、ビニールは(アナログ)レコードのことだろう。
 
店の中の会話で、「キャッシュ・バイ・ジョニー・キャッシュ」という本が出てくる。これはジョニー・キャッシュの生涯を描いた映画「ウォーク・ザ・ライン 君につづく道」(2005)の元になったものである。
 
製作総指揮に加わっているアラン・グリーンスパンは「2番目のキス(2005)」、「理想の女(ひと)(2004)」の製作もしており、プロデューサーとして目の付け所がいい人なのだろう。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする