メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

プーランク 「声」

2020-11-09 14:17:37 | 音楽
プーランク:歌劇「声」
ドニーズ・デュヴァル(ソプラノ)
ジョルジュ・プレートル指揮 パリ・オペラ・コミック管弦楽団
 
フランシス・プーランク(1899-1963)は三つのオペラを書いている。「テレジアスの乳房」(1947)、先にアップした「カルメル会修道女の対話」(1957)についで三つめがこの「声」(1959)で、初演のメンバーによる同年の録音が上記のものである。
 
「カルメル会修道女の対話」を観た時、そういえば何か持っていたなとレコード棚を探したらこのLPがあった。昭和58年度(1985年度)芸術祭参加としておそらく最初の国内プレスとして出されたものである。プーランクに興味はあったから買っておいたのだが、多分1回聴き流してそのままになっていたものと思う。しかし、台本の元となった戯曲の作者ジャン・コクトーの絵がジャケットになっていて、なかなかのものである。あとから見るとこんなものか、というよくあるケース。
 
さてここで、登場人物は一人の女、かっての恋人で近く結婚するときいた男に電話をかけていて、約40分その場面が続くだけのもの。彼女の歌手というより女優という感じの会話だが、こちらにはモノローグにもきこえる流れ、これだけで聴かせる、また舞台では見せるのだろう。
 
解説(高崎保男)によれば、当時悪かったフランスの電話事情そのままに、よく途切れたり、混信(?)したりするが、それが流れの中でうまい変化になっている。
 
最期に男が新婚旅行でマルセイユに行くらしいと知り、以前自分たちが泊まったホテルには泊まらないでと乞い、コードを首に巻きつけていた電話機から、受話器が落ちて終わる。
 
ほとんど途切れることがないフランス語の歌詞・台詞、対訳(意外にも濱田滋郎、スペイン語、フラメンコの世界というイメージだが)で追うのはたいへんで、訳の方をながめていて、ほんの少し聴き取り理解できるフランス語の単語があると、ああここだ、という次第だから、あまり味わったとはいえない。
 
それでも、これで三作品のうち二つ、比較的好きなプーランクのオペラを少しは知ることができた。
出演者一人だが、今後映像で見る機会があればと思う。
 
この初演コンビはこれ以上望めないものだろう。デュヴァルはいうことなし、プレートルもまだ若いはずだが、才気あふれている。
ところで、原題がLa Voix Humaineということから、最近は「人間の声」としていることが多いけれど、ここはやはり「声」だろう。





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