ハーメルンの笛吹き男 伝説とその世界 阿部謹也 著 ちくま文庫
1988年に文庫化された本書、日経読書欄の記事で、版元がツイッターで紹介したところ、それが評判となりかなりの部数が出たという。それで久しぶりに再読してみようと思った次第。
実はこれが1974年に単行本で出てまもなく読んでみた。確か中世の絵をあしらったなかなか雰囲気のある装丁だったと思う。その後引っ越しのおりだろうか、かなり多く処分した中に入っていたのだろう。ちょっと残念。もうあれから半世紀弱経ったのか。
若いころだったから、ブリューゲルやボッスの絵、マーラーの「子供の不思議な角笛」「嘆きの歌」などの世界につながるものとして興味を持ったのだと想像する。有名なグリムについては特に意識はしていなかったと思う。
あらためて読んでみると、これが笛吹き男と、鼠を退治した時の約束・報酬、子供の消失が組み合わさり、それが必ずしも1284年にハーメルンでこの形であったことかどうかは別として、様々な場所、時点で似たようなことがあった、あるいは様々な、忘れられない記憶が、変容、発展していったもの、ということが受け取れる。
それはドイツとその周辺の政治情勢、宗教情勢など、また階級構造とそれからはじき出された人たちの状態を無視しては語れないことが理解される。特に後者では、遍歴芸人の実態とその利用のされ方、また庶民のどうしようもない生活がわかってくる。それは中世から続いたユダヤ人の問題であったり、近代芸術になるはるか以前の音楽などの位置づけ、意味につながってきたりする。
そうしてみると、本書でも言及されてるが、ワーグナー「ニュルンベルクのマイスタージンガー」に出てくる職人などは、庶民といってもかなり上のものだということがわかる。
著者はたまたまかの地である資料を発見し、そこからこの世界に入っていったわけだが、本書でも如何に資料というものが貴重だということがよくわかる。日本でも、最近は資料の発掘が著しく、今後に期待できる。
本書、特に前半はスムースに読み進むことができた。著者がいかにこの世界をものにしているか、文章力があるか、を示すものといえるだろう。
1988年に文庫化された本書、日経読書欄の記事で、版元がツイッターで紹介したところ、それが評判となりかなりの部数が出たという。それで久しぶりに再読してみようと思った次第。
実はこれが1974年に単行本で出てまもなく読んでみた。確か中世の絵をあしらったなかなか雰囲気のある装丁だったと思う。その後引っ越しのおりだろうか、かなり多く処分した中に入っていたのだろう。ちょっと残念。もうあれから半世紀弱経ったのか。
若いころだったから、ブリューゲルやボッスの絵、マーラーの「子供の不思議な角笛」「嘆きの歌」などの世界につながるものとして興味を持ったのだと想像する。有名なグリムについては特に意識はしていなかったと思う。
あらためて読んでみると、これが笛吹き男と、鼠を退治した時の約束・報酬、子供の消失が組み合わさり、それが必ずしも1284年にハーメルンでこの形であったことかどうかは別として、様々な場所、時点で似たようなことがあった、あるいは様々な、忘れられない記憶が、変容、発展していったもの、ということが受け取れる。
それはドイツとその周辺の政治情勢、宗教情勢など、また階級構造とそれからはじき出された人たちの状態を無視しては語れないことが理解される。特に後者では、遍歴芸人の実態とその利用のされ方、また庶民のどうしようもない生活がわかってくる。それは中世から続いたユダヤ人の問題であったり、近代芸術になるはるか以前の音楽などの位置づけ、意味につながってきたりする。
そうしてみると、本書でも言及されてるが、ワーグナー「ニュルンベルクのマイスタージンガー」に出てくる職人などは、庶民といってもかなり上のものだということがわかる。
著者はたまたまかの地である資料を発見し、そこからこの世界に入っていったわけだが、本書でも如何に資料というものが貴重だということがよくわかる。日本でも、最近は資料の発掘が著しく、今後に期待できる。
本書、特に前半はスムースに読み進むことができた。著者がいかにこの世界をものにしているか、文章力があるか、を示すものといえるだろう。