メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

ロッシーニ「新聞(La Gazetta)」

2016-04-12 21:14:44 | 音楽
ロッシーニ:歌劇「新聞(La Gazetta)」
指揮:エンリケ・マッツォーラ、演出:マルコ・カルニティ
ニコラ・アライモ(ドン・ポンポーニオ)、ハスミク・トロシャン(ポンポーニオの娘リゼッタ)、ヴィート・プリアンテ(リゼッタの恋人フィリッポ)、マキシム・ミロノフ(アルベルト)、ラファエラ・ルピナッチ(ドラリーチェ)
ボローニャ市立歌劇場管弦楽団・合唱団
2015年8月11、14、17、20日 イタリア・ペーザロ ロッシーニ劇場 ロッシーニ・オペラ・フェスティバル
2016年2月29日 NHK BSPre
 
ロッシーニの作品で、題名も初めて聴くもの。裕福なポンポーニオが娘リゼッタの結婚相手を見つけようと新聞に募集広告を出すことを思いつく。この作品が作られた19世紀初め、新聞というものはおそらく人々がこころをときめかすメディアであったようだ。そこにアルベルトが応募するが、すでに父親には内緒の恋人(フィリッポ)がいるリゼッタはアルベルトに人違いだと嘘をつき、アルベルトはドラリーチェにいいよる。ポンポーニオはフィリッポが気に入らず、策を凝らすが、娘の方も負けてはいない。観客からすれば他愛ないが、当人同志たちにとっては大騒ぎとなる「間違いの喜劇」である
 
ドタバタの連続といえばそうなのだが、そこはロッシーニ、はてどこかで、つまり彼の他のオペラでも聴いたようなメロディー、テンポ、オーケストレーション、そしてのりの具合、二重唱、三重唱どころか五重唱、六重唱もありで、これがその意味はともかく、雰囲気といい、歌手たちの楽しみようといい、飽きがこない。
 
多くの作品を若いうちに書いてしまい、その後少数を除いて忘れられてしまったというロッシーニだが(私が若いころもそういうイメージだった)、この放送の後の解説番組によると、1960年代からロッシーニ(1792-1868)が生まれたペーザロのロッシーニ財団が作品の再発見と校閲をすすめたことにより、上演される作品も増え、評価も上がり、人気も上昇したようだ。そういえば、メトロポリタンでの上演もこのところ多いし、それで育ってきた歌手もかなりいる。ヨーロッパでも「ランスへの旅」とか「湖上の美人」などのように、突然現れたようなものもある。後者などは初めのころにあのピアニスト ポリーニが取り上げて指揮したのだが、彼のようなインテリにとってはこういう経緯も気に入ったのかもしれない。
 
そしておそらく歌手たちにとっては、特にキャリアの途中までは、ロッシーニは技術を磨くのに好適な上に、ヴェルディに比べると声帯に大きな負荷が少ないのもいいだろう。
 
さて、歌手たちは歌も動きも達者でよかったし、時代的に近代あたりの衣装、モダンな装置、人間関係と動きをわかりやすく見せる演出も効果的だった。それにしてもポンポーニオ役のアライモは、こんなに大きい、特に幅のある歌手はちょっと見たことがない、という感じだった。
 
ところで番組でいっていたが、ロッシーニの誕生日は2月29日で、うるう年の今年2月29日(月)(日曜深夜)の放送だった。これも何かの縁。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする