「ウディ・アレンの夢と犯罪」(CASSANDRA'S DREAM 、2007英、108分)
監督・脚本:ウディ・アレン、音楽:フィリップ・グラス
ユアン・マクレガー(イアン)、コリン・ファレル(テリー)、ヘイリー・アトウェル(アンジェラ)、サリー・ホーキンス(ケイト)、トム・ウィルキンソン(ハワード)
ロンドンのレストラン経営一家の息子兄弟イアンとテリー、これが不思議なことだが、どちらもまともに働いていなくて、投資やら賭け事が第一、それでも親から借金したりしてなんとか生活している。かの国ではこういう人結構いるんだろうか。映画でもそれほど世間からうるさく言われているようにも見えない。
それでもやはり困っているところに、米国で成功しているらしい母方の伯父ハワードが現れ、兄弟は彼に資金を無心するが、伯父も会社が調べられそうで、部下で仲が悪い男がしゃべるともうおしまいということから、この甥の兄弟にその部下を殺してくれと頼む。
それまでそれぞれ女性ともうまくやりつつある兄弟、しょうがないと決心をしながら、計画もやることも臆病でちぐはぐ、さてその結末は、、、というのがこのドラマ。
映画より舞台にむいていそうなこの話、ただその結末は今一つで、あれっと驚かせるのも、ペーソスを加えで人生こんなものだよというところも、勧善懲悪というところも、アレンとしては今一つ。
それまでの進行も、これを含めてロンドン三部作といわれる他の「マッチポイント」、「タロットカード殺人事件」と比べると、ひねりもにやっとするところも足りない。アレンにしてはどういうことか。
やはりジュリア・ロバーツとか特に最近のスカーレット・ヨハンソンなどのようなマドンナが不在だからか?
イアンの恋人アンジェラ役ヘイリー・アトウェルはアレン好みのようだが、ここでは全体に影響するまではいっていない。この女優、どこかで見たと思ったらTVドラマ「大聖堂」(監督:リドリー・スコット)で主人公の恋人役をやっていた。
ところで、この話、ある程度以上の年齢であの「太陽がいっぱい」を見ている人には、それを思い出させてなんらかの影響がある、ということをアレンは計算していると想像する。
イアン・マクレガーは、善悪どっちでもできる人だからほぼ予想通り、そこへ行くとびくびくしているちょっと頭の悪そうな弟にコリン・ファレルは悪いけれどぴったり。
フィリップ・グラスの音楽は、耳に残るほど強い印象はないが、場面場面で的確だった。
原題「カッサンドラの夢」は、はじめのあたりで兄弟があてたドッグレースの犬の名前で、その儲けを購入資金にあてたヨットにこの名前をつけている。もちろんカッサンドラだから「不吉」なのだが。
兄弟が借りるレンタカー、最初がニッサンのマイクラ(日本ではマーチ)、次が明らかにトヨタなのだがカローラ? イギリス映画にはニッサンがよく出てくる。