メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

海老原喜之助展(横須賀美術館)

2015-03-18 17:39:50 | 美術
生誕110年 海老原喜之助 展
横須賀美術館 2015年2月7日(土)~4月5日(日)
 

海老原喜之助(1904-1970)については、洲之内徹(「気まぐれ美術館」など)の文章で知り、画商でもあったこの人が所蔵した「ポアソニエール」(1934)を、死後そのコレクションが寄贈された宮城県美術館で見たことがある。「ポアソニエール」はもちろん今回展示されていて、やはりこの画家の魅力をあらわしてあまりない。洲之内はこの絵の複製を初めて見たときのことを「こういう絵をひとりの人間の生きた手が創り出したのだと思うと、不思議に力が湧いてくる」と書いている。それは昭和18年、洲之内が中国山西省にいたときであった。
 

さて、数枚はみていたものの、こうして回顧展でまとめて見るのは初めてで、これはありがたい。若くしてパリに渡り、藤田嗣治に私淑したらしいが、筋のいい、ブルーを基調とした風景画、人物画が描かれた。ブリューゲルに発想を得たと思われる雪山、動物、樵、猟師などの絵でも、海老原の絵は全体のバランスと遠近法の加減だろう、見ていて気持ちよく中に曳き込まれていく。
時代、社会のきしみを反映した、というかそれを描かないとと思ったのか、そういう絵が多くなった時期でも、後期の代表作「船を造る人」(1954)などにはそういう特色は生きている。
 

ところで、横須賀美術館は初めてであるが、その立地、レストランからの東京湾出口の眺望など、評判はきいていた。まさにそのとおりで、東京からは多少離れているものの、ミュージアムの世界に集中することができる。10分ほど先までいくと観音埼で周辺の海や岸辺も美しく、灯台にも昇ることができ、絶好の天気もあって、行き交う船舶を眺めながら、気持ちよい空気にのんびりひたっていた。

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