メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

メアリーの総て

2020-02-25 10:01:15 | 映画
メアリーの総て (Mary Shelley、2017年、アイルランド・ルクセンブルグ、米、121分)
監督:ハイファ・アル=マンスール
エル・ファニング(メアリー・シェリー)、ダグラス・ブース(パーシー・シェリー)、スティーブン・ディレイン(ウィリアム・ゴドウィン)、トム・スターリッジ(バイロン)、ベル・パウリー(クレア)
 
ゴシック小説「フランケンシュタイン」の作者メアリー・シェリー(1797-1851)の物語。作家で書店をやっているゴドウィンの娘として生まれるが、直後に母が死に、本に夢中な娘に成長して継母と合わず、当時売れ始め
た若い詩人シェリーと知り合い駆け落ちする。義妹のクレアもついてくる。しかしシェリーには妻と娘がいた。
 
ここから、詩人バイロンがからみ、メアリーにはつらいことが続くが、致命的な破綻にいたらず、彼ら彼女らはつらいながらなんとか生きてゆき、メアリーはゴシック小説「フランケンシュタイン」を完成、苦難の末出版もでき、父にも認められる。
 
フランケンシュタインを書き始めるのが映画後半、90分を過ぎているのだが、小説の内容にからんだ描き方、時間配分にしてほしかったところはある。
 
スコットランドを中心としたちょっと暗いトーンの風景、暗い室内だが、結局自己肯定的な生き方になっているから、なんとか見ていける。
 
主演のエル・ファニングは、あまり画面に映える感じではなかったが、暗さと強さのバランスがとれた演技、表出といえるだろう。ダコタ・ファニングの妹とか。
 
シェリー役のブースが、人気詩人とはいえ、きれいな優男すぎ、またメアリーが何度も別れようとしながら思い返すのが、納得できないうらみはある。
 
私もフランケンシュタインというと、あの怪物がそうだというイメージがあったのだが、だいぶ前にEテレの「100分で名著」に原作が取り上げられ、墓地から死体を取り出して継ぎ合わせて生き物を作った科学者の名前がフランケンシュタインということがわかった。どうも1931年のヒット映画以来、世間にそういう誤解が広がっていたようだ。その後、ケネス・ブラナー主演の同名映画は原作に忠実に作られたということで、怪物を演じたロバート・デ・ニーロのすさまじい演技とともに印象的だった。
 
ところで思い出すのが、30年近く前、仕事でアメリカ出張中、移動日が土曜だったため、ロスの空港からユニヴァーサルスタジオに行ってみた。ビジネスの延長の服装で見世物の行列に並んでいたところ、いきなり後ろからネクタイをつかまれ首を絞められそうになった。驚いて振り向くと大男で、破壊された顔があのフランケンシュタインの怪物だった(そのころは怪物がフランケンシュタインと思っていた)。どうも、こういう楽しむところでネクタイはないだろうということらしく、さすがアメリカと思った。



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