メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

泉 麻人「冗談音楽の怪人・三木鶏郎」

2020-03-02 10:36:10 | 本と雑誌
冗談音楽の怪人・三木鶏郎 ラジオとCMソングの戦後史
泉 麻人 著 新潮選書 2019年5月
 
三木鶏郎(1914~1991)は、コミカルな音楽の分野で、特に戦後はNHKラジオから活躍を始め、CMソングやアニメ・ドラマ主題歌などで、数えきれないほどのヒットを飛ばした。この人はほぼ私の親の世代で、ここに挙げられているものはリアルタイムで記憶しているものも多い。
 
この三木鶏郎がこの分野でそれなりの位置を占めるまで、かかわった多くの人たち、その縁となった場面をとにかく数多く集めている。タイトルにあるように、なるほどある意味での戦後史といえなくもない。
 
ただこれはどこかの書評で、このような面で面白いし情報源となる一方、書き方については低い評価がされていた。それは私も同様で、細かいエピソードからエピソードに飛んで行くのはいいが、著述の流れから離れすぎていき、読んでいて興味がそがれるところが多々ある。ことわりながらも同じことを書いているところも多い。元は雑誌の連載らしいから、その回だけ読むのはいいのかもしれないが。
 
著者は私より一世代近く若く、70年代~80年代のファッションをはじめとする若者風俗に冴えをみせたライターだったが、音楽分野はちょっと苦手だったか。
 
一方、昭和10年ころの主人公をめぐるいろんな話を読んでいると先にアップした江藤淳/蓮實重彦「オールド・ファッション普通の会話」にあったような、そのころの意外に開けた楽しい雰囲気を想起する。日中の雲行きが怪しいなか、世の中には案外こんな面もあったようだ。
 
もう一つあげれば、私もある時期から親しんでいた音楽、また今でいえばバラエティ・コントなど、こうしてみるとまだまだ幼稚というか、スパイスが足りない気がしてくる。やむを得ないことかもしれないが、先人としての評価と達成度に関する認識は別物なのだろう。

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