「英国王 給仕人に乾杯!」( I served The King of England ) ( 2006年、チェコ/スロヴァキア、120分)
監督・脚本:イジー・メンツェル、原作:ボフミル・フラバル
イヴァン・バルネフ、オルドジフ・カイゼル、ユリア・イェンチ、マルチン・フバ、マリアン・ラブダ
第2次世界大戦の前のチェコスロヴァキア、富めるものと貧しいもの両極端があり、富めるものの世界はパリ風を頂点に画面を美しく楽しく見せる。その中で、ホテル、レストランで給仕をしながら百万長者を夢見る主人公。
もちろん、運と不運は隣り合わせでほぼ交互に来る。その中で、しかもヒットラーによる併合の中で、富と女を求め、戦後まで生き抜いたと思ったら、今度はソ連、共産主義により無一文、15年の刑となって出所し田舎の廃屋で自分の周りを鏡で囲みながら、自己を検証していく。
といっても、ホテルと戦争で思い出す「ホテル・ニューハンプシャー」のような深刻なエピソード、深刻な描き方はない。
そうそう、と人間の愚かしさ、それゆえの真実を、美しく映し出していく。
男も女も、こんなに裸の場面が多い映画も珍しいが、なぜかあっけらかんという趣を通り越している。
これが本当なら、ズデーデンにはドイツ系が多かったからヒットラーの政策も比較的容易であったようだ。ソ連に対する抵抗も他の東欧と比べるとどうっだったか。ここの人たちは戦争をやらないということも、その理由が解き明かされるわけではないにしても、そういうものかもしれないということは伝わってくる。
とにかく、なんとか生きていくということの意味は、最後のショットに集約されているだろう。また列車を追いかける場面が二つあって、これは作者あるいは主人公のエクスキューズか。
それにしても、映画館に着くのがあと10分遅れたら、座りそこねるところだった。かなり各紙で評判になったせいなのと、単館上映だからということだろう。もっとも配給側からすれば、そんなに当たる映画と思わなかったとしても不思議はない。気持ちよく、にやっと笑える映画ではあるが。