「ハッピーフライト」(2008年、103分)
監督・脚本:矢口史靖、音楽:ミッキー吉野
田辺誠一、時任三郎、綾瀬はるか、吹石一恵、田畑智子、寺島しのぶ、岸辺一徳、平岩紙、田山涼成、肘井美佳、笹野高史
同じ矢口史靖の「ウォーターボーイズ」(2001)、「スウィングガールズ」(2004)が、一つのイベント達成に向けた素人集団のスキル上達とチーム形成の物語とすれば、これは一通り出来ている世界、システムが、それでも毎回一つ一つの行動、工夫、対処、個人的なトラブル克服などなどから成り立っている、それが旅客機の世界となれば半端でない、そういう面白さである。
このフライトで合格すれば操縦士に昇格できるはずの副操縦士(コーパイ)(田辺誠一)、今回初めて国際線搭乗の新米CA(綾瀬はるか)、この二人が一応中心ではあるが、ホノルル行きANA B747-400が離陸後に、鳥がぶつかり計器トラブルとなって引き返すことになり、その後台風が来ている羽田に着陸するまで、地上、機上に、ドラマというより、ほー、 ここはこうするの? という薀蓄がちりばめられ、それが愉快でもあり、その組み合わせがうまいドラマ進行になっている。
上記二作ほどの達成感、盛り上がりもなければ、いわゆるエアポートものほどのパニックではないのに、時間を忘れ、あっという間にエンドになり、話の全体にほろりとする。
この十数年、国内中心だが随分乗ったから、初めから終わりまで退屈することがなかった。
配役はみなぴったりだが、やはり綾瀬はるか なんともにんまりしてしまう。それと田辺誠一のどじっぷりもいい。しいていえばこの人が主役。
クレジットの場面でかかるF.シナトラ「カム・フライ・ウイズ・ミー」は懐かしい。同名のアルバムのタイトル曲でサミー・カーン、ジミー・ヴァン・ヒューゼンの名コンビ、オーケストラはビリー・メイ。この1957年に作られたLPを今でも持っているが、ジャケットにあるプロベラ機はTWAで、このアルバムはタイアップ企画だったようだ。
だいぶ後のフィフス・ディメンションズ Up Up and Away ( ビートでジャンプ )もTWAに売り込まれ、コマーシャル・ソングになったらしい。
細かいことで問題があるとすれば、「ハッピーフライト」というタイトルで、すでに2003年アメリカ映画(邦題)「ハッピー・フライト」(原題 View From The Top )があることだ。
グウィネス・パルトローが綾瀬はるかにあたる役、地上の教官にマイク・マイヤーズ(「オースティン・パワーズ」他)、伝説の先輩CAになんとキャンディス・バーゲンという配役で、これも面白い。
もちろん知っての上で、それだけこれは使いたいフレーズなんだろう。最初に邦題をつけた人の感覚が優れていたということか。