ピナ・バウシュ 夢の教室(Tanztraume、2010独、89分
監督:アン・リンセル
ピナ・バウシュ、ベネディクト・ピリエ、ジョセフィン=アン・エンディコット(ジョー)
ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち(Pina、2011独・仏・英、104分)
監督・ヴィム・ヴェンダース
ピナ・バウシュ、ヴッパタール舞踊団ダンサー
ダンサーであるピナ・バウシュ(1940-2009)については、訃報でやっと知った。ダンスについて少し前から興味は持ち始めたが、全般についてはうといからこれはやむを得ない。
この二つ、後者はバウシュが立ち上げた団体で彼女に育てられたダンサーたちによるダンスと個々からのピナへのメッセージ。ダンサーのアップでは口は動かされず、別にとられた音声が流れる。ヴェンダースのアイデアだろうが、これがよかったかどうかは判断できない。
前者は、40人のほとんどこの種のダンスは経験していないティーン・エイジャー40人を集めてある期間ピナ・バウシュ・メソッドで教え、代表的な演目を上演するまでのドキュメンタリーである。彼女のメソッドを知るには、特にあまりダンスに縁がないものにとっては、こっちの方が面白い。
彼女の方法は、一人一人に自分を気づかせ、そこから内発的というか、動きと情感を引き出して、それを勇気をもってというかそういう姿勢で、形に、見えるようにしていく。 と受け取ったが、どうだろうか。
だから、その人その人が見ていて生々しく感じられ、特に女性ダンサーの場合は、彼女たちの存在感がとりわけセクシーである。
ただダンスというのはなかなか受け取り方が難しいもので、たとえば有名な劇場で演じられるバレエでは、その長い間に鍛え上げられた人と技量は、舞台というパフォーマンスの役であり素材であって、上演全体で鑑賞され評価されるといってもいい。一方、ピナ・バウシュの人たちのダンスはというと、彼ら自分自身の把握とそこからの表出は素晴らしいのだけれど、踊られる作品を見るということになると、どこか物足りないところがある(たとえば後者で踊られる「春の祭典」(ストラヴィンスキー)など)。でも踊っている人たちの充実感は、バレエなどとは質が違ったものであっても、高いことは同じなんだろう。
それは、むしろ、こういうダンスに本当はこっちも参加したい、ワーク・ショップか何かあればその一端でも体験したいという思いがかなり強いからかもしれない。
音楽だって本来はそういうもので、近代のオーケストラ、独奏楽器の高度な曲、オペラを除くと、普通の人が日常感じ少しはやってみるものと、そんなに遠く離れていないものだって多いのである。